すべては、まだ終わっていない
ドド…ドド…ドド…ドド…
土砂が砕け散り、あちこちに飛び散る、静かな夜が引き裂かれるように……
地面に爪痕が深く刻まれ……
そして赤い光が、月明かりに照らされながら疾走していく……
…
「黒鋼隊長!」男がメックの頭部を黒鋼の方へ向ける
「それって、まさか俺が思ってるアレか?」
「歴史がまた繰り返したな!」黒鋼が微笑む
「分かったか、兵士?」黒鋼が目を機体に向ける
「了解!」
…
「おい、おっさん?」
「おっさん!」レンが目を男に向ける
「どうした、ガキ?」男が顔を上げる
…
「結局、あの光の先って何しに行くんだ?」レンが光の方を指差す
「ガキは知らなくていい!」男がハンドルを握りしめ、笑う
「ちょっとくらい教えてくれてもいいだろ?」レンが前を向く
「まあいいか!」
…
ドドドドドォォォォンッ!
機体が遠くの光の筋に向かって突っ走る……
………………………………………………………………………………………………………………
ガラガラ…ガラガラ…
月光すら圧倒する光の下……
道路に散らばるレンガや石の破片と共に
白い長い髪、そして青い一本の角が、白い鎧の軍団の方へ視線を向ける
…
ハッ…ハッ…
「真希……本当に久しぶりだね……」コウカが傷ついた腕を強く握る
「本当に久しぶりだね、コウカちゃん!」真希が微笑む
「教えてよ、君は……」真希がコウカに向かって手を差し伸べる
……
ドドドドド…!
遠くから足音が響いてくる……
青い流れが二人に向かって突進してくる……
槍や銃がまっすぐに突き出され……
…
グッ…グッ…
「まだ……まだいるのか……」コウカが軍団に背を向け、剣を必死に握りしめる
「絶対に……お前たちを……」コウカが唇を噛み締める
…
トン…
「もういいよ、コウカちゃん!」真希が軽く肩に触れ、コウカを見て微笑む
「ここは私に任せて!」
「でも……これは……その体……」コウカが真希に手を伸ばす
「大丈夫って言ってるでしょ、相変わらずコウカって心配性だよね!」真希が腰に手を当て、軍団の方を振り返る
…
ドッ…ドッ…
「あいつも、私たちと同じ選択をしたんだ!」真希が軍団に向かって歩き出す
………
ゴゴゴゴ…ゴゴゴゴ…
「人類をすべて殲滅しろ!」白い鎧の一人が叫ぶ
「奴らが引き起こしたすべての罪のために!」
「我々が耐えてきたすべての苦しみのために!」
…
ウォオオオッ!
「もうこれ以上、何も失うわけにはいかない!」
…
スッ…
「ごめんね、みんな……」真希が剣を目の高さに構え、唇を噛む
「でも……」
「私にも守らなきゃいけないものがある!」真希が軍団に向かって飛び込む
…
ヒュオォォ…
剣先に風が巻き起こり、真希の体を包み込む……
…
ズゴォォォォンッ…バラバラッ!!
土砂があちこちに吹き飛び……
一機、また一機、白い鎧が空中に吊り上げられ……
軍団が真っ二つに分断される……
…
ガシャ…ガシャ…
火花が響き渡り、無数の武器が絶え間なく襲いかかる……
前、後、左、右……
そして一人の少女が、剣の嵐の中で舞っている……
…
パチ…パチ…パチ…
青い弾丸が絶え間なく飛来し……
そして出現したのと同じ速さで、すべてが霧散する……
…
ドガッ!バゴォンッ!ドッカッ!
巨大な穴が次々と地面に刻まれ……
建物が粉々に砕け、兵士たちがその間に挟まる……
道路がひび割れ、地面が白い鎧を呑み込む……
…
シャッ…
そして荒廃の只中で、すべての敵が倒れたとき……
少女はまだ立っていて、剣を固く握りしめている……
…
「誰のせいにもしないで!」真希が目を閉じる
「これはただ、起こるべきことだっただけ!」
…………
ドサッ!
