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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
残響の果てに

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38/88

静時の流れ

暗闇に覆われた部屋の中央で

周囲を無数の数字が取り囲み

テーブルの上で激しく輝くランプの光…

同じ円卓を囲んで

十二人の人間が座っている

目の前には分厚い書類の束

そして全員の視線が、ただ一人の影に向けられている…

「まず、隊長の皆様に感謝の言葉を申し上げます…」

剣道は周囲を見回しながら視線を巡らせる

「逼迫した状況の中、全員が全力で尽力してくださいました…」

「そして、先ほどの攻撃をことごとく阻止することに成功しました。」

「そして、支援部門の皆様にも感謝を…」

剣道は顔を向け、手を一つのグループに向ける

「どんなに急を要する状況でも、迅速にサポートしてくださいました。」

「それによって、被害を最小限に抑えることができました。」

…………

腕を組んで見つめる一人の男

部屋中に輝く禿頭

目の前に置かれた「2」の数字が入った帽子…

「剣道!」

男が睨みつける

「俺たちをここに集めたのは、そんな空っぽな礼の言葉を言うためじゃねえだろ?」

「もちろんですよ、綾野。」

剣道は軽く頷き、左手を横に伸ばす

「今から私の秘書に、現在の全状況を説明させます。」

……

コツ…コツ…

一つの影がゆっくり近づいてくる

手にしっかりと握られた手帳…

「皆様、こんにちは!」

女性は軽く頭を下げる

「皆様の貴重なお時間をこれ以上無駄にしないよう…」

「私、秘書の波島美和が、総司令に代わりまして…」

「引き続き説明をさせていただきます。」

……

ピッ!

一人ひとりの前に青いスクリーンが現れる

無数の赤い点が散らばった地図と共に…

「ご覧の通りです…」

波島は軽く手を地図に向ける

「去る8月7日…」

「我が国の太平洋に面した全域が…」

「琉球から始まり、東海岸全域にわたって…」

「攻撃を受けました…」

「しかし、最悪なのは…」

波島は目を軽く閉じ、濃い赤い点に手を向ける

「我々は沖縄との通信を完全に失いました。」

……

トン!

