闇はすべてを呑み込まない
ポタッ…ポタッ…
木片が散らばり、煙がモクモク立ち込める中
赤い光が空間すべてを呑み込む
…
プハァッ!
目の前に立つ少女の視線
そして怯えた子供たちが母親にしがみつく
…
さっきまで銃口を向けていた白い装甲が
今は宙に浮き……鉄の鉤爪に貫かれ……
装甲が突き破られ……
そして……
ドクドクと溢れる滴が……
床を真っ赤に染めていく……
…
ギギッ…ギギッ…
「いや……ありえない……ありえない……」白い装甲がゆっくり鉤爪に手を伸ばす
「俺たち……全部破壊したはずだ……」
「この手で……俺が……」全身の装甲がガクガク震える
…
「その自信が仇になったんだろ?」赤い光の方から響く声
「俺たちの仲間が……どうして……」白い装甲がゆっくり振り向く
「当ててみろよ」
「俺たちは……何を間違えた……こんな目に……」白い装甲が鉤爪をギュッと掴む
「てめぇらと俺たちは……」男が操縦桿を握りしめる
「……すまねぇ……」
「だが、許せねぇ……」
「命令に従った駒だろうと……」男が奥歯をギシッ
「俺は絶対に……」
…
バキィィッ!
「家族に手ぇ出したヤツは一人残らず許さねぇ!!」
月明かりが周囲の目を照らし、家の中が一瞬真っ赤に輝く
そして一本の血の道が、家の中を縦に走る……
…
ゴォォォォォンッ!
月光の下、赤い滴が宙に舞い、白い装甲を追う
木っ端微塵の瓦礫とレンガが飛び散り、家が真っ二つに割れる
…
漆黒の巨体、燃えるような赤い目、豹を思わせる顔に長い牙
その視線が少女と子供たちをまっすぐ捉える……
………
「何……これ……何が起きてんだよ……?」ネネが呆然と機体を見上げる
「そのメカ……」三日月さんが振り向く
…
ひゃあっ!
「お母さん怖い……」翔也が母の服をギュッ
「…」圭がクマをぎゅっと抱きしめて三日月さんの腕に隠れる
…
「おーい!みんな聞こえてる!?」聞き慣れた声が響く
「この声……」ネネが目を見開く
「オイ!返事しろよ!!」
「レン!?お前か!?」
「他に誰がいるんだよ!」
…
ぎゅっ!
「お前……お前……」
「今まで何してたんだよ!?」ネネが拳を握りしめて振り上げる
「どこにいたんだよ!?」
「どこからその化け物引っ張り出してきた!?」
「なんで早く戻ってこなかったんだよ!?」
…
「だってよ……」ネネが顔を伏せる
「知ってる?……すっげぇ心配したんだから……」
「わかってるって!ごめんってば……」レンが操縦桿から両手を離すっと離す
「でも俺が何を経験してきたか知らないだろ?」
「このおっちゃんのせいで……」
ぎゅっ!
肩をギュッと掴む手……
男がうつむいたまま……
…
「まぁいいや、そんな話は後回し!」
「今はみんなをここから連れ出すのが先だ!!」
「レン……」ネネが手を後ろに伸ばす
「考えてみろよ、足を怪我してる人と子供二人だぞ」
「絶対安全なとこまで行けないって!」
…
「それに……」ネネが胸をドン
「こんな時間にこの街に安全な場所なんてあるわけ?」
…
「それは……」レンが頬を掻く
………
「ここだ!」男がパネルを指差す
「そこに何が?」レンが振り返る
「見たろ、ここに人間の熱源がある」
「でもなんでそこなんだよ?」レンが目を細める
「熱源ならこっちの方が圧倒的に多いだろ?」赤く染まったエリアを指す
…
カタカタカタ…
「甘いな、よく見ろ!」男が赤の少ないエリアを連打
「見てみろ、何かおかしいだろ……」レンがゆっくり指の先を見やる
…
「これって……」レンが目を見開く
「……熱源が……外に押し出されてる……?」
目の前のエリアでは
弱い熱源が……強い熱源から完全に離れて……
…
「おっちゃん、まさか……?」
「ああ、そこでは誰かが守りながら戦ってる」男が軽く頷く
「記憶が正しければ、黒鉄隊長の近くだったはずだ」
「今はあそこが一番安全だ!」
「じゃあさっさと行くぞ!!」レンが操縦桿を握る
…
「ネネ……」機体が頭を下げる
