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暗闇の中

「なんだ?」


 ゲオルクは暗闇の中に何かを見た気がした。

 夜も更けてかなり時間が経っている。

 ザルツブルクの街門も閉まり、街はすっかり封鎖されている。すでに人も寝静まりあたりは真っ暗闇。

 そんな街の暗闇の中を蠢いているのは、コソ泥か物乞いくらいなものだろう。

 夏が過ぎて夜も過ごしやすくなったこの時期、街中の窓はまだ開いており、不用心ではあるから、ひょっとするとホントにコソ泥かもしれない。


 しかし何かが違う……。ゲオルクは直感でそう思った。

 その時だった。


「ローアちゃん! 今日も楽しかったわあ~~♪ 明日も絶対来てよ~~♪」

「おうおう来る来る♪ 約束な。約束。おう! ゲオルク、帰るぞ!」


 このバカ騒ぎとともに女どもと娼館から出てきたのは、このザルツブルクの大司教で実質上の支配者であるベルンハルト・フォン・ローア。

 普段の正装とは違い、まるでそこら辺の市民のような格好をしているが、顔を見れば誰もが一発で分かる有名人である。

 ゲオルクはすっかりそっちに気を取られ、暗闇の事など気にかけれなくなった。

 大司教は、それはもう夢心地の気持ちよさそうな顔をしていた。きっといい事をしこたましてもらえたのだろう。

 周りの女たちも楽しそうに機嫌取りをしている。その中にはゲオルクに手を振る女もいる。


 護衛のゲオルクは至って冷静に状況を見ていた。

 娼館の女には手こそ振って軽く相手はしているが、その女たちが勤めているこの娼館はザルツブルク市公認で、もし仮に不穏な事が起これば自分たちの身が危ない。

 だから事実上ザルツブルク市を納めている大司教ローアにはサービス満点にするし、その護衛のゲオルクにも愛想を振りまく。

 それをゲオルクも心底理解していた。


 そして、娼館の外。ほぼ月明かりだけで真っ暗闇。たまに灯りが動いているのは、街の夜警たちのランプの灯りくらい。

 大司教の護衛で元傭兵のゲオルクには、その静かな中の異変はすぐに察知ができる。

 それを大司教は理解しており、いつもこのお気に入りの娼館に来る時はこのゲオルクを連れてきていた。

 こんな事を毎夜のように繰り返していたが、今日は何かが違った。


「おいゲオルク。何かあったのか?」


 ゲオルクはもう一度、暗闇を見ていた。そんなゲオルクに大司教も気になり、声をかけた。


「……いや、気のせいですな。行きますか」

「おう。もう帰ろう。城に帰ってもう一杯やるぞ! お前も飲め!」

「ええ? 僕は護衛ですよ。勘弁してくださいよ~。やだなあ」

「いいんだよ! 城内なんだから! 飲め! このノッポが!」

「はいはい」


 こうして上機嫌な大司教ローアの横で、その護衛ゲオルクは、古傷の右脚を引きずりながら、左手の松明の火を頼りに街の南側に絶壁のようにそそり立つメンヒスベルク山頂に、それまたそびえ立つホーエンザルツブルク城に帰っていった。


 次の朝、街の外れの路地裏で、男が一人、倒れていた。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました♪

今作は現在では観光名所として有名なザルツブルクを舞台にしていますが、いろいろと引っかかってしまう方もいらっしゃると思いますっっ。

その辺りはショボい素人作家という事で多めに見ていただけると~……

という訳で次回も読んで読んでいただけるとめっちゃ嬉しいので、よろしくお願いいたします。

本当にありがとうございました!!

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