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性悪ルナリアは初恋に殉職したい  作者: 御仕舞


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1 . 校内では騒がないこと


「あーら、ブラックウェルの負け犬、騎士科のお荷物さん。また歴史学で赤点ですって?」


 学院の中庭で、またしても口論が始まった。

ルナリア・ウィルブライトの魔術師の証である黒と金のローブが風になびいた。


「おいおい、俺も聞いたぜ、性悪ウィルブライト」


 セオドア・ブラックウェルは腕を組み、胸元の銀の騎士章を誇示した。


「剣術授業が毎回ギリギリ合格なんだろ?魔法以外は何一つダメダメダメブライト」

「なんですって!?だいたい、わたくしは魔術師なの!なんで魔術科に剣術の授業があるのよ!?いらないでしょ!」

「連携のために最低限知識は必要だろ」

「正論はいらなくてよ、真面目ちゃん。高潔な騎士様を目指してるんだろうけど、堅苦しすぎて、そんなんだから友達いないのよ」

「性悪だから友達いないお前よりマシだろ!しかも友達くらいいる!」

「性悪で結構!ホホホ、魔法力学はわたくしがトップよ!暇人どもが友情を築いてる隙に、魔法学の世界でわたくしがトップに立つのよ!!」


 中庭のベンチに騒ぐ2人を尻目に、生徒たちが呆れ顔で通り過ぎていく。

ウィルブライト家とブラックウェル家は百年以上続く宿敵同士だ。

この二人が衝突するのは日常茶飯事だった。


「こんなところでケンカかな?」


 そこに優しい声が割り込んだ。


「レオン殿下!」


 ルナリアの顔がぱっと明るくなる。

金色の髪を持つ第一王子レオンが微笑んでいる。


「い、今のはただの意見交換でして」

「殿下、ご心配には及びません。単なる議論です」

「それなら、そろそろ次の授業の準備をしないとね。今日は合同演習だろう?」

「はい!」


 ルナリアは即答した。


「わたくしの華麗な炎魔法を披露できる絶好の機会ですわ!」

「暴発させなきゃいいが」

「なんですって?」

「聞こえなかったか?」


 切りのない口喧嘩に呆れたのか、気付いた時にはレオンの姿はなく、それにルナリアはがっかりした。


「あーあ、あなたのせいで全然レオン殿下と話せなかったじゃない」

「そもそもお前がくだらない挑発するからだろ。殿下の前で恥かく前に帰ったらどうだ?」

「魔術の天才が恥なんて晒すわけないでしょう!」

「筆記の点数だけで天才名乗ってんじゃねえよ。実技試験での前回の爆発は」

「ちょっと手が滑っただけよ!」


 ギリギリと悔しそうにセオドアを睨みつけるルナリアは、ふと思いついたとばかりにからかうような笑みを浮かべて、


「あなたこそ聖女アリア様に声をかける勇気もないじゃない!」


 弱点を突いた、と言わんばかりのドヤ顔で煽る。


「なっ…!」


 セオドアの頬が一瞬赤くなった。


「聖女様が他の人に話しかけてる時、遠くから睨んでるだけよね?」


 ルナリアは悪戯っぽく笑った。


「あなたのことなんか眼中にないのに」

「に、睨んでるわけじゃ…だいたい、お前だってそうだろ。レオン殿下はお前なんか眼中に」


 セオドアが意趣返ししようとした途端、中庭の入口から柔らかな声が聞こえた。


「あら、二人とも仲良しね」


 真っ白な修道服に身を包んだ聖女アリアが花束を抱えて歩いてきた。

一瞬静まり返る。


「アリア様…!」


 セオドアの背筋が伸びた。

くすくす上品に笑うその姿に見惚れながら、少し頬を赤らめる。


「殿下を探していたの。お邪魔だった?」

「邪魔なんてとんでもない!」


 セオドアは必死に言った。


「ウィルブライト嬢とはちょうど戦術について話し合っていたところです」

「戦術、ねえ」

「黙ってろ」


 アリアは微笑んだまま近づく。


「実は今日の合同演習、私も見学に行くんです。王国随一の若き天才魔術師さんと、殿下が信頼する騎士さんの活躍が楽しみですわ」

「ぜひご覧ください!」


 二人が同時に叫んだ。


「ただし」


 アリアは人差し指を唇に当てた。


「あまり喧嘩しすぎないでね。ウィルブライト家とブラックウェル家の未来を考えれば、むしろ協力すべきだと思うの」

「そ、それは」

「そうですね!」


 ルナリアが先に同意した。


「わたくしたち、将来の国を支える者同士ですもの」


 驚いてルナリアを見るセオドア。

その横顔に、彼女は得意げに鼻を鳴らした。


「調子のいいやつ」


 彼は小さく呟いた。


「約束よ?」


 アリアが笑顔で言うと、二人は揃って首を縦に振った。








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