突然、一つの体が道路に崩れ落ちる……
その視線は、まだ真希に向けられたまま……
…
ダダダダ…ダダダダ…
「コウカちゃん!」真希が全力で駆け寄る
…
ゼェ…ゼェ…
「コウカちゃん、大丈夫?」真希がコウカを支え起こす
「私……私……私……」コウカが顔を歪め、傷を押さえ、目を細める
「私……大丈夫……」
…
スッ…スッ…
「本当にコウカって言えない子だね!」真希がコウカの額に手を当てて撫でる
「もう何百年も経つのに、相変わらず全然変わらないよね
「さあ、背中を向けて! 私が手当てしてあげる!」
…
カチッ…カチッ…
奇妙な緑の光が現れる……
コウカの背後で火花が散る……
そして真希の額が、びっしょりと汗に濡れる……
…
スッ…
「はい、終わった! もう分かってるよね……」真希が額の汗を拭い、微笑む
「本当に……そこまでしなきゃダメだったの?」コウカが目を逸らす
…
「いいじゃん! 恥ずかしいことなんてないよ!」真希が笑って、コウカに向かって両手を広げる
「昔だってずっとやってたじゃん!」
「でも……それは君……今の君じゃなくて……」コウカが両手を絡める
…
パチッ…パチッ…
「待たせないでよ!」真希がコウカに向かって両手を差し出す
「私みたいな龍脈持ちしかできないって、コウカもよく知ってるでしょ!」
……
ギュッ…
淡い緑の光が空気中に広がる……
夜空に光の粒が浮かび……
二人の間に電流が走る……
そして真希の肌が、徐々に鱗の欠片へと変わっていく……
…
スリ…スリ…
「何百年も……寂しかったよね?」真希が優しくコウカの頭を撫でる
「私たちを待たなきゃいけなくて、しかも何度も何度も私たちが……」
「死んでいくのを……」
…
ギュッ…
「そんなに多くないよ……そんなに長くないよ……」コウカが真希の服を強く握り、胸に顔を埋める
「何回でも、私は待てる!」
…
ウフッ…
「そんなこと言わないでよ!」真希が微笑み、軽く首を振る
「コウカだって知ってるでしょ!」真希の視線が月に向かう
…
「もうすぐ終わるよ!」真希が自分の手を見つめる
…
ズッ…
「そんなこと言わないで……やだよ……」コウカが真希の服を握りしめる
「どうして……いつもそうなんだろ……」
…
ポン!
「そんなこと言わないで!」真希が優しくコウカの頬を持ち上げる
「これが私たちの宿命、私たちが背負ってるもの……」真希がコウカの目から涙を拭う
「この渦は、いつか必ず終わる……
「私たちか、彼らか……
「コウカはずっと知ってたよね?」真希がまっすぐコウカを見つめる
………
ズゴォォ…ズゴォォ…
地面が揺れ始め、道路の石ころが震える……
………
戦場の只中に、金色の光が輝く……
コウカの足元に、一振りの剣……
…
「なるほどね!」真希が微笑む
「だからあいつは自分を保っていられたのか」
…
グッ…
真希がコウカを抱き上げ、ビルの方へ目を向ける
「君……君……何してるの!」コウカが手を握りしめ、足をばたばたさせ、真希の目を見つめる
「降ろして! 本来これは私の役目でしょう!」
…
ザッ!
二人の少女が夜空に浮かび、二振りの剣が闇の中で輝く……
真希の顔に明るい笑顔、コウカの目は大きく見開かれる
「もうちょっとだけ、私たちのこと見ててね!」真希がコウカを見て微笑む
………
ガシャッ!!
レンガや瓦が飛び散り、屋根の破片が四方八方に……
ガラス片が夜空にきらめき、物が散乱する……
獣型メックが障害物を蹴散らしながら突進する……
そして二人の人間が、今はその肩の上に立っている……
…
カッ!
白い髪が徐々に黒く短くなり……
鱗が肌から落ち、角が消えていく……
………………………………………………………………………………………………………………
…
ん……
…
「ここ……どこ……」俺は周りを見回し、必死に目を開ける
…
「何が……起きたんだ……?」
…
ググッ…ググッ…
「どうして手が……こんなに重いんだ……?」ハルが腰を屈め、体を引き上げる
…
「コウ……コウ……コウ……」ハルの目が大きく見開かれ、唇が震える
「コウカ! 何やってるんだよ?」
…
クスッ…
「約束したもの、渡してくれないの?」コウカが微笑む
「俺……俺……俺……」ハルが後ずさる
「俺、何を約束したんだよ!?」
…
ガハハハ!
「新顔の無賃乗車どもを見てみろ!」機体の反対側から声が響く
…
カッ…
「遅れてすみません!」コウカが機体から降りる
「どうかお許しください、黒鋼隊長!」
「いやいや!」黒鋼さんが空中で手を振る
「むしろちょうどいいタイミングで来たんだよ!」
…
ゼェ…ゼェ…
「どうして……体が……しびれる……」ハルが胸に手を当て、機体に手をつく
…
「え?」レンが横を振り返る
「ハル? それに星真さん?」レンの目が大きく見開かれる
「二人とも、いったいどこにいたんだよ?」
…
「それは……」俺が頭をかく
「気にしなくていいわ、小林さん」コウカが俺の方を振り返る
「ただの二人の秘密よ!」コウカが俺にウインクする
…
「ハル、意外とそういうタイプだったんだ!」レンが鼻に手を当て、口角を上げる
「俺、完全に見る目がなかったかも!」
「違うって!」俺が両手を大きく振る
「もし田中さんに知られたらどうする……」レンが機体の頭を俺の方に向ける
「違うって言ってるだろ、ただの誤解だよ!」俺がコウカを見る
「な、コウカ?」
…
クスッ…
「さあね?」コウカが俺を見て、指を唇に当てる
………
パン、パンッ!
