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『悪役令嬢に仕立てた結果、王都が滅んだ件』 ― 追放された令嬢は北方で花開く ―  作者: ゆう
第四章:揺らぐ王国と目覚める意志

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第47話 グレンヴィルの大評議会

第47話 グレンヴィルの大評議会


 その日、グレンヴィル城の大広間には、見たこともないほどの人々が集まっていた。

 騎士、村の代表、商人、鍛冶師、狩人、司祭、書記官――。

 王都の議会より多いのではないかと思うほどの熱気が満ち、かつて小さな一領地だったこの地が、まるでひとつの国であるかのような気配を帯びていた。


 ざわつく人々の中心に、ゼノとエレノアが並んで立っていた。

 エレノアは改めて、この場がただの“会議”でないことを感じていた。

 これは、未来を決める儀式のようですわね――そう胸の奥で呟く。


 ゼノが立ち上がると、広間は潮が引くように静まった。


「王都から最後通告が届いた。エレノアの召還と、抵抗すれば反逆扱いにするという内容だ」


 言葉が落ちた瞬間、怒りと動揺が同時に爆発した。


「なんてことを……!」

「エレノア様を罪人扱いだと!?」

「王都は本当に狂ったのか!」


 ゼノはその怒りをしっかり受け止め、そしてただ一言だけ続けた。


「だからこそ、この会議を開いた」


 静寂。

 人々はゼノの次の言葉を待った。


「今日、我々は“従属を続けるか、独自に立つか”を決める」


 言葉は重く、広間に沈み込むように響いた。


 エレノアはゆっくりと立ち上がった。

 整った背筋、落ち着いた表情。

 彼女が立つだけで空気が締まる。


「皆さま。わたくしは、王都に戻るつもりです」


 瞬間、大広間にざわめきが広がった。


「危険すぎます!」

「王都はあなたを殺そうとしているのですよ!」

「戻れば、グレンヴィルまで危険に!」


 そのすべての声を、エレノアは小さく手を上げて鎮めた。


「あくまで、“わたくし一人”で戻るのではありません」


 人々が息を呑む。


「わたくしは、グレンヴィルの代表として王都に向かいます。もちろん……ゼノ様と共に」


 ゼノが目を見開き、人々は言葉を失った。


 商人ギルドの長が立ち上がり、震える声で叫んだ。


「独立なんて、本当にできるのか!? もし王都軍が攻めてきたら、どうする!」


 その問いに、ゼノが静かに答えた。


「商人たちよ。王都はお前たちを守っているか?」


 商人たちは黙り込んだ。


「税だけ取られ、助けを求めれば門前払い。それが王都のやり方だ」


 鍛冶師ギルド長が突然立ち上がった。

 大きな拳を天井へ向ける。


「オレたちは賛成だ! エレノア様の改革で、武具の質も、人の手も、領の力も上がってる! 戦うなら今だ!!」


 その声に、兵士たちも静かに頷く。


 エレノアは再び前へ進んだ。


「独立とは、王家を捨てるということではありません。民を守る政治を、この地に取り戻すということです」


 彼女の声は柔らかく、しかし確固として揺るぎなかった。


「王家が民を見捨てたとき……民は自分たちで正義を作るほかありませんわ」


 ゼノがゆっくり立ち、手を上げた。


「俺は、エレノアと共に“連合体”を作る。

商人も村も騎士も鍛冶も、すべてが対等に発言できる評議会だ。

王都の腐れた貴族政治ではなく、皆で国を作る政治を始める」


 その言葉は、未来そのものを指す宣告だった。


「名を――“グレンヴィル連合”とする!」


 広間が、雷鳴のような歓声で揺れた。


「ゼノ様!!」

「エレノア様!!」

「新しい国を!!」

「我らが守る!!」


 人々が拳を掲げ、騎士たちが剣を掲げる。

 その中心で、エレノアは胸が熱く震えるのを感じていた。


(追放されたわたくしが……今はこの地の希望の中心に)


 ゼノが隣で静かに囁いた。


「エレノア。もう後戻りはできない」


「ええ。でも……それで良いのですわ」


 エレノアは、まっすぐゼノを見つめた。


「あなたと共に進む未来なら、どれほど困難でも受け入れられます」


 ゼノは目を細め、小さく、しかし深い声音で告げた。


「……必ず守る」


「わたくしも、あなたを支えますわ」


 そうして――

この日、グレンヴィルは歴史の中で新たな名を刻み始めた。


“グレンヴィル連合”の誕生。


 王都との衝突は、もはや避けられない。

 だがこの瞬間、誰もが確信していた。


 ここに“新しい国の核”が生まれたのだと。

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