静かな夜に響く叫び
[少し時間を巻き戻して]
………………………………………………………………………………………………………………..
まだ夜に沈む人波の中、ろうそくの灯りがわずかに揺れるばかり
二人の人間は……残りの群衆とは逆方向へ進んでいた……
………
バタバタッ…バタバタッ…
…
「ねぇ…おっちゃん…ちょっと遅くしてくれない?」レンが足をよろめかせながら必死に追いかける
「何言ってるんだ?もう躊躇ってる時間なんてない!」男はレンの手首をぎゅっと握りしめる
「時間がないって……でもそれって何のために……」
「説明してる暇はない、俺について来い!早く!」男は突然レンの手を離して走り出す
…
ダダダッ…ダダダッ…
「なんであの人……酔っ払ってるくせに……俺が……負けるなんて……」レンが息を切らして後を追う
……………
しばらく夜の闇の中を走り続けた後、二人は巨大な倉庫の前で足を止めた
周囲には誰もおらず、一筋の灯りも見えない場所
…
ハァッ…ハァッ…
「おっちゃん……」レンは両手を膝について背中を丸める
…
「俺たち……ここで何を……探してるんだ……?」顔を上げて男を見る
「なんで……そんなに急いで……」
…
シッ!
男の体は彫像のように固まり、唇をわずかに動かした
「静かにしろ、ガキ!と囁く
…
「なんで?」レンが男の方に目を向ける
「急に動くな!」男の唇が小さく動く
「ここは何かおかしい!」男は周囲に目を走らせる
…
「よく聞けガキ!」男はゆっくりとレンに向き直る
「俺の合図で……あっちの雲が月を隠したら……」
「倉庫の扉に向かって一直線に走れ、わかったな?」
「すぐわかったよおっちゃん!でもなんでそんなことしなきゃいけないの?」レンは姿勢を崩さない
…
「俺を信じろ!準備はいいか?」男は空を見上げる
「もちろんできてないよ!ていうか何の準備だよ?」
「3… 2… 1…」
そして薄い雲が月を隠した瞬間
…
「今だ!」男は一気に扉へ飛び出す
「ちょっとおっちゃん!」レンもすぐさま後を追う
ダダダッ…ダダダッ…
……
「ガンッ」
薄い雲はすぐに流れ去り……月明かりが再び道を照らす……
さっきまで照らされていた二つの背中は、今や倉庫の影の下でぴったりと寄り添っていた
…
「心の準備をしろガキ!」男は燃えるような目でレンを見る
「準備?でも何の?」レンが顔を近づける
「さっきから何が起きてるのかさっぱりわかんないんだけど!?」レンが両手をばたばた振る
「なんでここにいるの?なんで急いでるの?」
「なんで泥棒みたいにこそこそしなきゃいけないの?」
…
「奴らがここにいる……」男は鉄の扉に耳を当てる
「奴ら……って誰よ……?」レンは目を大きく見開いて男を見る
…
「敵だ……」男は軽くドアノブに触れる
「どういうこと?」レンは固まり、目を大きく見開く
「敵がここにいる!だから急がなきゃ、でないと……」
…
「ガラガラッ」
「……全てが……遅すぎる……」倉庫の扉が引き上げられ、二人はその闇を見つめる
…………………………………..
パチンッ…パチンッ…
空中で絶え間なく火花が飛び散り、
闇に呑まれた倉庫の中で光の粒が弾ける
ポタ…ポタ…
闇の奥から滴る音が響くが、何も見えない
…
「まずい!」男は拳を握りしめる
「まずいって……何が……」レンがゆっくり振り返る
「俺たちは……もう遅かった……」
…….
