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ポンコツ勇者と性格の悪い姫  作者: 明けの明星


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王の執務室

王の執務室で何が?

イレーネは、勢いよく王の執務室の扉を開けた。

そして、中に入る。


そこには。

中央に置かれている大きな円卓に王、そして向かい側に魔女メディアが座っている。


周囲に魔女メディアの一派。ドルーガの魔族や魔法使い、剣士、勇者だ。

そして、対面側に、アデーレの王妃ソフィア、魔法使いアゼリア、王側近の護衛団たちがいる。


部屋に入ってきたイレーネを見る王。

そして王を見つめるイレーネ。


「やあ、やっとおでましだね。小さなお姫様」

とメディアがうやうやしく言う。



メディアの一味に椅子を薦められ、円卓に着くイレーネ。

しかし、座る前に、メディアとその一派を一瞥し、


「皆さん、私と勇者ハンスはただいまここに戻ってきました。

皆さんはなぜここにおいでなのかしら。

このままお国にお戻りくださらないかしら」

と言葉を発した。


「おやおや、お姫様、我々は友好的に話し合いたくてここにいるのです。

いきなり帰れだなんて、姫は相変わらず意地が悪い」

とメディア。


「さあ、アデーレ国王よ、そなたと世継ぎの姫が揃った。

もうそろそろこちらにサインを」

と今度は国王に向かって話始める。


魔女メディアはアデーレ王国をドルーガ王国の譲渡する、と言う書類に王と次期女王であるイレーネのサインを求めていた。

これがあればアデーレ王国は友好的にドルーガ王国の一部となる。


円卓の上に広げられている、わざとらしいほどの装飾が施された台の上に乗せられた調印文書。

その横にはこれまた大げさな羽飾りのついたペンが置かれている。


チラリとその「調印文書」を見ると、

「そんなサインするわけないでしょ、バカなの?」

とイレーネ。


「口だけは達者なお姫様だねえ、その口の悪さもあいかわらずだね」

メディアが言う。


魔女メディアは魔力でサインをさせようとはしない。

そうすれば神が介入してくるからだ。


国を巡るいさかいに、魔女魔人の能力を直接使うことはできない。

そうすると即座にに神々が国を召し上げる。


「だから、阿漕な手をつかってくる」

とイレーネ。


それは父、アデーレ国王も同じ考えだ。


「そう言えば、いつも腰ぎんちゃくのようにお前に着き従っていたあのチビ助がいないな」

とメディア。

チビ助とはシャロンのことだ。


「消滅したのか、おまえのせいで」

と続ける。


その言葉を聞き、壁際に控えている魔法使いアゼリアの表情が一瞬曇ったのが見えた。

シャロンはアゼリアの愛弟子だったから。


「随分と私の事に詳しいのね。そんなに私の事が気になるの?ストーカーかしら」

とイレーネ。


魔女メディアはイレーネの誕生後まもなく、ドルーガ王国へと帰還していった。

それ以降、アデーレ国王には立ち入っていないはずだ。

そして、イレーネとも会っていない。


「シャロン、あなたの言った通りよ」

とイレーネが心で言う。


それは、まだ四季の国への旅に出る前、ちょうど勇者ロードレース大会が始まる直前だ。


「ねえ、イレーネ、なんで勇者がイレーネのお婿さんになるって決まったか知ってる?」

と聞くシャロン。


あの頃は、寝る前によく二人でベッドに寝ころびながらしゃべっていた。


「そりゃ、魔女メディアの予言だからでしょ」

とイレーネ。


イレーネだけでなく、他の誰もが知っていた。

他国の魔女による予言、これは両国間の友好の証、とされている。


「だから、なんでそんな予言をしたのかってことよ」


「そんな予言?」

イレーネは予言の意味など考えたこともない。


「魔女メディアって色々難ありじゃない。

能力に制限がかけられているの。かなり昔、いろいろと悪いことをしたんろうね」

いかにもよく知ってます、とばかりにシャロンが得意げに言うが、


「それが予言と何の関係があるのよ」

イレーネにはよく意味が分からない。


「で私、気が付いちゃったんだけどメディアの人を操る魔法、あれさ、選ばれた勇者にしか使えないのよ。しかも一度使うとしばらくインターバルが必要」


「え、そうなの?じゃ私の婿選びのロードレース大会、ますます妨害したくなってきたね。

絶対に優勝者なんか出さない、全員棄権させてみせるわ」

イレーネは不満げに言った。

そして、シャロンの話はまだ途中だったがイレーネの記憶はそこで途切れている。


「だから、イレーネ、気を付けないと。

イレーネの婿ってやつを操るつもりだよ」

シャロンがそう言った時、イレーネは既に夢の中だった。


「イレーネ、寝ちゃったんだね。

魔女メディアが、ずっとイレーネを監視していることもこの際、話しておきたかったんだけど。

仕方ないか。またの機会にだね」

シャロンはイレーネの寝顔を見ながら言う。


その、「またの機会」が来ることなく、シャロンは消滅してしまったのだ。


「調印書にサインをする気はないようだね、国王と王女よ」

と魔女メディア。


うなずく二人。


「では仕方ない、そこの勇者よ、イレーネ王女の婚約者、お前に命ずる、この王女に」

とメディアはハンスに向かい話し始め

これは魔法を使う前兆だ。

ハンスを操ろうとしているのだ。


壁際から円卓のイレーネの側に来ていたハンスが

「え?僕?まだ婚約者とは認められていませんよ。女神の再試験、まだ受けてないし」

と言い放った。


「言っちゃダメじゃん」

と小声で言いながら、イレーネがハンスの足を蹴飛ばした。


「ったく、このままメディアにイレーネの婚約者ハンス、に対して操りの魔法をかけさせようとしたのに、そしたら条件にあわないか作動しない、そしてしばらくメディアは操りの術そのものをを使えなくなる、って作戦だったのに」

とイレーネ。


「え、そうなの?」

とハンス。


「もう、作戦通りにって言ったじゃん」

イレーネが怒りながら言う。


「そんな作戦聞いてないし」


「言ったもん」


「聞いていません」


「酔ってたんでしょ」


言い争う二人にメディアが、


「おやおや、再試験はまだなのかい。この勇者は正直だね。

良い坊やだ」


とメディアが笑いながら二人ににじり寄ってきた。

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