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季節外れの見学会2
「条治!」
唯一の見学者、高森卓は既に到着していた。
今は昼前、丁度三時間目の最中だ。
スクーターを止めると、条治は手を大きく振る。
卓は走って二人の側にやって来た。
「友達?」
「いや」
条治が言うと、卓は樹を見る。
「甲斐樹です。今回は彼と案内役を努めさせていただきます」
「あっ、よろしくお願いします」
樹が頭を下げると卓も慌てて頭を下げる。
「…では行きましょう」
頭を上げじっと卓を見つめたかと思うとじっと見るのを止める。
「甲斐さん?」
「甲斐?」
不審に思いながらも、条治と卓は樹を見つめる。
だが、三人は歩き始めた。
「卓、あれは治ったか?」
「中々、原因がわからないからね」
「何の話ですか?」
樹案内の下、エスカレーターに乗りエレベーターへ向かう。
そして、エレベーターは樹の魔力によって動き始めた。
「速いな」
いつもこっそり使っている条治は外の景色を見ながら呟く。
それは魔力量の違いだ。
樹は魔力が桁違いに高い。
よって上限ギリギリのスピードで動くのだ。
一方、卓は森の上を通るエレベーターからの景色に夢中だった。