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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
始まり – 試練を越える

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その奥にあるもの

ジャラジャラ…ジャラジャラ…

周囲の照明が徐々に薄暗くなっていく

床の至る所に散らばるガラスの破片

長い爪痕がそこら中に刻まれ

目の前を赤い鎖が取り囲み

草刈り鎌がその中心でゆらゆらと浮かんでいる

……

グルルル…グルルル…

目の前に、二本の角がまっすぐ俺に向けられている

鱗と石の破片に覆われた体

無秩序に生えた牙と爪

六つの白い目が、俺を真っ直ぐ睨みつけている

……

バチバチ…バチバチ…

怪物の全身を電流が駆け巡る

黒い煙がゆっくりとその体を包み込んでいく

「貴様…それは…やはり…」

「貴様だ…最後の…」

「すべての…強者も…弱者も…」

「残っているのは貴様だけ…貴様さえいればいい…貴様だけで十分だ…」

……

ドッ!!

怪物が俺に向かって突進してくる

牙を剥き出しに、顎を大きく開いて

……

ビュンッ!

赤い鎖が怪物に向かって一気に飛んでいく

怪物を絡め取り、牙を締め上げていく

……

ギリ…ギリ…

怪物は床に押さえつけられたまま動けなくなる

全身を赤い鎖がびっしりと覆い

牙が次々とひび割れていく

それでも顎を無理に開け、目だけは俺から離さない

……

コツ…コツ…

「トガミ様」

コウカは二本の剣を背後に収め、ゆっくりと俺に近づいてくる

「大丈夫ですか?」

……

「俺…俺は…」足が凍りついたように動かない、目が怪物から離せない

「俺は…平気…だ…」

……

スッ

「無理しなくてもいいですよ、トガミ様」

コウカは腰を低く落とし、手を俺に差し伸べる

「初めてこの光景を見た人は、みんな同じ反応をしますから」

……

「……」俺はコウカの手を取り、ゆっくりと体を起こす

……

「コウカ」俺は目を見開いたまま怪物を見つめる

「あれは…何なんだ?」

「さっきまで…まだ全部…」

……

「身体の防衛反応です」

コウカは両手を組み、怪物のほうに視線を向ける

「抗生物質で副作用を起こす人がいるのと同じです」

「人間の体は、人それぞれです」

「たとえ潜在能力が高いと評価された人でも」

「こうなることは、たまに起きます」

……

「つまり…」俺はさらに目を見開いて怪物を見つめる

……

「そうです」コウカは俺のほうを向き、静かに頷く

「ウォッチャーの中にも、いろいろな人がいます」

「そして時々…運命は本当に残酷ですね」

「今、貴方の目の前にいるように」

……

ククク…

「やはり…同じような連中だな…」

怪物が低く笑いながら俺たちを睨む

……

「……」背筋に冷たいものが走る

……

「貴様らなど…どれだけ時間が経とうと…」怪物は目を細めて俺を見る

「誰も何も知らない…誰も理解などしていない…」

「信じがたいほどの傲慢さ…」

「そして、哀れなことよ…」

……

ケケケ…

「貴様らは…決して真実を見ることはない…」

怪物の口元に白い煙がまとわりつく

「それとも…見たくないだけか…」

「決して安らかに眠ることのないものについて…」

……

ガシッ!

鎖が怪物をもっと強く締め上げる

床に叩きつけ、牙がさらに砕け散る

床に赤い血だまりが広がっていく

……

スッ

「トガミ様」

コウカが急に俺の前に立ち、怪物を視界から遮る

「こんな戯言を聞く必要はありません」

「もう行きましょう!」

「ここは少し置いておけば、処理班が来ますから」

……

「……」喉が詰まって言葉が出ない、頭が無意識に怪物の方を向こうとする

……

ジャリ…ジャリ…

「貴様…貴様のような連中は…」

怪物が必死に頭を上げ、俺を睨みつける

「結局…貴様らもみんな同じ結末を迎える…」

「貴様は変えられない…貴様らには決して変えられない…」

「血は流れ…貴様らの後ろには何も残らない…」

……

ドガンッ!!

鎖が怪物をもっと強く床に叩きつける

床のタイルにヒビが広がる

「どうだ…何も変わらないという感覚は…」怪物は薄く目を開けて俺を見る

「貴様らがやったことは…何ももたらさない…」

「そしてすべては…繰り返す…また繰り返す…」

……

トン

「行きましょう、トガミ様!」

コウカが俺の体を優しく押し、正面に向きを変えさせる

「まだたくさん、見せたいものがありますから」

……

コツ…コツ…

「……」俺はゆっくりと背を向け、遠くの廊下の方を見つめる

…………….

ドサッ!

怪物の体が床にぐったりと横たわる

鱗に覆われた体が次々とひび割れ

牙が一本ずつ落ちていく

二本の長い角にも深い亀裂が入り

電流が止まり

六つの白い目がゆっくりと閉じていく

そして、俺の耳に小さく響く囁き

「助け…て…」

……

コツ…

「……」俺の足がぴたりと止まり、ゆっくりと後ろを振り返る

……

「どうかしましたか、トガミ様?」

コウカは首を傾げ、微笑みながら俺を見る

「何か気になることでも?」

……

「助け…て…」怪物の奥から弱々しい声が響く

「お願い…」

「誰か…いないの…」

……

…コツ…コツ…

俺はコウカの横をすり抜け

ゆっくりと近づき、体を低くかがめる

赤い鎖に縛られた怪物のすぐそばまで

……

パキッ…パキッ…

鱗があちこちで砕け散り

その奥から、赤く染まった瞳が涙を浮かべて俺を見ている

そして、中から必死に叫ぶ声が漏れ出す

「誰か…お願い…助けて…」

「お願い…誰でもいい…」

「嫌だ…死にたくない…」

……

グイッ!

俺は思わず怪物に飛びつき

鎖を必死に引き剥がそうとする

服が真っ赤に染まり

目を見開き、裂け目に向かって叫ぶ

「頑張れ!」

……

トン

「ここまでにしてください、トガミ様」

コウカが静かに俺の肩に触れ、体を低くする

「どれだけ続けても、無駄なんです」

……

「試してもいないのに、どうしてわかるんだよ!」

俺は鎖を引っ張り続け、顔を歪める

「この中にまだ助けが必要な人がいるかもしれないだろ」

「こんな風に見捨てられるわけないだろ!」

……

「ダメです」コウカは目を伏せ、静かに首を振る

「これまで何人も試してきました…」

「でも…」

「一度こうなってしまったら…」

「ほぼ、元に戻す方法はありません」

……

ストン…

「どうして…こんなことに…」俺は無意識に鎖を離し、顔が凍りつく

……

「本当に多くの人が試しましたよ…」

コウカは俺を見つめ、手を優しく頭に置く

「でも時には…」

「ただ純粋に努力するだけでは、足りないんです」

……

俺の体がゆっくりと崩れ落ち、奥の瞳を見つめる

手が鎖に触れ

そして無意識に…

……

……

ギュッ…

俺の手のひらの中で…

草刈り鎌が淡く光り始め

その前に、一つの影が浮かび上がる

……

「やあ!」

影が片手を額に当て、もう片方の手で腰の鎌に触れる

「久しぶりだね」

「今回、僕に会いに来た理由は何?」


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