「ここまで!」黒鋼さんが手を叩く
「まだもう一人迎えに行かなきゃ……」黒鋼さんの指が川岸を指す
…
家の隙間から……
二人の少女の姿が現れる……
一人は槍、もう一人は弓……
向かい側に、大勢の白い鎧の軍団……
…
「かつて我々が果たせなかったことを成せ……」ハルの頭に声が響く
ギュッ…
ハルの手が剣を強く握り、緑の光が溢れ出す
………………………………………………………………………………………………………………
ドゴォォンッ!!
隣の家の壁や木材が一気に吹き飛び……
ガラス片、家財道具が乱れ飛ぶ……
…
目の前の家を突き破り、獣型メックが両者の間に立ちはだかる……
……
ギュオオオッ——ドガガガッ!!
咆哮する豹メックの体に赤い光が鮮やかに浮かび……軍団に向かって突進する
…
ガンッ!
黒鋼さんがガントレットを強く打ち合わせる……
そして金色の光が、夜の中に眩しく閃く……
白い鎧の軍団が足を止め、手で目を覆う……
…
「何が……起きている……」早咲が槍を下げ、手で目を覆う
…
「篠見……」ハルの目が篠見にすがるように見つめる
「手を出して!」ハルの手が篠見に向かって伸びる
「早く!」
…
「ハル……」篠見がそっと手を差し出す
…
ギュッ…ズッ!
「早く行くよ!」ハルが篠見の手を強く握る
「OK!」レンが操縦桿を街の方へ向ける
…
「早咲……」篠見が振り返る
「私についてきて!」
…
バッ!
「お嬢様!」早咲がメックに飛び乗る
………
「一体何が起きたんだ!」金線の白い鎧が周囲を見回す
…
ムッ…
「人間どもが……」金線の白い鎧が槍を強く握る
「ここで止めることを提案する!」緑線の白い鎧が立ち上がる
「我々はもう目的を達成した。続けても損失が増えるだけだ!」
…
ガンッ!!
「黙れ!」金線が緑線の鎧を殴る
「お嬢様をあの御方に連れ帰るまで、誰も離脱は許さん!」
「だが、今追っても何の得にもならない!」緑線が拳を握る
「下賤な家の分際で何が分かる!」
…
「さっさと立ち上がって追え!」
………………………………………………………………………………………………………………
ドドドドド…!
豹メックが夜に沈む街に向かって疾走する……
…
ポンッ!ポンッ!ポンッ!
「私がどれだけ君を探したか知ってる?」篠見がハルの胸を何度も叩く
「このバカ!」
…
「知ってる、でもそれは……」ハルの視線が横に逸れる
「だって私よりいい子ができたからでしょう?」篠見がハルをまっすぐ見つめる
「私がダメだから捨てたんでしょう?
「よくもそんなことできるよね?」篠見がハルの胸に顔を埋める
「やめて……そんなの……」
…
フフッ…
「田中さん……」コウカが口元に手を当てる
「どうしましたか……」篠見が俺の胸から顔を少し上げる
「私たち、そんな関係じゃないわよ!」コウカが微笑む
「本当?」篠見が目を丸くして俺を見る
…
「信じなくてもいいけど……」コウカが両手を頭の後ろにやる
「どうせ私が本気になったら、もうとっくにこの子は私のものだったわ……」
…
ヘヘッ…
「それでいい……」篠見が俺をぎゅっと抱きしめ、顔を胸にすり寄らせる
………..
ガンッ…ガンッ…
黒鋼の背後から金属音が響く
「やめろ、魚人!」黒鋼が振り返る
「どうしてやめられようか、お前たちが……」早咲が槍を強く握る
…
はぁ……
「どこにでもこういう偏った奴はいるな!」黒鋼が頭をかく
「どういう意味だ?」早咲が槍を下げる
「まずは何を優先すべきか考えてから動け!」黒鋼が空に手を上げる
…
「フン!」早咲が槍を下ろす
「ならばお前も理解しているはずだ……
「……今逃げるのは、ただ無関係な者を巻き込むだけだ!」早咲が目を細めて睨む
…
ハッハッハ!
「誰が逃げるって言った!」黒鋼が街の方へ目を向ける