「何?」ネネが顔をしかめる
「早く乗れよ!」
「は?」ネネが首を傾げる
「安全な場所見つけた!早く!!」機体が熱源の方へ向き直る
「ったくあいつ……」ネネが鼻梁を押さえる
「さっきから何も聞いてねぇじゃん!!」
「言っただろ!!」
「俺たちみたいに走れねぇって!!」
「考えろよ!動いたら次の標的になるだろ!!」
…
「Hmmmm……確かに……」レンが目を閉じて顎に手を当てる
「あ!そうだ!!」
「じゃあ……」
…
ギギィ…カラカラ…
機体が頭を下げ、横に鉤爪を伸ばす
煙がモクモク……
口がゆっくり開く……
…
「みんなここに乗れば俺が運んでやる!!」レンがニッコリ
「は!?」ネネが腰に手を当て口を開ける
「冗談だろ!?」
「俺を飯扱いすんなよ!!」
「でもこれが一番安全だろ!!」レンがモニターをまっすぐ見る
「イヤよ!!」ネネがプイッと横
「もっとマシな方法あるでしょ!!」
…
はぁ…
「ったくあいつ頑固……」レンが伸び
「現実的になれよ!!」ネネが振り向く
…
トコトコ…トコトコ…
「さぁ、二人とも!」三日月さんがゆっくり機体に近づく
「三日月さん、でもあれが……」ネネが手を伸ばす
…
「ここで待ってるよりはマシでしょ?」三日月さんが微笑む
「気をつけてね!」子供たちが一人ずつ中へ
…
「でも……」
…
フゥッ…
「まぁいいか!!」ネネネが顔を上げて機体へ
…
ドドドッ…
「ちゃんと運転しろよ!!」ネネが口の縁に掴まる
「おう!天才ドライバーに任せとけ!!」レンが胸を叩く
…
カチカチカチ…
「頭と顎をしっかり固定しろ……」男がボタンを押す
「わかってるってば……」レンが男をチラ見
「おっちゃんもう何回目だよ!!」
…
ズシャッ!ズシャッ!
土煙が舞い、爪跡が道路に残る
獣型機体が街の影を縫うように疾走……レーダーの目的地へ……
………………………………………………………………………………………………………………
ガチガチッ!
バンッ!バンッ!
目的地に近づくほど光が鮮明に……
白い煙の向こうで青い光と金色の光が激しくぶつかり合う
…
ドゴォッ!ドゴォッ!
「おっちゃん、前見て!!」レンが光の帯を指す
「やっぱり読み通りだ!!」男が椅子から身を乗り出す
「でもこの状況で連れてくのは……」
「よし、ここで止めろ!!」男が操縦桿を引く
…
ズシッ…
獣型が足を止め、ゆっくり体を下げる
「おいレン、また何企んでんだよ!?」ネネが睨む
「安全な場所って誰もいねぇじゃん!!」
「俺も知らねぇよ!!」レンが首振る
「じゃあなんで止まるんだよ!!」ネネが拳を握る
「俺じゃねぇって、おっちゃんが……」レンが男を指す
…
「今はここにいてくれ!!」男が声を張り、機体を開いたままの家に向ける
「この状況じゃ直行は無理だ!」
「俺たちが戻るまでここにいろ!!」操縦席が前へ突進
ドドドドドッ!
「ってことで……」レンが操縦桿を握りしめる
「みんな待っててくれよ!!」
そして機体が煙と炎の中へ飛び込んでいく
…
「ちょっと待てよ!!」ネネが手を伸ばす
「それじゃわかんねぇよ!!」
…
「ったく……」三日月さんが微笑みながら呟く
「ここまで来たら……せめて家に帰らなきゃね……」
「バカだねぇ……」
「三日月さん、何か?」ネネが振り向く
「何でもない!さぁ中に入りましょう!」三日月さんが小さな手を二つ引く
………
ガガガッ!ガガガッ!
バンッ!バンッ!
ドンッ!ドンッ!
近づくほど画面に映る光景が鮮明に
二つの銃火が交錯し、槍が拳で弾かれる戦場
…
ガガガガッ!
「おいおっちゃん……」レンが振り返る
「作戦あんのか?それとも突っ込んでぶっ潰すだけ?」
「バカ言え!!」男が目をギラつかせる
「さっきみたいにやればいいだけだ!!」
…
バキッ!
ガガガガッ!
瓦礫が飛び散り、壁に爪跡が残る
煙柱の陰を縫い、獣型がゆっくり近づく
…
ガリガリッ!ガリガリッ!
