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とんでもない大物

「そんな話はどうでもいいんだ」



 目にかかる前髪をかきあげながら、プレーマは本題に入るようだった。



「瑠璃。お前のことだ……ウッタラを目指しているんだろ?」



 プレーマの目が鋭いものに変わっている。返答次第では、邪教徒を二人相手に戦う必要が出てくるだろう。だが、瑠璃は決して臆することなく、答えるのだった。



「その通りよ。このままだと、コーラルが凍えてしまうんだから」


「やめておけ」



 当然の使命を口にしてみたが、プレーマは瞬時に否定する。向こうは向こうで、それが当然の使命なのだろう。



「邪教徒にやめろと言われて退くくらいなら、こんな活動、とっくの昔にやめてるわよ」


「そりゃそうだ。しかしな、瑠璃。今回はマジでやばい。これ以上首を突っ込んだら、ただじゃあ済まないぞ」


「なによ、邪魔するつもりならやってみなさいよ」



 過去、何度プレーマに仕事を邪魔されたか、もはや覚えていなかったが、その実力が確かなもので、厄介な敵であることは間違いない。それでも、瑠璃は負ける気はなかった。ただ、プレーマの方にそのつもりはないらしい。降伏するように両手を挙げながら彼は言う。



「違う違う。これ以上進んだから、とんでもないやつを敵に回すかもしれないぞ、って忠告にきてやったんだ」


「執行官の役目は、正しくない祈りを成就させるために、その弊害を排除することでしょ? 私を排除しなくていいのかしら?」


「未来の妻を排除してどうする。俺はな、妻の意思を尊重するいい夫でありたいわけだ」



 プレーマの戯言(たわごと)を横で聞くクリヤは半目の状態で、虚空を眺めるようだった。それでも、プレーマは続ける。



「いいか、よく聞け。この件はとんでもない大物が絡んでいる。祈りを止めるとしたら、そいつと敵対することは避けられない」


「……もしかして、オリジナルウィッチかラストナンバーズが?」



 プレーマは肩をすくめるが、それはほとんど肯定する動作のように思えた。



「お前もコーラルの魔女ともてはやされてはいるが、魔女戦争を生き抜いた猛者を相手にするのは、身に余るってもんだ。ウッタラに行って、困っている住人に良い顔するまでは良いだろう。だが、それ以上はやめておけ。未来の夫として言っておく」


「誰が未来の夫よ……」



 プレーマは妻のわがままを愛らしく感じたように、優しく微笑んだ後、背を向けるのだった。



「どうしてもやる、と言うなら俺が止めてやる。だが、事を構える相手はちゃんと考えろよ」



 どうやら、今回は本当に忠告だけのつもりらしく、プレーマたちは立ち去っていく。ただ、クリヤの方は納得していないらしく、プレーマに何やら主張を続けていた。



「先輩、一条瑠璃は教団の敵なんですよね? しかも、どうせこの後も邪魔になると分かっているなら、今のうちに私が叩いておきますよ? どうしますか?」


「どうするもないだろう、馬鹿。お前も俺の許可なく動くなよ」


「それは、未来の夫として命令しているのですが?」


「誰が未来の夫だ」



 二人が背を向けても警戒を解かない瑠璃だったが、二人の姿が消えると、ようやく力を抜いてトラックに乗り込む。そして、先程との会話を振り返って溜め息を吐いた。



「オリジナルウィッチかラストナンバーズか……。本当なのかしら」



 先生の言う通り、翡翠を連れてくるべきだったか、と思い返すが、弱気になるな、と首を横に振る。



「ううん。本当にそんなやつらが出てきたとしても、やりようはあるはず。今後のことを考えたら、負けてられないわよ」



 覚悟を決めて、トラックを前進させる瑠璃だったが、さらに気温が下がったように感じられた。





 それから、三十分ほどトラックを走らせると、ウッタラの村にたどり着いた。



「これは……根っからのニルヴァナ教の村みたいね」



 瑠璃がそんな感想を抱くのも無理はない。村の入口らしき場所には、木製の白いアーチが立ち、その両脇にはノモスを模したと思われる石像が置かれている。村全体で強い信仰心を持っている証拠と言えるだろう。



「ただ、こういう村こそ、正しくない祈りが捧げられてしまうものよね」



 コーラルには、こうした敬虔なニルヴァナ教徒が集まる村が、少ないわけではない。ただ、厳しさ故なのか、そういった村では正しくない祈りが捧げられてしまう傾向にあるのだ。



「ニルヴァナを尊び、しかしニルヴァナに寄りかかることなかれ……って、教えにもあるのにね」



 瑠璃はそう呟いて、トラックを降りるのだった。

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