コツ…コツ…コツ…コツ…
「お前はあっちのスイッチを探せ、俺はこの辺だ」男はすぐ壁沿いに進む
「でもどこにあるかわかんないよ!?」レンは両手を顔の横に広げる
「壁を伝っていけば見つかる!」男の姿は闇に溶けていく
「わかった……」レンは反対側の壁へゆっくり進むレン
…
コッ…コッ…
「おっちゃんがあんなに慌てることって何?」レンは手を壁に這わせ続ける
「ったく、ただの倉庫なのに……」
…
ヌチャ…
「……普通の……」足が急に重くなる
…
ズチャ…ズチャ…
「何これ気持ち悪い!」靴底に冷たい感触がじわじわ伝わってくる
「どこだよもう……」レンは前へ前へと手を振り回す
…
「あ!やっと見つけた!」レンはにやりと笑い、スイッチをゆっくり上げる
………
「カチッ」
光が倉庫全体を包み込み、瞬間、レンの目が凍りついた
…
「ぎゃっ!」
レンはゆっくり後ずさり、まぶたが震える
視線が自分の足元へ……そこは真っ赤に染まっていた……
片手で服を掴み、もう片手で壁を叩き続ける
…
「ありえない……ありえないよ……」
「何これ!」
………
ザッザッ…ザッザッ…
「ガキ、何だ!?」男が急いで戻ってくる
「動くな!今行く!」
…
レンの震える指が前方を指し、唇も震え続ける……
体は石のように固まり、目は見開かれたまま……
…
「やっぱり……俺たちは遅すぎたか……」男は目を閉じて顔を背ける
………
巨大な機体は完全に破壊され……関節は粉々に砕け、フレームは崩れ……
エネルギー槽には無数の穴……引き裂かれた装甲から電線がはみ出し……
装甲には赤い跡が長く伸び……
操縦席の中では人々が頭を垂れ……絶え間なく滴が流れ落ち……
…
そして何人もの人間が……電線で縛られ空中に吊るされ……
目は白目を剥き、口は大きく開き、肌は青白く……
体には無数の刺し傷が……
…
「おっちゃん……何が起きたんだ……一体誰がこんなことを……」レンの拳がぎゅっと握られる
「人類共通の敵……魚族だ……」男はレンの視線を避ける
…
「でもおっちゃん前言ってたじゃん……俺たち昔は一緒に暮らしてたって……」レンは唇を噛む
「ああ……言ったな……」男は小さく頷く
「じゃあなんで……」レンが一歩近づく
…
「ギュッ」
「なんであいつらがこんなことするの!?」レンは男の襟首を掴む
「なんで俺たちはあいつら滅ぼさないの!?」
…
「なんであんな野蛮な連中と一緒に生きなきゃいけないんだよ!?」
…
「クッ」
「落ち着けガキ、俺もパニックだ……」男はレンの肩を強く掴む
「俺にももうわからん……」
「これは魚族のやり方じゃない……少なくとも俺が知ってる連中は……」男は周りを見回す
…
「ギュッ」
「でも今はそんな話をしてる場合じゃない……」男はレンの袖を強く握る
「奴らがここにいるってことは……」男は夜に沈む街の方を見る
…
「……もう俺たちを皆殺しにする覚悟ができてるってことだ」
「だから……ガキ……」男はレンを見つめる
「今、お前の力が要る」
「力?俺に何ができるって?」
「メックに乗れ!この前戦った時みたいに!」
…
「パシッ」
「おっちゃん酔っ払いすぎて目が見えてないの!?」レンは男の手を払い、顔をしかめる
…
「もう動く機体なんて残ってないじゃん!」レンは壊れた機体を指さす
「俺たち……もう何もできない……」
…
「まだ一台だけ……奴らが壊してない機体がある……」男はまっすぐレンを見る
「まだ……ってどういうこと……そんなはずない……」レンは目を大きく見開く
「ついて来い!」男は歩き出す
……………………….
ギギギッ…ギギギッ…
壊れた巨大機体の奥……
倉庫の小さな扉が開かれ、色あせた黄色い塗装に埃がびっしり……
…
「入れ!」男が扉を指す
…
コツ…コツ…
「これって……」レンは立ち尽くし、目が離せない
「驚くのも無理はない。こいつは滅多に使わないからここにしまってあったんだ!」男はゆっくり近づく
「でもおかげで奴らに見つからなかった!」
…
今、二人の前に現れたのは……紫の照明の下に収まる巨大な機体……
長い両腕……細い両脚……厚くて平べったい黒い装甲が全身を覆い……
手足には長い鉤爪が生え……
頭部は豹を模した形状で……口の両脇に長い金属の牙が伸びている……
…
「紹介しよう……」男は腰に手を当てる
「パンサー……市街地と山岳戦闘専用の設計モデルだ」
「こいつ……」レンは口を開けたまま見上げる
…
「この腕じゃ俺は操縦できない……」男はギプスを巻いた腕を見る
「だからガキ……」
…
「ギュッ…」
「俺に力を貸してくれ!」男は頭を下げ、レンの手を握りしめる
「嫌だ……嫌だよ……」
「もう……失いたくない……」
「……大切な人たちを……二度と……」涙が床にぽたぽたと落ちる
……………………..
静かな夜の中……まだ眠り続ける人波……
月明かりが路地を照らす……
…
「ガギャァン!!」
壁が吹き飛び、鉄骨が飛び散り……
煙塵の中、赤い目が街路を疾走する……
………………………………………………………………………………………………………………
灯りの消えた家並み……川沿いの小さなろうそくの灯り……
一軒だけ明かりが灯り、扉が開いたままの家……
…
カチ…カチ…カチ…
時計はまもなく深夜0時を指そうとしていた
…
「どうしてみんなまだ帰ってこないの?」ネネは両手を握りしめ、道を見つめる
「もう遅いってわかってる?」
…
コツ…コツ…
「まだ立って待ってるの、石川さん?」三日月さんが杖をついて近づく
「早く休みなさいよ、私に任せて」
「そんなわけにはいきません!」ネネが振り返る
…
「だってあの人たち、私の友達なんですから、私が待つべきなんです」
「それに、もう十分ご迷惑かけてるのに、これ以上頼めませんよ」ネネは微笑む
…
「いいのよ……」三日月さんは優しく笑って玄関へ向かう
「私、待つことには慣れてるから……」
「もう少し待ったって、平気よ……」
…
「たとえ……」三日月さんの頬に涙が伝う
「……その人が二度と戻らないとしても……」女は月を見上げる
…
「そんなのダメです、三日月さん!」ネネが顔を近づける
「これ以上ご好意に甘えられません!」
「それに……」
「私が直接待ってなきゃ、帰ってきたら遅いみんなをガツンと怒れないじゃないですか!」ネネは拳を握る
…
ククッ…
「だったら私も一緒に怒らせてくれない?」三日月さんが口元に手を当てる
「それくらいなら……いいですよね……」ネネは扉の方へ向き直る
………………..
