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かわいいうえに付き合える(センシティブじゃない)なんてお得。




 不自然に顔を逸らしながらの天音の提案に、オレも乗ることにした。顔を逸らしている理由ももしかしたら照れているのを隠すためかもしれない。本人談によれば少なくとも嫌われているということはなさそうなので、そう思ってもいいのではないだろうか。まあ、真実は結局のところわからない。

 というわけで、おうちに帰ってきた。オレの家は平均的な収入なら住めるくらいの普通の家だと思うが、別に天音一人家に連れ込むことくらい簡単にできるのだ。

 我が家に「おじゃまします」と入った天音は、母さんに「別にただいまでもいいのよ」と茶化されていた。

 しかし、天音は母さんの言葉の通りに、ただいまと言ってしまってもいいくらいに勝手知ったる様子でトテトテと二階のオレの部屋に上がっていった。オレの眼球がおかしくなってしまったのか、そんな少しのしぐさでさえ妙にかわいく見えてしまう。この角度なら、スカートをはいていれば見えていたかもしれないな。

 そんなことを考えながらも、天音とオレの部屋で二人きりになった。ぱたんとドアを閉める。さっき、母さんにしばらく部屋に入ってこないよう言っておいたので、会話の邪魔も入らないはずである。

 だが、それで一応の安心は得ても、オレがこれから対峙する未来に関わることには些細なものでしかないだろう。

「それで、さっそくなんだけど、ボクからも君に対する感情を言ってもいいかな?」

 一瞬、ふざけてしまおうかという考えが頭をよぎったが、天音が浮かべている真剣な表情を見て、そんな考えに一瞬でも至ってしまった自分が悲しくなってくる。天音に聞こえないように小さく深呼吸を行い、心臓を整える。学校とは違い、ずいぶんと規則的で平均的な挙動だ。

「ああ、もちろんだ」

「ボクはね、別に翔のことが嫌いなわけじゃないんだ。君がボクのことを好きっていうのは別に構わないし、友人としてならそれは存分に受け入れてもよかったんだけどね。でも、君がボクに感じている好きは、友人に対するそれじゃなく、恋愛対象へのものだった」

 天音はたんたんと事実を述べていく、学校で告白したときのような心臓の鼓動が体中に響き渡って、今すぐにでも告白したことは間違いだったと、元の関係に戻ろうと、そんなくだらないことを口走ってしまいそうになる。でも今、天音が発する言葉を聞く時間である。聞いて聞いて、天音の言葉を、心を聞くべきなのだ。

「こんな偉そうなこと言ってるボクだけど、さっき、一つだけ間違ったことを言ってしまった。それだけは君に謝らないといけないと思うんだ。君にはもっと君のことを好きになってれる素敵な女性が現れるってそう言ったけど、どうしてか、ボク以外の子が翔の隣にいると思ったら、なんか無性に悲しくなってきちゃった、どうしようもなく心が苦しくなって、君のことを絶対に手放したくないって考えちゃうんだ。めんどくさい男、と思われちゃうかもしれないけど、たぶんボクは翔、君のことが好きなんだと思う。だから、告白してくれてありがとう。ボクからもちゃんと言わないとね」

 天音はオレのほうに手を伸ばして、まるですべてを導いてくれそうな天使のように優しい微笑みでこう言った。鈴の音よりもきれいで、たとえ男だとしても誰よりもオレ好みの声で、告白した。

「翔。好きだよ。もしよければ、付き合ってくれないかな?」

 そんなことを言われて、オレが首を縦に振らないとでも思っているなら、それはありえないと叩きつけてやろう。オレが心底お前のことが好きなんだと、声高らかに宣言しよう。

「もちろん、付き合うに決まってるだろ。だって、オレはお前のことが大好きなんだからよ」




今回のひとことメモ

今回の話で、告白編がおわりました。ようやくイチャイチャ編に入っていくことができます。明日か明後日かの投稿では、タイトルの「~~」部分を回収できたらいいなって思っています。

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