遮断
ソドは事前に構えていた双剣を下から上へと跳ね上げ、どうにか棍の切っ先を逸らす。棍の先についた鉄の刃はソドの顔を気づ付けない程度には逸れていたが、油断は全くできない。2人ともそう思った時には既に次の行動に映っていた。ピスは棍を逸らされた勢いのまま反対の切っ先を再びソドめがけて今度は振り上げた。こちらは大鎌のようなまがまがしい刃がつけられている。ソドはもう片方の剣を思い切り下にたたきつけ威力を相殺する。
「ウィザ!」
「わかってる!」
ウィザは威勢よく答えると魔力を貯める時間を終えた。今ソドはウィザに呼びかけたが実際に視認できているわけではない。隠密魔法で姿をけしピスの後ろに回ることでピスがウィザに行く可能性を極力減らしていた。ソドが剣戟を交え時間を稼ぐことでウィザが大型の魔法を放つ準備をする。これが長年ピスの「殺人衝動」を克服する手伝いをしてきたソドとウィザが編み出した対処法だった。ウィザの体からまばゆいほどの魔力が解き放たれる。魔力が放出されると地面や周りの木々、四方から金色に光る鎖がピスめがけて伸びてきた。上位の拘束呪文。学校では「金の鎖」などと呼ばれる魔法だ。縛られたものは物理的な拘束に加え魔力を吸い取られ、戦闘を継続することができなくなる。通常はウィザの同世代の子供ならば1時間ほど、大人でも10分ほどは魔力をためる時間が必要だが、ウィザは長年のの慣れと天性の才能によって物の数十秒で魔法を完成させた。これでピスの四肢を縛り上げる。
動きが止まったと思ったのもつかの間、ピスの体内から真っ赤な光が漏れだした。拘束呪文の反対呪文だ。鎖がちぎれると再びソドめがけて動き出す。だが、2人とも全く驚いていなかった。金色の鎖が再びピスに絡みつく。1度目の拘束が解かれるのは織り込み済み。2度目、3度目と何度も何度も拘束呪文をうちだし、徐々にピスの動きを止めていった。その間ごとに数十秒の間ピスの動きが自由になるがそこはソドが双剣で応戦して時間を稼ぐ。
「ピス、自我を保て!」「お前は決して「殺すこと」を望んでないだろ!」とソドはピスに呼びかけ続けるがやはり反応はなかった。
そして10度目の拘束呪文でようやくピスは完全に動きを止めた。ソドは目の前に立つとゆっくりとピスの指をほどき棍を手放させた。
力なくピスが倒れこむ。それを小さな体のソドは懸命に駆け込んだ。