テーブルの右端から…

屈強な体格の男…

胸に「3」の数字が刻まれ…

拳を強くテーブルに叩きつける…

「なんでこんなことになったんだ?」

男は波島を振り返る

「はっきりとは分かりません。」

波島は軽く首を振る

「しかし、敵が現れる前に、沖縄および偵察艦との連絡が途絶えていました。」

………

ギリ…

「まさかまた中国の連中じゃねえだろうな…」

男は歯を食いしばる

すっ…

「そんなことはありません!」

剣道は両手を組み、軽く顎を乗せる

「どういう意味だ?」

男は目を吊り上げて剣道を見る

……

「我が国だけではありません…」

剣道は地図を軽く縮小させる

地図は今や球体になり…

無数の赤い点が広がる…

……

「見ろよ、俺たちだけじゃねえだろ?」

綾野が軽く球体を回す

「その通りです。」

剣道は軽く頷く

「我が国以外にも…」

「南シナ海を除く、海に面したほぼ全ての国が…」

「今と同じ状況に陥っています。」

「分かったか?」

剣道は男に向き直る

「いつも性急に考えるのは良くないですよ…」

「東条さん…」

「…」

東条は体を少し引く

………

そっ…

一人の少女が軽く手を挙げる

紫黒の長い髪…

肩に「6」の数字が刻まれた制服…

「このような状況であれば…」

少女は剣道を見る

「全世界監視システムが即座に異常を検知するはずでは?」

「それに、多くの場所で…」

少女は両手を横に広げる

「常時哨戒艦が巡回し、海上には直接測定機器も設置されています…」

「ではなぜ…」

少女は目を細める

「我々は攻撃を事前に察知できなかったのですか?」

……

「それこそ、次に議論する内容です。」

剣道は波島を見る

「続けてください。」

……

スクリーンが切り替わる…

今度は衛星の軌道が表示され…

回転が停止している…

「これは全世界で記録された異常です。」

波島はスクリーンを指す

「原因は不明ですが…」

「しかし、全世界監視システム『セラフィム』は…」

波島は衛星を見つめる

「事件発生日から今日まで…」

「海上でのいかなる動きも一切記録していません。」

「地上監視システムも…」

波島はスクリーンを軽くスワイプ

「あるいは偵察部隊からの通信も…」

「すべて突然途絶えました。」

「これがシステムの故障なのか…」

少女は部屋全体を見回し目を細める

「それとも誰かが意図的に仕組んだ陰謀なのか…?」

「現時点では結論を出すに足る情報がありません。」

波島は少女に目を細めて返す

「今、憶測を重ねるのは非常に危険です…」

「神崎隊長。」

………

「でも…」

綾野は剣道を振り返る

「それだけじゃ、あの連中を隠し通せるわけがないだろ…」

「その日現れた怪獣だって…」

綾野は目を細める

「どんな探知からも逃れられるような種類じゃねえぞ。」

………

シュッ…

スクリーンが切り替わり…

今、画面に映るのは…

黒い空を裂く激しい雷雨の中…

怪獣たちの姿…

「それこそが、今最も重要な問題です。」

剣道は軽く頷く

「人魚族の攻撃だけではなく…」

「今回、怪獣も出現しました。」

「しかも、どれも簡単には対処できない種類です。」

「ご存知の通り…」

波島はスクリーンに手を向ける

「今回、怪獣は人魚族の攻撃地点すべてに出現しました。」

「そして各個体の脅威レベルは、すべてHighクラス以上です。」

……

「今回の件で…」

剣道は周囲を見回す

「人的・物的損失が非常に大きくなりました…」

「7機のイージスすべてが深刻な損傷を…」

「多くの都市も機能停止に…」

「ですから…」

剣道はスーツ姿の男に視線を向ける

「このタイミングで、貴社の支援をお願いしたいのです…」

「修復だけでなく…」

「イージスの改良、そして現在の供給チェーンの確保も…」

「本気か?」

男は目を細めて剣道を見る

「金は安くねえぞ。」

「逼迫した状況ですから…」

剣道は男に向かって手を差し出す

「敵か怪獣がいつ現れるか分からない…」

「だからこそ、手を貸してほしいんです、松崎さん。」

ぱしっ…

「分かったよ。」

松崎は軽く微笑む

「値段は問題じゃねえ。」

「ただ、紙の上での権利をしっかり確保してくれりゃいい。」

………

「剣道…」

口を覆った男が振り返る

「それだけなら、報告書を書くだけで済むだろ。」

「わざわざ顔を合わせる必要はねえ。」

「もちろん、まだもう一つありますよ、竜馬さん。」

剣道は軽く微笑む

………

「皆さんもご存知の通り…」

剣道は周囲を見回す

「先の戦闘で、我々はあまりにも多くのものを失いました…」

「負傷者が無数に、そして帰らぬ人も…」

「隊長クラスと一部の能力者以外は、ほぼ全員が影響を受けています…」

「そこで…」

剣道は波島を見る

「熟慮の末、我々はある解決策に決定しました。」

………

ピッ…

「ご覧ください。」

波島は画面を切り替える

……

「これ…」

竜馬が目を見開く

「まさか本気か、剣道?」

綾野が目を細める

ふふ…

「面白いわね?」

神崎が軽く微笑む

ははは!