コツ…コツ…
「言ってるそばから……」ネネは笑って街の方を指さす
「ほら、ようやく帰ってきたよ!」ネネは腰に手を当てる
「一体何してたのこんな時間まで!?」
「レンはもう言うまでもないけど……」
「篠美さんも十神さんも一緒ってどういうこと!?」
…
トコ…トコ…
「ねえ、急にどうしてみんな黙ってるの?」ネネの顔が曇り、足が後ずさる
「何か言ってよ!何でも許すから……
…
トコ…トコ…
「みんなのこと心配してるだけだよ、黙って近づかないで!」ネネは腰を落とし、近づく黒い影を見据える
…
ガチャッ…ガチャッ…
黒い影が急に加速し、家に向かって突進してくる
どんどん、どんどん……近づくほどに巨大になっていく……
…
「バッ」
「石川さん!早く逃げて!」三日月さんがネネの肩を掴み、ドアをバタンと閉める
…
バンッ!... ドンッ!
激しい叩きつけ音が続き、ドアが押し戻され続ける
…
ギィッ…
「絶対に入らせない!」ネネが急いで椅子を引きずってドアを塞ぐ
「これも使って!」三日月さんが軽い物を投げてくる
…
「パチッ」
部屋の灯りが消え、全ての家具がドアの前に積み上げられる
バンッ!... ドンッ!
ドンッ!
………
ハァッ…ハァッ…
「もう……行ったかな……」ネネはドアを凝視する
「そうだと……」三日月さんは杖を握りしめる
…
トコ…トコ…
背後から小さな足音がして、二人は一瞬で振り返る
…
「お母さん!どうしたの?」翔也が目をこする
「ネネちゃん……何してるの……お兄ちゃんは……?」圭がクマのぬいぐるみを抱きしめる
…
「何でもないのよ、ちょっとお母さんがうっかり片付けちゃっただけ」三日月さんが子供たちに近づく
「そ、そうだよ……何でも……ない……」ネネの唇が震える
…
「お母さんがまた寝かしつけるね」
………………
コンコン…
コンコン…コンコン…
玄関が激しく揺れ、ひび割れが走る
…
「お母さん、あれ何?」翔也がドアを指さす
…
「ネネちゃん……怖い……」圭がぬいぐるみをぎゅっと抱く
…
…
ガシャァン!
木片が飛び散り、家具が粉々に砕け散る
そして巨大な槍が……彼らの前に迫る
…
ひゃっ…ひゃっ…
キャーッ!
子供たちはすぐ三日月さんの背後に隠れ、震える手で服を掴む
…
「お前たちは何者だ……何が目的だ……」ネネはゆっくり後退り、目を大きく目を見開く
「下がれ……下がれ!」ネネは両手を振り続ける
「下がれって言ってるだろーが!!」
…
ヴゥゥゥ…
巨大な装甲が武器を向け、青い光が眩しく輝く
「俺たちを恨むな……
「お前たちが恨むべきは……俺たちをここまで追い込んだ奴らだ……」
……
「お母さんごめんなさい!ごめんなさい!」三日月さんが振り返り、子供たちを抱きしめる
…………………………….
ガシャァン!
青い光が突然消え、装甲が武器を下ろす……
そしてその背中から……水が滴り落ち……
……鋭い爪が胸を貫き……
入り口から赤い光が爆発的に広がる……
…
「俺の家族に近づくな!!」赤い光の中から轟く声
みなさん、こんにちは!
今日はちょっと急なんですけど、小さなお知らせがあります。
今、過去に書いた章を大きめに改稿中です。
ざっくり言うと、最初の8章を中心にガッツリ手を入れてます。
改稿した章は、毎週土曜日の11時ごろにアップしていきます。
で、ちょっとだけ我慢してもらえると助かります。
今この本編を書きながら、前日譚も同時にやってて、
さらに古い章の修正もあって、仕事も試験勉強もあって……
本当に、一人で全部やってると体力ヤバいんですよ……
でも! rewriteはちゃんと全部終わらせるし、2作品とも進行は止めません。
もし時間あったら、ぜひ覗きに来て読んでみてくださいね!




