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盲目の悪役令嬢  作者: 桜木風
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9/11

新しい生活と足枷

少々忙しく大遅刻してしまいました。




 目を覚ました時、多くの人がよかったと喜び、そして嘆いた。

 意識を取り戻した私は、視力を失ってしまっていたのだ。


 ジル様が国一番と名高い治癒師を呼んでくださったが、残念ながらその人にも治すことはできなかった。



 しかし私自身はもうこの状況を受け入れてしまっている。というのも、あまりにも周りが嘆き悲しむものだから、なんか、私別に死んでないからね!?って感じになっちゃったんだよね。


 確かに私も不安だった。今までの世界とは全く違う世界に感じた。今まで持っていたものを失った喪失感、おそらく元に戻らないという絶望感や恐怖、全て感じた。

 今までの生活もがらりと変わり、目が見えないと一人で行動するのも、ご飯を食べるのも難しく、できないことが山ほどあって、なんでこんなことになったんだろうとも思った。




 でも、私には救いがあった。なぜならここは魔法が使える世界だ。しかもこの世界の魔法は汎用性が高い。イメージによって多くのことが可能になる。もちろんできないことはあるけれど、もしかしたらそれもイメージの仕方が違うと叶うのかもしれない。今のところ視力よ戻れ!と願っても治らないが、もっと違うイメージなら治せるのかも…という淡い期待なんかも捨て切れてはない……とは言っても今の私にはできないことには変わりないのだけれど。



 今の状況では目を治すことはできない。

 でも何もできないわけじゃない。できないことを考えるのは後回しだ。見えないなら補えばいいのよ。

 この世界には盲導犬も点字ブロックも存在しないが点字の本はある。補う手段は探せばあるのだ。それに先も言ったようにこの世界では魔法が使える。これを利用しない手はない。



 私はこの世界の探査魔法を応用できるのではと気づいたのだ。

 探査魔法は自分の魔力波を周囲に広げ、そこに引っかかったものを特定する。私がこれを覚えたときは人だけが反応するようにしていたが、全ての情報を入れれば目で見るよりは狭いけれど通路の角や、机の位置、人の位置などを把握できるのではないかと考えたのだ。


 思い立ったが吉日。 

 水の波紋のように魔力を自分を中心として常に出しているようなイメージで…。


「うまくいくかもしれない…。」

「お嬢様、いかがされたのですか。急に立ち上がってしまっては…。」

「アンは心配性ね。少しくらいならもう平気よ。確かにバランスはとりにくいけど、少しなら一人でも…っと。」

「お嬢様!!」


 少しバランスを崩してしまった。

 アンはがっしりと私を支えようと抱き着いている。 


「大げさね…。」

「しかし何かあってからでは遅いのです。何か必要なのですか?私が今取りに行ってまいりますから…。」

「いいえ、そうではないの。実はね・・・」



 私はアンに自分の考えを話した。探査魔法まで習っていたのかとあきれつつもアンは無理はしないようにとだけいい、協力してくれた。

 それからというもの毎日毎日研究を続けた。アンに協力してもらいながら実験を繰り返し、その結果、私は見事成功させてみせた。

 

 初めは探査と同じように自分を中心として円を描くように試していたが、物の距離感を正確にとらえることが難しかった。また、周囲の情報量に耐えられず、頭が痛くなってしまった。

 ということで、視界と同じように自分の背面は除いて視界でとらえるイメージと、3Ⅾ画像のように見たものを立体にとらえていくイメージ、探査のイメージを融合させ、現実世界の仮想空間のようなものを頭にイメージできるよう訓練した。そんなに簡単な事ではなく、情報量はやはり多く気分も悪くなるし、魔力だって多く使う。しかし毎日毎日集中し、ある程度なら周りの様子を把握しながら一人で歩くことができるようにした。まぁ探り探りにはなるから一人だとスピードは遅いけれど、そもそもそんなに急ぐなんてこともないし、十分だろう。さらに席に座って机の上のみに集中すれば食器の形を把握できるので食事も一人でもできるようになった。

 ただ、やはり魔法をずっと使用するので疲労もある。また、ちょっとした意識のかけ方により把握する範囲を変えているので、見落とすこともあるし、今までに比べれば把握できる範囲だってとても狭い。だから基本的に誰かとともに行動することは必須だ。


