中継ステーション襲撃
1. 急襲
ヴァリアント星系の防衛網は、これまで通り、静かに機能しているはずだった。
その平穏を破ったのは、警報だった。
「総統! 星系防衛網、複数の未確認艦艇を検知! すでに、防衛圏内への侵入を許しています!」
報告に、ヘルガは、椅子を蹴るようにして立ち上がった。
「侵入経路は」
「不明です。哨戒網の死角を突かれたものと思われます」
モニターに映る宙域図に、点滅する光点が、次々と現れていく。数は、決して多くない。だが、それぞれが、何かを、次々と放出していた。
2. ドローンの脅威、迎撃の号令
「放出物、確認。配信用ドローンと推定されます」
報告が上がった時には、すでに、いくつかのドローンから、配信が始まっていた。
「発信、確認しました。内容は、配給政策への批判、及び……」
「後で確認する。今は、一機でも多く落とせ」
ヘルガは、即座に命じた。星系防衛部隊が、次々と迎撃に上がる。ドローンは小さく、数も多い。展開されてしまった以上、完全な事前阻止は、もはや、望めなかった。
3. 追跡
迎撃部隊は、配信を続けるドローンを、一機ずつ、丹念に追い詰めていった。
「一機、撃墜」
「また一機、確認しました」
報告が、次々と上がってくる。時間はかかったが、防衛部隊は、着実に、その数を減らしていった。
そして、ようやく。
「総統。全ドローンの撃墜を、確認しました」
その報告に、ヘルガは、僅かに肩の力を抜いた。配信そのものは、防ぎきれなかった。だが、それ以上、被害が広がることだけは、食い止められた。
「よし」
短く、そう答える。だが、安堵の余韻に浸る間もなく、次の報告が、すぐに続いた。
4. 中継ステーションの被害
「総統。もう一件、ご報告が」
担当官の声には、緊張が滲んでいた。
「テラ・ヴァリアント間の中継ステーションにも、一部、被害が出ている模様です」
「模様、とは」
「詳しいことは、分かりません。あちらとの通信そのものが、不安定になっており、状況の確認が、取れておりません」
ヘルガの表情が、僅かに強張った。
その一報を最後に、テラ方面との連絡は、完全に途絶えた。
5. 空白
「総統。中継ステーションの応急復旧には、数日を要する見込みです」
報告を受けたヘルガは、思わず、息を詰めた。
「数日……。その間、テラ方面の状況は」
「何も分かりません。あちらとこちらを繋ぐ回線が、完全に断たれています。復旧するまでは、こちらから確認する術が、一切ございません」
担当官の答えに、ヘルガは、しばらく、言葉を発せなかった。
クラウゼが、今、どう動いているのか。ソンの艦隊が、本当に、裏切っていないのか。何一つ、分からないまま、ただ、待つしかなかった。
6. 強がりと内なる葛藤
「クラウゼには、任せてある」
ヘルガは、努めて、平静な声で、周囲に告げた。
「あの男は、これまでも、着実に、結果を出してきた。今回も、大丈夫だ」
口にした言葉は、揺るぎない自信のように聞こえた。だが、その内側では、まったく違う声が、静かに渦を巻いていた。
(本当に、大丈夫なのか)
これまで、すべての判断を、自分の手元に集めてきた。だからこそ、状況が見えている限り、常に、確信を持って動けた。だが今、その確信の拠り所そのものが、失われている。
(私は、ただ、権限を与えただけだ。結果は、もう、私の手を離れている)
その事実が、これまで感じたことのない種類の、落ち着かなさを、ヘルガの胸の中に、じわじわと広げていった。
7. 不安のまま
ヴァリアント星系そのものへの襲撃は、最終的に、すべてのドローンを撃墜し、これ以上の被害拡大は、食い止めることができた。
だが、テラ方面の状況は、依然として、闇の中にあった。
何も分からないまま、ただ、時間だけが過ぎていく。ヘルガは、その落ち着かなさを、執務室の椅子に一人腰掛けたまま、静かに抱え続けていた。
窓の外、灰色の空を見上げても、答えは、どこにも見つからなかった。
実際にテラ方面で何が起きているのか――それを知る術は、今のヘルガには、何一つ残されていなかった。
ここまで見ていただければわかりますが、17話からif展開になっています。
どこがどう異なるか、ぜひ底辺配信者と見比べて楽しんでください。




