7走目 測定結果
走ってないとかそういう事はもう気にしない方向でいきます。
おっさんから貰った鞄を腰に、俺は東通りまで戻って来ていた。いつものように東通りの大通りからよく通るいつもの路地に戻って来た俺はやっと一人になる機会を手に入れた。
「よし…誰もいない…」
周囲を用心深く確認すると、俺は路地の曲がり角にもたれかかる。曲がり角なら、誰かが来た時にすぐ反応できるからだ。
あと、あれから結晶の使い方について結構考えたのだが、理解に進展は無かった。魔力というものがさっぱり分からないのだ。この魔力とかいうものが具体的にどういうものなのか、それさえ分かれば進展がありそうなのだが。今のところ結晶の使い道としては、布を一気に捲っての敵への目眩しにするぐらいしかなさそうだ。
(魔力に関しては今度詳しそうな奴を見つけて聞きに行くとするか…)
盗人追っかけて兵に届けたりおっさんの家に行ったりと、今日はもう色々と走りっぱなしだった。ふと見上げればもう日はとっくに落ち、空は漆黒に染まっていた。今夜は月が雲で隠れているのか、路地に差し込むのは大通りからほんの少しだけ洩れる燻んだ橙色の街灯の光だけだった。あと俺の腰の鞄の中から少し洩れている結晶の輝きも少し。
俺は結晶を取り出して、明かりにしていた。布で覆う回数を変えると光量を調節できたりする。
この結晶本来の使い方がどうかは知らないし(魔力を込めるというのが分からないため)、それがどんなものかなんて全く分からないが、兎に角便利な物を貰ったことは事実だった。改めてテンシュもといおっさんに感謝の念を抱く俺。
(さて、俺の能力値検査結果はどうなったんだ…?)
濃い一日だったと今日を思い返していたが、一先ずそれは頭の隅に追いやり、この一人の時間を有効活用することにする。そして、遂に俺は検査結果の紙を広げる。
見ると、冒頭にこう書かれていた。
“検査結果の参考までに”
その下には冒険者ではない一般人の平均的な数値や、過去の冒険者の検査結果等が箇条書きでいくつか並んでいた。
(なるほど…参考までに…ね…)
参考結果をさらっと見たところ、検査され、数値として出る能力は八種類らしい。
HP(身体耐久力)、MP(魔力量)、生命力、魔力濃度、攻撃力、守備力、敏捷性、精神力だ。
一番下に記載されている自分の数値を見る前に、一般人の平均数値を確認する。
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名:参考資料一般成人平均
種:記載無し
HP:10
MP:10
生命力:10
魔力濃度:5
攻撃力:5
守備力:3
敏捷性:5
精神力:5
スキル:記載無し
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(ふむ、結構低く設定してあるのか。まあそうしないと桁がおかしくなる奴がいるからだろうな。この感じだと子供の数値とかは少数とかになりそうだな)
その流れで目線を下ろしていき、目を見張った。冒険者の過去の検査結果だ。
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名:C級冒険者検査記録
種:非公開
配置:前衛
称号:剣士、他非公開
HP:85
MP:14
生命力:60
魔力濃度:19
攻撃力:40
守備力:28
敏捷性:39
精神力:30
スキル:非公開
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(一般人の何倍だよこれ…C級がどれだけ強いのかは分からんが…)
参考資料を見ていき、ついに彼は自分の検査結果と相見える。唾を飲み込み、じっくり見る。その結果は…
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名:マリ
種:人間
配置:不明
称号:熟練逃走者、勇敢な少年、???
HP:18
MP:1
生命力:9
魔力濃度:2
攻撃力:9
守備力:5
敏捷性:30
精神力:6
スキル:逃げ足、俊足、落下耐性Ⅱ、???
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(HPは高くて…MPが酷くて…って魔力濃度?多分魔法関係だろうこれも…ダメダメときて、他は普通か。お!スキル!これは…)
結果を見て思ったのは、体が落下に強かったのはこの落下耐性とかいうスキルの恩恵だったという事。もう二十歳なのに勇敢な“少年”はやめてほしかった事、くらいだ。逃げ足とか逃走者とか案の定高かったあの数値とかは、あえて触れないで心の隅にそっとしまった。
端にあった“???”とかいうのはなんなんだろうか、なんて思ってもないし全然見ていなかった彼だった。
「ん?まだなんか書いてあるな…手書き?か?」
しそこには冒険者ギルドの人から、手書きで謝罪文が書かれていた。
「マリ様、大変申し訳ございません。こちらの不手際で冒険者ギルド登録の証明となるバッヂを渡せておりませんでした。申し訳ありませんが、ご都合がよろしい時にもう一度お尋ね下さい」
「えぇ…」
もういいってバッヂとか!またあそこに行くとか本当に無理!と心の内で叫ぶ。
だが、ずっと行かないなんてことも出来そうもないので諦めて明日行くことにした。この分だと俺に非はないので朝一番に行かなくてもいいだろう。いや、ただ行きたくないだけかもしれない。というか、これ渡す時に言ってくれなかったって事は受付のお姉さんじゃないのかこれ書いたのは。それだと色々疑問があるが今は置いといて寝るとしよう。
そしてまた彼は冷たい路地道の上、仰向けになる。枕は今日手に入れた鞄、布団は薄いフード付きマント。よくこれで眠れるものだと誰もが指摘するだろう格好だ。スキルに野宿(仮)が無かったなら、彼はなぜ眠れるのか。それは、毎日走り回って身体を限界まで疲れさせているからかもしれない。いや、それでもやっぱりおかしい。
(隠れスキルでもあるんじゃないか?)
彼を見下ろすその夜空は黒一色なのに、やけに澄んでいる。そんな気がした。
二ヶ月放置の表示が出てました。いや書いてたよ!?少しずつだけど。




