Side-B-
貴方の旅立ちの前日。
私は嫌な予感がしたの。
だから行かないで欲しいと言ったけど貴方はいつも通りの優しい笑みを浮かべながら言ったよね。
必ず帰るって。
貴方を乗せた宇宙船が飛び立ってすぐ異常事態を告げるニュースが届いた。
通信途絶。安否確認不可能。予定航路から大きく外れている。
私は毎日貴方を乗せた宇宙船の光を見つめながら貴方に貰った通信機へと語りかけていたよ。
ーー無事に帰って来て、と。
ノイズが聞こえた。
ある日、その光が小さくなっていくのがわかった。
専門家によると地球から遥か遠くへ向かっているようだった。
それでもこの通信機を握りしめ、宙を見上げて貴方に語りかけ続けていた。
ーー行かないで、と。
ノイズは聞こえなくなった。
貴方が旅立ってから数年が経ち、周りからは帰ってこない奴の事なんか忘れて自分のために生きろなんて勝手なことも言われたし交際を申し込んでくる人もいたわ。
でも、私は貴方がいいの。
だから今日も貴方に語りかけているの。
ーー待っているわ、と。
長い年月が過ぎ、行き遅れどころかおばあちゃんになっちゃったわよ、私。
それでも毎日語りかけ続けてきたの。
ーー貴方の隣を歩きたい、と。
ニュースで貴方の乗った宇宙船が地球に近付いていると聞いていてもたってもいられずに通信機を握りしめて宙を見上げた。
貴方はいつも遅れると走ってきたわね。
あの日々が懐かしく思える程の時が過ぎてしまったけど、少し心がときめいたわ。
今日も私は貴方へ語りかける。
ーー大して待ってないから安心して、と。
再びノイズが聞こえた。
長年の運用に耐え切れず、おそらく大気圏を抜けても粉々に散ってしまうだろう。
というのが専門家の意見だった。
でもそんな事どうでもいいわ。
奇跡ってこういう時にこそ起きるものよ。
赤い尾を引きながら貴方を乗せた宇宙船が降ってくる。
握りしめた通信機から貴方の声が聞こえた気がした。
僕はやっと君の元へ帰れるよ。
ーー待ってたよ。おかえり。