 それでもできることの範囲が増えたことはとても嬉しい。魔法に頼った方法にはなるけれど、この世界でできることはとことん利用していってやるわ。



 あ、そういえば人間はどんなふうに見えるの?とか疑問に感じた人もいるかしら。さすがに細部まで集中していくには魔力も集中力もいくらあっても足りない。でもマネキンのような感じだが、背格好だけはわかるようになった。これで近くにいるのが誰であるのか大まかな予想ができるようになったのは大きいと思う。初めの頃はジル様とアンを間違えてとても恥ずかしい思いをしたのだ。…とまぁその話は置いといて。

 見た目はわからないので、同じような背格好の人を判別するのは結構難しいし、表情も読み取れないので気配察知を重ねようかとも思った。しかし2つ同時に発動するのは疲れる上に、1日中使用するだけの魔力もいくらあっても足りない。魔力は多い方ではあるけれど、視野代わりの魔法を日中使用し続けてぎりぎり1日分と言ったところだ。やはり常時となるとそれだけ多く魔力を使うのだ。




 ここまでになるのに約6カ月はかかった。今も研究は続けている。アン以外にも周りの人に説明して周囲の人にも気を付けてもらうことで、侍女を引き連れながらではあるが、一人で歩いても人とむやみにぶつかることもなくなった。さすがにどこもかしこもとは無理だが、実家をはじめ王宮の方も協力的にしてくださっている。環境が良すぎて泣けてくる。



 アンいわく、これには噂もかかわっているらしい。ジルベール殿下の事件はすぐに国民にも噂で広がり、その時私が身を挺して庇ったこと、そのことで失明してしまったことも一緒に噂で広がった。婚約者であることも合わさって、愛する人のために身を挺して庇う健気な少女だと、多くの人から好意的な目で見られているとのことだ。



 おかげで「殿下の婚約者はアイリーン様にはふさわしくないわ」と、今までライバル視していて、陰で地味に嫌味を裏で言っていた令嬢たちは減り、今では「殿下の婚約者はアイリーン様しかありえない」と言っているアイリーン様応援し隊なるものもあるそうだ。これらはアンの侍女仲間情報網からの情報らしいけど…何そのコミュニティ…。


 ちょっと話が脱線したけど、周りの人に支えられながら私は前向きに過ごせている。



 今の一番の悩みの種は…、ジル様だ。

 10歳までひたすらに無害だよアピールをしていたけれど、今回のことで、結果的にジル様を縛ってしまうことになった。あれから「俺はイリーの目の代わりだから」と言っていろいろ気にかけてくれている。


 すごく嬉しいことだけれど、それではいけないのだ。彼はいずれヒロインに恋をする。私はその時に彼のトラウマになりたくなくて、彼に傷ついてほしくなくてあの時庇った。全ては私のエゴイズムなのだ。それなのに…私は彼の重荷になってしまった。

 本来なら傷物として、次期王妃にはふさわしくないと婚約解消になってもおかしくないはずなのだが、ゲーム補正なのだろうか、誰もそのことを指摘しない。つまりヒロインが現れるまで私に婚約者でいろということなのかはわからないが、そういうことなのだろう。




 私がゲームの悪役令嬢のような非道な行いはしないということをわかってもらえればいいだけだった。断罪なんてしなくてもいいと思ってもらうためだった。それなのに…。ヒロインと恋をした時に優しいジル様は私を簡単に切り捨てられないかもしれない。幸せになるべき人を苦しめてしまう。いっそのこと嫌われた悪役令嬢を演じていた方がましだったかもしれない。


 彼は立派な王になれるだろう。呪われた足だなんてものは存在しなくなった。役立たずなんて言うレッテルを彼は自分に貼らないだろう。


 その代わりに私という“足枷”をつけてしまったのだ。



 でも、私は自分がかわいいのだ…。ジル様が苦しむかもしれないとわかっていても、今から悪役令嬢を演じて断罪される未来に自ら進むなんてできない…。私の心はなんて弱いのか……あぁ、まるで…。



「これじゃあ私が彼を縛る呪いみたいなものだわ。」




 ひとりベッドに沈みながらぽつりとつぶやいた。




 とりあえず、ジル様が気にしないで済むようにいつでも身を引くことを伝えていこう。今のところはこのくらいしかできそうにない。

 いろいろあるけど頑張ろう。まだゲームははじまってないんだもの。悲惨な最後にならないよう、精いっぱい生きてみせるわ。





 


お読みくださりありがとうございます。

大切な部分なのですがいかんせん語彙力と表現力のなさでまとまりきれていない…。伝えたいことを文章にする難しさを実感しております。

また、今回も大遅刻でしたが、少々忙しい時期が続くため、次回更新もおそらく2月下旬を過ぎてしまうかもしれません。申し訳ないです。

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