「ついにこの手に出たかよ?」

東条が顔を上げて笑う

……

「ご覧の通り…」

波島はテーブル全体を見回す

「この新訓練システムによって…」

「戦場に立つ兵士たちの戦闘能力を確実に確保できます。」

「また、人件費の無駄な支出も削減でき…」

「今後の発生コストも抑えられます。」

どん…

「剣道!」

綾野がテーブルを叩き、目を吊り上げる

「軍隊ってのは集団の力だ。たくさんの人間が団結してこそ強えんだよ。」

「こんなことしたら、どこに力が出るんだ?」

「だからこそ、この方法が必要なんです。」

剣道は綾野を真っ直ぐ見据える

「10人の強い人間が団結して戦う方が…」

「100人の弱い人間がバラバラに戦うより、よほどマシです。」

……

「でも、このやり方じゃ…」

竜馬は剣道を振り返る

「才能を見逃す可能性が高くねえか?」

「目の前を見てください!」

剣道は目の前の書類の山を指す

「新兵も現役兵も、全員のリストがここにあります。」

「隊長の皆さんは自由に観察・選別・評価・選択してください。」

……

ぱら…ぱら…

今、全員の視線が…

一枚一枚の紙に向かい…

手が次々と動く…

す…

「隊長の皆さん、どうか時間をかけて評価してください…」

剣道はテーブルに手を置く

「それぞれのチームに、最適な人材を選んでいただければ。」

…………………………………………

こつ…こつ…

部屋のドアが大きく開き…

静かに人影が去っていく…

……

「本当にいいのか?」

陸王が剣道に近づく

「もちろんです。」

剣道は静かに頷く

「今はすべてが必要なんです。」

「そういう意味じゃねえよ。」

陸王は眉を寄せ、腕を組む

「総司令じゃなくて、人としてのお前を聞いている。」

「お前、本当にあの子をそんな目に遭わせる気か?」

陸王は顔を上げる

「大丈夫です。」

剣道は静かに目を閉じる

「どうせ、ハルは自分でそう選んだんですから。」

「それに君も知っているでしょう…」

剣道は陸王を振り返る

「歯車が回り始めたら、もう止められない。」

ばりばり…

「毎回毎回そうだ…」

陸王は頭をかく

「今度こそ、あいつが残した通りになることを祈るしかねえな。」

「我々にできるのは、待つことと、従うことだけです。」

剣道は軽く頭を下げる

…….

「そうだ。」

剣道の目が鋭くなる

「あの時君が会った連中…」

「間違いない。」

ぐっ…

「つまり、奴がここまで追いついてきたってことか?」

陸王は拳を強く握る

「そして今度こそ、逃がしません。」

剣道は出口を睨む

………………………………………………………………………………………………………………

ぽた…ぽた…

湿った岩壁の間…

闇がすべてを包み…

月光が細い隙間からわずかに差し込む…

ざり…ざり…

二つの影が並んで立つ

一人は黒い衣をきつく巻き

もう一人は顔の皮が剥がれ落ちた女…

道の先の光を見つめて…

……

「いつまでその仮面被ってるつもりだ?」

黒衣の男が振り返る

「もう偽装、ボロボロじゃねえか。」

「ほっといてよ!」

顔の皮が剥がれた女が笑う

「久々に美人ちゃんのフリできるんだから。」

「ちょっとくらい楽しませてくれてもいいじゃん?」

……

しゃり…しゃり…

道の突き当たり…

無数の影が周りを囲み…

中央に太った男が座り…

手に長い鎖を引き…

すぐ横で枷に繋がれた女が沈んでいる…

「遅えじゃねえか?」

太った男が声を上げる

「すみません、ボス…」

仮面の男が笑う

「ちょっと予定外のことが起きちゃって…」

「どうでもいい。」

太った男は顎を上げ、手を差し出す

「早くよこせ!」

さっ…

「焦らないでよ、ボス。」

仮面の男は写真をゆっくり取り出す

「逃げられるもんじゃねえんだから。」

………

すっ…

太った男の手元の写真…

緑髪の少女が、紅蓮の炎の中に立つ姿…

……

じゅる…

太った男の目が見開き…

唇が歪み、息が煙のように…

よだれが口の端から長く垂れる…

「おお、見ろよこいつ…」

太った男が舌なめずり

「随分と大きくなったじゃねえか…?」

……

ぶる…ぶる…

鎖が震え…

繋がれた少女の目が見開き…

体が後ずさる…

「どうして…」

少女の唇が震える

………

くいっ…くいっ…

洞窟の天井から…

月光の下に小さな光点…

レンズが静かに調整される

…………………………………………………………..

遠くの部屋…

書類が山積み…

スクリーンが激しく光る…

ピッ…

スクリーンが突然消え…

手がファイルに伸びる…

ひら…ひら…

物がゆっくり落ちる…

ギリ…ギリ…

闇の部屋の中心から…

触手が闇を裂いて飛び出す…

少女の目は写真から離れない…

くふ…くふふ…

指が唇に触れ…

頰が赤く染まり…

笑みがどんどん広がる…

「見つけた…」

…………

…ジ…ジジ…

監視カメラのランプが赤に変わり…

触手に囲まれた少女を捉え…

写真には、はっきりとハルの顔が映っている…

……………………………………………………………………………………………………………….

ウィィ…ウィィ…

空っぽの空間…

浮遊する岩の破片…

衛星の光が激しく輝き…

レーザーが地上を照らす…

「今度こそ、負けねえ。」

「今度こそ、誰も失わねえ。」

「今度こそ、二度とウラヌスなんて起こさせねえ。」

………………………………………………………

ズァァ…

青空を貫き…

嵐の中心へ…

緑の光が空間を切り裂く…

ブオオオ…ガアアアッ!

巨大な獣が天を仰ぐ

…………………………

キィン…

深海を貫通…

光線がすべてを切り裂く…

軍勢を越え、陸地へ…

深淵の闇へ…

決して許されざる場所へ…

ピッ…

赤い光が夜を切り裂く


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