33.思考錯誤
大変遅くなりました!
…先ず、これが完全なるサイン波だというのは、周波数が低くなってからわかった。
周期が遅いため、その震えが描く輪郭を感覚で捉えやすかったためだ。
音は震えであるという事。
まあ、ここまでは私も理解していた。
周波数とは震えの周期を表した数字である。
それが高ければ高いほど、音の周期は増してくる。
…この定義が、私に今までなかったものだ。
ではそれを踏まえて、どうすれば真核の周波数をあげるという事になるのか、考える。
しかも潜識図書館を駆使し、ゲゼルシャフトの補助も借りながらという、大掛かりな思考だ。
...この世の物質は基本的に、磁力、重力、魔法といったエネルギーと、素粒子というエネルギーの塊の集まりで出来ている。
では、素粒子やエネルギーを理解すれば良い。
そうすれば、この世の法則をある意味理解したことになる。
だが、例え素粒子とエネルギーを理解し、それを操れたとしても、完璧にこの世を理解したことにはならない。
いかなる物理的実験でも、僅かながらに不思議なズレが生じるのがその証拠だ。
そのズレの中には、誰にも感知ができない何かが存在する。
そして私はそのズレの中に何があるかを探した。
...アビディティーの話になる。
全てのアビディティーは、エネルギーや素粒子などの物体などに縛られた理論では成り立つ事が不可能なものだ。
故に魔法と呼ばれる言葉がある訳だが。
私はその発動の仕方やタイミング、理論を調べてみた。
すると、アビディティーは発動する生命の意思と連携しており、アビディティーの発動時間や発動する量なども制御が可能な事がわかった。
その生命の意思と、この世のルールを繋ぐもの。
そこにあったのは、真核の存在。
尤も、この世界ではそれを理解している生命が人間であり、それが創造思考というアビディティーとしてステータスに発現するわけだ。
だが代償として人間は、力が他の生命よりも圧倒的に弱い力を持つ。
そして...もし真核を我々のような他の生物が理解出来たと言う事は、この世界のルールを全て理解したという事になる。
それは、この世界の全てを知る存在へとなる事と同じ意味を持つ。
それが、この世界で神と言われる者たちの存在だ。
つまり神は、この世の全ての論理を理解した生命の最終形態なのである。
だが、そこで終わりな筈がない。
神には次なるステージが用意されているのだ。
それが神の世界。
真核が何かを知っていて、それを操れる強者達が競い合う世界。
そして、その世界には我々の世界とは違ったルールが存在する。
また、そのさらに先にあるものがパンドラの到達点である次元とも予測できる。
...話が膨らみすぎたな。
真核。
それは未知の世界を司る、
カオスである。
そして、真核は流動体であり、うねりであり...ある意味芸術でもある。
そうか、芸術と同じなのか。
ん?
なるほど。
は?
あっ..
私は、とんでもない物を理解してしまったかもしれない。
...真核は、我々生命自身、その存在意義の、我々自身への問いそのものだ。
例えば、ある疑問を抱く。
まあなんでもいい。
私の場合、“私の家族や友人は、何で殺された?”だった。
これも、突き詰めて突き詰めていくと、こんな問いになって来る。
“どうして、確実に想定できたはずの事を想定せず、愚かな行動に?”
“そもそも何で、私は生きている?”
こうやって、どんどんどんどん、病んでいきながら、思考を繰り返す。
“どうして死ぬんだ?”
“生命は、完璧な物ではないのか?”
“生命は、何処から生まれた?”
...この疑問自体が、真核そのものである。
そして答えをだす。
そうすると次の疑問が出てくる。
だが、その疑問のせいで今までの思考の理論が崩れ、結局振り出しに戻る。
...このループこそが、真核の周波数の正体。
真核の周波数というのは、その疑問の種類だ。
高ければ高いほど、その疑問の質が高くなっていく。
つまり、私がすべきことは...
兎に角、考える事だ!!!
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...はて、どうしたものか?
我は、神導冥生で半分星を除去した。
メジェドも、アビディティー 反物相成でもう半分の星を消した。
だが一つだけ、星が残っていたのだ。
その星を見れたのは一瞬だったが、確かに見た。
真紅に染まった、美しいのか、不気味なのか、分からないような色をした一つの目の様だった。
メジェドにも見えたらしい。
我と同時に目をこちらに向けて来たのだからな。
目の方向から変な音がし始めたので、再度そっちを見ると、だんだん目はゆっくりと閉じていくのが見えた。
同時に眠くなる。
久しぶりの感触だった。
なんとか久しぶりの感覚に意識を堪えるが、眠たいという欲求が、己を支配する。
そして、意識は落ちてゆく。
...どうやら、そのまま空中で眠っていたらしい。
周りには我とメジェドを中心にひび割れた地面とバラバラになったレンガが沢山あったのだ。
というより、あの目は何だったんだ。
何も対策はしていないとは言え、我を眠らせるほどの力とは...。
分身の方の記憶も、我と同じ状態になっている様だった。
ミダラは既に神への進化を終え、我を起こしていたようだ。
何より、女の裸を見れなかったのが惜しいところだったが、まあいいだろう。
だが、どういう事だ。
我でもこんなのは初めてだ。
…メジェドを起こし、情報を整理するも、我らが寝てしまった原因はもちろん、あの目が何かすらもわからなかった。
“潜識図書館”を使ってなどしても、アレに該当するのはなかったのだから仕方ないが。
...つまりあれは、神の序列10位以内に入るぐらいの実力者のアビディティーか、或いは新しくこの世に発現した強力なアビディティーか。
分からぬが、何かしら強者の手が入っているのは確かだ。
我々の状態も気絶する前と変わらず、呪いや魔法、或いはそれ以外の特殊な何かにもかけられていない。
本当に眠らされただけの様だった。
何故かと考えていると、我々に声をかけたものがいた。
「お〜い、大丈夫か。」
「えぇ、私たちなら大丈夫よ。グロウ。」
「よ、よかった。」
グロウである。
神の序列10位であり、集合体や軍団等の意思疎通を容易に可能にさせる “雲交”というアビディティーの持ち主だ。
昔は、修行を手伝ってやったものだな。
そんな事を思い出し、何故か挨拶しないグロウに声を掛ける。
「…久し振りだな。」
「あ、そっ、そうですね。ガル先生。」
「なんだ、汝はまだそんな呼び方をするのか。」
「え、ぇえ。気に食わぬようでしたら..」
「っっはっは。気にするな。」
「は、はぁ。…それより、あの目はなんだったんですかね。」
「我にもわからん。」
「えぇ!」
「そうなのよ〜。よく分からないの。」
「…アカシックレコードにまで情報がないのだ、もう誰にもわからん。」
「それって、かなりマズイんじゃ…」
その時分身が、ある情報をもたらした。
…どうやらこっちの方が面白そうだ。
「まあ…わかんない事について考えても仕方ないしな。」
「そ、そこはいいんですね…」
「まあ、いずれにせよわかってくるのが世の中だからな。」
「へぇ。そうなんだ。」
「まあな。っっとそれより二人に紹介したい輩がいる!」
「ん?」
「あ、なんかきてるね。」
我とメジェドの間に透明の長方形の魔法陣ができ、それが色が付き、濃くなっていく。
できたのは、漆黒の長方形。
我の色よりも濃い色だ。
それは霧散し、中から人が出てきた。
…いや、人ではない。
「うわっ。この真核の持ち主、やばいね。」
「…紹介しよう。こいつがミダラだ。」
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