第358話 エクサスについたアレクトとハザン
side アレクト
「おう! 見えてきたぜアレクト!」
「や、やっとですかぁ~」
ハザンさんの背中にしがみついたまま、安堵の声が漏れました。
ちなみに私はこの時、自力で馬から降りられる自信がありませんでした。
シドの街を出てから――えっと、もう何日目かも覚えていません。
二日目までは覚えていたのですが、その後は腰の痛みで記憶が曖昧です。
本当に過酷な道程でした。
同時にこれまでエドソンくんの魔導具やメイさんにどれだけ助けられていたのかもよくわかります。
エドソンくんの魔導車は思えば本当に快適でした。
ほとんど揺れませんし、シートは柔らかいですし。
だけど馬は違います。
ハザンさんの馬はスレイプニルという特殊な馬で、その分速度も出ますが、だからといって快適かと言えばそんなことはありません。
いえ、寧ろ普通の馬より速い分、揺れも酷いです。
悪路でも関係なく進む力強さはありますが、その度に私の体もガンガン跳ねてハザンさんの背中にしがみつくのがやっと。
それなのにハザンさんは笑いながら、
「どうだ! すげぇだろう俺の愛馬は!」
なんて言い出す始末。
なんでそんなに余裕なのか――腰とか痛くならないのでしょうか。
私は痛いです。
街に着いたら先ず薬を買おう。
そう本気で思えるぐらいには痛いです。
「どうした嬉しくないのか?」
「うぅ、やっと着いたって安堵感の方が強いですぅ」
「そうか嬉しいか。だったらもっと笑えアレクト」
この人話通じてないんですが!
「まぁいいや。じゃあこのまま坂を駆け下りて一気にいくぞ」
「はい?」
私が視線を向けた先には、ほぼ垂直にしか見えない急斜面がありました。
「坂ってこれどう見ても崖――ひぎゃあぁあああぁああッ!」
自分の意識が飛ぶのを感じました。
◆◇◆
「おい、アレクト。大丈夫か」
「はわわ――」
ハザンさんにほっぺを叩かれ意識が戻りました。
どうやらエクサスの門の前まで着いたようです。
意識を失っても馬から落ちなかった自分を褒めてあげたいです。
「寝てる場合じゃないぞ。これから受付だからな」
「気絶してたんですよぉ! もぉ!」
ハザンさんは女の子への扱いが雑すぎます。
思えば道中も蜥蜴の丸焼きだとかそんなのばかり用意していました。
大きな蜘蛛の足を、
「意外と旨いぞ」
とか言って食べて、私にも投げてよこしたり――
メイさんの料理がどれだけ素晴らしかったか、この旅でよくわかりました。
エクサスには意外とあっさり入れました。
商業都市は来る者拒まずといった体制でやっているようですね。
「このまま冒険者ギルドにいくぞ」
「うぅ、薬屋に行きたかったですが仕方ないですぅ」
腰は痛いですが、エドソンくんとメイさんの居場所を突き止めるのが先です。
それにマスターの事もあります。
久しぶりの再会です。
エドソンくんとメイさんは無事にマスターと会えたのでしょうか。
「ここだな」
「立派な建物ですぅ」
ハザンさんが近くに馬を繋ぎ止め、一緒に冒険者ギルドへ入りました。
中には多くの冒険者さんがいますね。
ハザンさんは脇目も振らず受付へ向かいました。
私も後をついていきます。
「あら、あまり見ない顔ですね」
赤髪のお姉さんが対応してくれました。
ハザンさんをまじまじと見ています。
「俺はハザン。シドの街から来た。こっちはアレクトだ」
「随分と遠い場所から来たのですね。仕事を探しに来たなら冒険者証を見せてもらえますか?」
「これだ。ただ今日は仕事をしに来たわけじゃねぇんだよ」
ハザンさんが出した冒険者証を受付のお姉さんが確認します。
「凄い! Aランクですか」
「えぇ!? ハザンさんAランクだったんですか!」
「あぁ。悪魔騒動の件で功績が認められてな。昇格したのさ」
ハザンさんが得意満面で言いました。
ハザンさんも成長しているのですね。
「それだけの腕があるなら受けてもらいたい依頼が山ほどあるのですが……」
「こっちの件が片付いたら受けてもいい。だけどその前に人探しだ」
「人探し? 一体誰を探しているんですか?」
「兄弟だ! 俺の兄弟を見なかったか!」
「はい? 兄弟。いや、それだけではちょっと――」
「だから俺は兄弟を探しているんだって」
「兄弟と言われましても……」
「もうハザンさん。それじゃあ分かりませんよぉ。えっとエドソンくんとメイさんを探していて――」
やっぱりハザンさんでは話が進みません。
私は受付のお姉さんにエドソンくんとメイさんの特徴を伝えます。
「う~ん。少なくとも私は見ていませんね」
「だったら他の受付にも聞いてみてくれよ」
「え? まぁ今はそれほど混んでませんからいいですが、特別ですよ?」
そう言って受付のお姉さんが席を立ちました。
何だか無理を言っているようで申し訳ないです。
「あの、少し宜しいですか?」
私たちが受付のお姉さんの戻りを待っていると、背後から声が掛かりました。
振り返るとそこにいたのは耳の少し尖った男性。
す、すごくかっこいい方なのですぅ……。




