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古着屋で買った服を着ただけですけど。  作者: 岩田 ヒロ


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あれ、動かない!

古着屋の店長は売った古着を着る人を操ることが出来る。そうとは知らず高三の詩は古着屋で買ったコートを着て、受験と恋愛に奮闘するロマンタジー。第ニ話、あれ、動かない!

 次の日、古着のコートを着て学校に行った。寒くなってきた。冬は寒いけど気持ちが引き締まるから好き。途中、ちらっとあたしを見る人たちがいた。なんかいい気分だった。凛が「早速、着てきたね」と声をかけてきた。

「学校終わったら、そのまま一緒に塾行くよね」と凛が聞く。もちろんと答えた。年内には第一志望決めて、年明けには願書を出さないといけない。試験勉強のラストスパートだ。十二月に入り、今日から学校終わったら、毎日塾。

「塾終わったらピザまん食べようね」凛はいつもこうだ。いいよと答えた。


 あたしはピザまんよりも楽しみにしていることがある。湊に会える。湊とは学校では違うクラスだけど、塾では同じクラスだ。すっごいラッキーだ。彼は普段あまり笑わないけど、涼しげな顔があたしは好きだ。背も大きいし、声が好き。この塾のクラスをきっかけになんとか話ができるようになりたいと思っている。


 凛にはこの話はしてない。ちょっと口が軽いからだ。昔、凛のおかげで恥かしい思いをしたことがあった。中学の時、あたしが好きな男の子の話を凛に言ったら、次の日、凛がその子にあたしが話したいみたいだからお友達になってあげてと彼に伝えて、そのことがクラス全員に知れ渡ったことがあった。すごい恥ずかしかった。凛は話したがってるよと伝えただけで、詩が好きだからとは言ってないと真剣に言い訳してきた。


 今回は絶対に内緒にしようと思っている。それにしても、その塾の同じクラスに凛も入ったとは不覚、いや、何か腐れ縁みたいなものを感じる。


 塾に着くと、さりげなく教室内をぐるっと見て、湊がいるかチェックする。いた。最前列の席に座っていた。右に彩葉、左には蓮が既に座っている。彼らは学校でも同じクラスなので、いつも仲良さそうに一緒にいる。彩葉はきっと湊のこと好きだとあたしは思う。女の感だ。彼女はあたしと違って、明るくて、積極的で要領がよさそう。湊は彼女のことをちょっとうざそうにしているように見える。蓮は湊と仲良しで、表情豊かで、なんでも話せそうなタイプだ。湊とは真逆な性格のように見える。


 学校ではあたしと凛は彼ら三人と別のクラスだから、たまに会話する程度の仲だ。他の生徒は別の高校の生徒で、ほとんど会話はしない。受験のライバルみたいな感じで、ちょっと距離を感じる。


 あたしと凛が教室に入るとみんながあたし、いや、古着のコートをちらっと見たような気がした。湊も蓮も一瞬見てくれたけど、すぐに彩葉と会話を始めた。凛とあたしは彼らの二つ後ろの席に座り、コートを抜いだ。


「やっば地味じゃね?そのコート」と凛が小声で言う。

「ママに昨日見せたら、二十年前は流行ってたらしいよ。チドリコーシって言うみたい、このチェック」

 へーそうなのと凛が興味無さそうに呟いた。先生が入って来た。とりあえず、テキストを開いた。そして、一瞬でも湊があたしを見ないかと期待し、彼の背中をちらっと見た。


 二時間の授業が終わり、湊と蓮、彩葉が歩きながら、志望校の会話をしている。

「湊は青学?」と蓮が聞く。

「うん、蓮は?」

「青学か中央かな?彩葉は?」

「上智に行きたいけど、厳しいかな。来週の模試の結果しだいかも」

「そっか、浪人したくないしね。みんなで現役合格したいよね。浪人しても合格出来るか心配だし」と蓮が言う。しばらく無言で三人で歩いた。

「じゃ、また、明日」と言って、蓮が駅に向かう。


 蓮がいなくなると彩葉が自転車を押す湊の腕を組む。

「私も青学にしようかな。一緒に行こうよ、大学」

「そうだね。でも彩葉なら上智行けるよ。上智がいいよ!」

「一緒の大学、いやなの?」


 実はこの二人は付き合っている。受験終わるまでは二人のことは内緒にしようと約束している。彩葉は二人で合格し、みんなに付き合っていることを発表したくてしようがない。湊は秘密にしたまま卒業したいと思っている。わざわざ公表することではないとも思っているからだ。彩葉の家の近くまで送って行き、じゃあねと言って、湊は反対方向の自分の家に向けて、自転車を走らせた。


 凛とコンビニでピザまんを食べた。寒くなるとコンビニのピザまんがおいしい。少しおしゃべりして、別れた帰り道、あたしの古着に反応した人を思い出してニヤニヤしていた。そして、もっと湊と話せないかなと考えながら歩いていると、自転車が横を通り過ぎた。


 湊だ、と分かった瞬間、あれ、動かない。いきなり体が動かなくなった。ふんと前に踏み込んむのだが前に進まない。これ、金縛りってやつ?コートの後ろを誰かが押さえている感じだ。えっ、えっとパニックになっていると、湊がUターンしてきた。

「ねぇねぇ、詩、第一志望決まった?」

 湊が自転車こぎながら、あたしの前で止まる。金縛ったことと湊の登場て、大パニックだったけど、なんとか平静を装って、

「んーと、多分、青学」

 一瞬、湊があたしを見た。

「そっか、あのクラスにいるから、みんな同じなんだろうな。凛も同じ?」

「同じと思う。えっ、湊や蓮や彩葉は?」

「俺も青学。蓮は青学か中央、彩葉は上智かも」

「彩葉、頭いいもんね」

「そうだね。じゃ、帰るわ!」と言って、すーっと行ってしまったと同時に体が前に進んだ。


 なに?なに?なんだったんだ?あの金縛り。まるで、湊が来るのを待っていたみたいだ。ちょっと怖くなったけど、湊と会話できたのが嬉しくなってきた。このことは凛には内緒にしようと思う。彩葉は上智か。頭いいんだな。でも、あたしと湊が第一志望が一緒だってことが分かり、勉強頑張る気になってきた。そうか、湊の家はあたしの家の先だ。だから、塾の帰り道は方向が同じ。よし、明日から帰り道でうまく一緒になればいいなと思った。

読んでいただき、ありがとうございます。毎週火曜日に続編を投稿する予定です。

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