負魔結晶14
臣は、会話中もずっと持っていた機械をようやく机の上に置いた。
「まず、総平君」
機械の電源を入れると総平を呼ぶ。
「前に照合はしたけど、登録じゃない。でも、これは仮登録だからね。手をかざして魔力発動させて」
言われた通り、パネルの上に手をかざす。
「…あれ、どうやるかわからない」
「なら、テレパスを使えばいい」
「わかった」
樹の言葉に総平は従う。
「うん、登録完了。次は条治君」
総平は座っていた椅子から立ち上がると、様子を見ようと側に居た。
「和田君、君は見学だ。魔法省の人間はこういう事もやると覚えておくといい」
「はい」
樹の側に居た直人は返事をする。
条治はさくっと魔力を発動させる。
続いて翔も簡単に発動させた。
続いて貴史の番だ。
「俺もやり方わからないんですが…」
困り顔で臣に告げる。
だが初めて会った貴史の魔法特性がわからない故、臣もアドバイスしようが無かった。
「甲斐さん、彼の使った魔法は?」
「そうか…」
生憎その場にボールは無かった。
だが、そんなの代用すればいい。
「これに魔力を込めるといい」
魔力は少しでも伝わると成立する。
なので、反対の手を翳したまま本に魔力を込めた。
「うん、大丈夫。お疲れ様」
こうして、郁斗と交代する。
「君は風だね」
樹は言う。
理子を守る時、郁斗は風の魔法を使った。
それは、本人の無意識のものだ。
「これを浮かせるといい」
それは、先程貴史が使った本だった。
しかしとっさの一回きりの魔法だった故、それでも無理だった。
「甲斐さん、どうしますか?」
登録が終わらないと、話しにならない。
丁度側には翔が居た。
「中村郁斗、手は翳したままこちらを向くんだ」
「理子?」
そう、郁斗には翔が理子に見える様にしたのだ。
箒を瞬間移動で手にすると、大きく振りかぶる。
「理子!」
本気の気迫は郁斗にも通じる。
樹の手にした箒は、風のシールドで防がれた。
「登録完了、皆お疲れ様」
臣の言葉に郁斗はハッとする。
理子の姿も、翔に戻っていた。
「中村郁斗、君はこうしないと使えなかっただろう?騙してすまない」
「いえ…」
これは郁斗の為、郁斗は怒る事ができなかった。




