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バスケ部の事件11
「高坂、パス!」
「ああ!」
一週間後、貴史はバスケ部に復帰していた。
誤解も解けたので再入部も認められている。
仮顧問には睦月がなったがそれは一時的なもの、近いうちに新しい顧問が来るだろう。
「甲斐!」
貴史と武人が駆け寄って来る。
「いい笑顔だな」
二人はそう言われると、ニカッと笑った。
「甲斐、部活に入る気は?」
「ないよ」
「だよな」
「高坂、時枝!」
一時的に抜けた二人に、部員が呼ぶ。
「すぐ戻る!」
武人は叫ぶと、じゃあなと言って戻っていった。
「甲斐、ありがとう」
貴史もそう言い、戻っていった。
「何で!」
翔は部室のテーブルを叩く。
貴史復帰の話題は全校生徒に広がっていた。
総平の監視のお陰で、翔は高坂の勧誘ができない。
しようとすると樹がやってくるのだ。
それは中村侑斗でも同じだった。
かといって、中務条治を誘いたくはない。
そもそも、樹の基準がわからないのだ。
「どうすれば…」
翔は手詰まりだった。