屋根を軽く引っ掻きながら、獣型が角に身を潜める
…
カチッ…
「何だ!?」白い装甲数体が屋根へ銃を向ける
…
バラバラッ!
煙が四方に落ち、瓦礫がバタバタ
そして赤い目がチラチラ
…
ズズッ…ズズッ…
「ガキ、緊張しすぎだ!」男がモニターを睨む
「ゆっくりだ!ゆっくり!!」
「遠くのヤツから狙え!!」
「わかってるって……」レンの頬に汗がダラダラ
…
そして獣型が煙の中からゆっくり鉤爪を伸ばす……
…
ガチッ!
一機の白い装甲が隊列から引きずり出される……
残りがキョロキョロ
…
ガチッ!ガチッ!ガチッ!
次々と煙の中へ消えていく……
…
ガチャッ…
「何だこの化け物!!」白い装甲が後ずさる
…
ダダダダダッ!!
「撃て!!」一機が武器を握りしめる
ギャーッ!キャーッ!
次々と煙に呑まれ、赤い目に沈む……
…
煙が晴れると残った白い装甲が互いに寄りかかり……
体が硬直し、武器を握ったまま……
煙の向こうから現れる燃える赤い目と漆黒の巨体
ゴォォォォンッ!
…
炎の下に広がる真っ赤な地面……
.........
ギリ…ッ
「……すまねぇ……」男が小さく呟き、操縦桿を握りしめる
「だが他に方法がねぇ……」
「おっちゃん、今何か?」レンが振り向く
「いや……早く迎えに行こう!!」男がネネたちを置いた場所を見る
……
操縦席の二人が同時に凍りつき、目を見開く
目の前に……
必死に立ち上がろうとする少女……二人の子供を後ろに引く手……
そして立てない女性……
そしてその胸元に突きつけられた槍……
…
ギュッ…
「頼む……」男が操縦桿を握りしめ、唇を噛む
「やめろ!!」
「止めてくれ!!」
...
ズバァァッ!!
「もう俺の代わりに罰を受けさせるな!!」機体が一直線に突進
………………………………………………………………………………………………………………
ヒュッ…ヒュウッ…
体中に切り傷……
血で顔が完全に隠れる……
…
「なんで……こうなったの……」ネネが必死に目を開けようとする
「ねぇ……やめてよ……なんでそんな……」
…
クッ…フッ…
「てめぇらにそんなこと言われる筋合いねぇ!!」白い装甲が槍を握りしめる
「てめぇらが俺たちにしたことはいいけど、俺たちがしたらダメかよ!?」
「私たち……あなたたちに何したっていうの……?」ネネが子供たちをぎゅっと抱く
…
フフッ…
「知らないのか……知りたくないだけか……」白い装甲がネネをまっすぐ見る
「それとも……知らないふりか……」
…
「どっちでもいい!!」白い装甲が三日月さんを見て槍を振り上げる
…
「思い出させてやるよ!!」
…
「お母さん!!」翔也が手を伸ばす
「ごめんね!」三日月さんが微笑み、涙を浮かべる
「元気に生きてね!」
…
「てめぇらもそうしてればよかったのによ!!」白い装甲が槍を振り下ろす
ネネが子供たちの目を手で覆い、自分も顔を逸らす
三日月さんが翔也をまっすぐ見て目を開く
…
ゴウン…ゴウン…
近づいてくる音……
……
「でも……てめぇらはしなかった……」槍が振り下ろされる
…
ドシン…ドシン…ドシン…
獣型が全力疾走、地面に亀裂が走る
…
ガッシャァンッ!!
全員の視線が槍の持ち主へ
宙に浮くスープの滴……
潰れたラーメン屋の屋台……
飛び散る箸とスプーン……
そして「Ramen」の文字……
…
ガリッ…ガリガリッ…!
「何だ……」白い装甲が槍を地面に突き刺し身を低くする
…
そして月明かりの下、散らばった器とスープが道を濡らす
長い引きずり跡……
そこに立つのは……赤い短髪の長身の少女……
「ギリギリ間に合った!!」少女が腰に手を当て、もう片方で額の汗を拭う
「ツメ子……ちゃん……」ネネが固まって目を見開く
「何してんだよここで……」
「それ!?」ツメ子が笑顔でネネを見る
「当たり前だろ!みんなを迎えに来たに決まってんだろ!!」ツメ子が胸をドン!




