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魔力ノ在ル者ト無キ者3
〈理事長、葉月!〉
テレパスで呼びかける。
だが、葉月は出ない。
それは出られない状況だという事だ。
「エレベーターでエルビス・フォン・アルバーニの所へ行け、そこなら誰も来ない」
「でも!」
「行け、逃げることだけ考えろ」
愛里は意識的に魔法の使えない魔法契約者だ、第一守護対象になる。
「これは命令だ」
樹に睨まれ、愛里は頷くしかなかった。
「さて、どうするかな?」
一般人が相手だと、やりづらい。
だが、愛里を逃がす為にも足止めしなければならない。
樹は階段に見えない防壁を作る。
これで階段より上の生徒が愛里の方へ向かう事は無い。
「こっちだ」
階段の下へ向かえない生徒達は、樹の方へ向かう。
樹は誘導するように階段を上がり、図書室へ入った。
勿論、一般生徒もなだれ込む。
窓際まで樹は逃げると、ようやく全員が図書室へ入った。
樹は魔力で入り口を閉め、開かないようにする。
「お前達は、ここで大人しくしてるんだな」
樹は言うと、窓から飛び降りた。
勿論、窓も開かない様にする。
樹はその後、何事も無かった様に着地したのだった。