終
「で、何か発見した?」
イザリエ王国史をパタンと閉じて固まったレオに、ミリィはそっと声をかけた。
「特になにも。」
「はぁ?」
「いや、なんて言うかさ。結局どの王朝も血みどろの簒奪王朝なんだよなーって思って。王族の血は青いとかなんとか言うけどさぁ、全く人でなしなくらい冷たい判断しなきゃならないってのは本当なんだよな。各国の歴史書は、王族の青い血で書かれてる。」
レオの言いたいことはよく分かった。
レオやミリィが今生きているのは、そうした流れた血のおかげなのだ。
「ブラッドフィールド家が爵位を得てからいままで、その功績を誇らなかったのは、自分たちの功績の陰に誰かの血が流れているとよく分かっていたからだろう。」
「・・・そうね。」
ふたりとも押し黙ってしまう。
重苦しい雰囲気を破るように、ミリィは手を叩いた。
「よしっ、休憩にしよう!メロディ・ストリートに新しい喫茶店が出来たのよ。」
注目は店長こだわりのシュークリームよ、とミリィは笑う。
今は過去を悲しんでも仕方がなかった。
「・・・甘いもの嫌いだ。」
そう言って肩をすくめたレオの手をひっぱる。
「わたしがおごるわっ、コーヒーでも飲みに行きましょ。」
「分かった、分かったからひっぱるな!」
ミリィが結んでいた栗色の髪をほどく。ふわりと緩く波打つあまそうな髪が広がった。
花の蜜のような香りがして、レオは人知れず息を飲む。無意識に手を伸ばしかけ・・・はっと我に返って手を降ろした。
ーーーもし、運命とやらがあるのなら、きっとこれは・・・
ここまで読んでくださったみなさま、本当にありがとうございます。
明るいほのぼのが書きたかったのに、なぜかちょっぴりシリアスに・・・
薔薇の系譜シリーズ、お次はアメリア王妃とレオンハルト王夫妻の長男のお話です。長男は・・・そうですね、ちょっぴりヘタレかな?
では、これからもよろしくお願い致します。




