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ポンコツ勇者と性格の悪い姫  作者: 明けの明星


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メディアの魔法とハンスのシュバ

ハンスがメディアの操りの魔法から逃れる方法とは

「さあ、勇者よ、そこにいる勇者ハンスよ、お前がその聖剣、シュバでイレーネ姫の胸を貫くがいい」

魔女メディアがハンスに対してこう言い放った。


これは魔女メディアが「選ばれし勇者」にかけることの出来る、操りの魔法だ。

「殺せ」「死を」などの言葉を入れないことで女神に阻まれるのを避けている。


「ハンスが?私を?」

とイレーネ。


メディアの声に導かれるように、ハンスが姿を現した。

おぼつかない足取りで、左手に持ったシュバの剣先は地面をなぞっていた。


その姿を見たイレーネ、

「ハンス?」

と叫びながら駆けよろうとする。

それを、国王が止めた。


そしてハンスも、

「イレーネ、近づかないで。僕は今、あの魔女メディアに操りの魔法をかけられているから」

と言う。


そのハンスの姿は、右手が、ひじの下からなくなっていた。

そしてその右腕から鮮血がしたたり落ちている。


「僕はねえ、流石にこのシュバを左手だけでふるうことはできませんよ。

だからイレーネの胸なんかこの剣で貫くことはできません」

とよろめきながら言うハンス。


「おお、利き腕を切り落としたのか。良いかわし方だ。しかしその左手、剣をふるえずとも持つことは出来よう。それならイレーネを刺すことくらいはできるはず」

とメディアは少々の驚きを隠さずに言う。


「それならば」

とハンスは、室内の壁に置かれていた燃え盛るたいまつを左手で握った。

その手が真っ赤に染まっていく。


そして、焼けただれた左の手のひらをメディアの前に差し出し、

「さあ、左手でも剣は握れなくなりました。もう僕にシュバは持てません。

どうしますか?魔女メディア」


「お前、そこまでして私の魔法を拒否するのか、お前にとってイレーネはそれほどの相手なのか?」

とメディアが言う。


その言葉を聞いたハンスが、何かを口にする前に、

イレーネが、メディアの前に立ちはだかった。

床に落ちた聖剣、シュバを拾い、右手にフリージア、左手にシュバを持ち。


「それほどの相手?そうよ、私は。だからハンスはここまでやってるんでしょ?

ほんとにあんたってバカなの?」

そう言うと、2本の剣を駆使しメディアに切りかかって行った。


「もう許さない、私がこの手であなたを葬る」

そう言いながら攻め込むイレーネ。


「ほう、二刀流かい。お姫様、お転婆が過ぎるじゃないか」

とメディアも魔法の剣を次々とイレーネに向ける。

ただ、イレーネの動きは素早く、メディアも繰り出される剣を交わすのに必死だ。


しかし、メディアは魔女だ。魔力を使い次第にイレーネを追い込んでいた。


「イレーネ」

国王が剣に手をかけ、加勢しようとするが、メディアはそれを許さない。

魔法により、身動きを封じていたのだ。

それは、ハンスも、そしてハンスを追ってきた女勇者フローレンスも、戦闘能力のあるすべて者ものがイレーネと魔女メディアとの闘いにくわわることはできなかった。


執務室のただならぬ気配を感じたのか、隣の控えの間にいた王妃ソフィアが戻ってきた。

また顔を青白く、足もふらついていたのだが。


「イレーネ!」

と戦う姿に驚く、ソフィア妃。


「お前の大好きなお母様のお出ましだ。この状況を見てもお前のお母様はその顔に傷がつかないかの心配しかしておらぬ」

と言うメディアの言葉と同時に繰り出された、魔法で生み出された小さな剣の一つが、

イレーネの頬をかすった。

その剣につけられたイレーネの左頬の切り傷から、鮮血がしたたり落ちていた。


「当たり前じゃない。私、女の子なのよ。嫁入り前の娘なのよ。

母親が娘の顔面気にしてなんかおかしいの?」

傷口を手で拭いながらイレーネが言う。


そして、床に倒れこんでいるハンスを見た。

「早くしないと」

早く決着をつけなければ、ハンスが死んでしまう。

そんなイレーネの焦りを見た魔法使いアゼリアが、心を通じてイレーネに語りかける。


「ハンスの事は大丈夫、このまま悪化させないことしか今は出来なけれど彼の生命力はとても強いわ。

イレーネ、貴女は焦らず目の前の敵に集中して」

と。

魔女メディアの拘束魔法を受けていながらも、アゼリアにはこれだけのことが出来るのだ。


アゼリアの方を見て、ゆっくりと頷くイレーネ。

そして呼吸を整えると改めて、魔女メディアの正面に立った。


再び、剣を交えるイレーネと魔女メディア。

お互いに一歩も譲らない。

イレーネの剣がメディアの繰り出す魔力をはじき返す金属音が響き渡る。


イレーネもメディアも息が上がり始めた。

メディアに至っては既に肩で息をしている。


「さすがに疲れたんでしょ?もう若くないんだから」

とイレーネ。


「年長者に何たる口の利き方。お前こそ若さを過信しすぎだ」

メディアも言い返す。


そんな時、城のあちこちから大勢の雄叫びのような怒声が聞こえてきた。

そして、地響き。


「城に踏み込まれた」

国王が事情を察して声を上げた。


城にメディアの一派である軍勢が攻め込んだのだ。

ドルーが国軍とは異なり、魔女メディアの率いる軍隊だ。

国軍ではないことで、外交問題とは出来ないように、仕組まれたことだ。


城内には王直営の軍勢が防護に徹しているが、メディアの軍勢は勢いよく城内に侵入しているようだ。

そして、なにより不意打ちに攻め込まれたことで、劣勢に陥っていた。


「このままだと、上層まで攻め込まれる。そうしたら、ロベルトの部屋も危ない」

熱にうなされて横たわる小さな弟ロベルト、彼を危険な目には合わるわけにはいかない。

イレーネの心が再び動揺していた。


その時だった。

ゴーーーーン


何かを床で突き刺したような大きな音が地響きと共に響きわたった。


「これは、地下に幽閉されている大魔法使い、アドロポスだ」

とアデーレ王国がつぶやいた。

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