第13話 やはり最強戦士ですね
読んでくれてありがとう!
「参加者、全員準備完了!!カウントを開始するぜ!!」
「3……!」
「2……!」
「1……!」
「開始ッ!!!」
ドォンッ!!!
合図と同時に、地響きのような衝撃が起こった
誰かの大剣が地面を砕き、土埃が舞い上がる
私は冷静に周囲を見渡し、
まずは一番近くにいた鉄槍の男へと向かった
「悪いがまずは、君からだ!」
横なぎに振るわれた槍を、紙一重でかわす
そのまま地を蹴って懐に入り、膝蹴りで男を吹き飛ばす
ドガァッ!
鉄槍の男は、仰向けにぶっ飛び場外へ
まずは、一人……次はあそこだな
私は左右から襲いかかる二人組を確認すると、逆にその攻撃を利用して彼らの武器同士をぶつけさせた
すれ違いざま、剣の柄で一人の腹部を打ち抜く
「グッ……なんだこいつ!?」
「こ、こいつ……動きが速すぎる……!」
私を見てそう呟いた者も、すでに足がすくんでいた
今の私は、決して“ただの仮面剣士”ではない
さて、残りは──
高台から全体を見渡すと、アーサーが軽快なフットワークで3人相手に戦っていた
ゼロは身のこなしが軽く、カウンターを狙いながら数人を脱落させている
ワンは元気に剣を振り回して、まぐれで当たり2人も倒していた
そして……煙の中からスッと現れたヘルガ
彼は相手の背後に回り込み、ナイフ型の武器で首筋に一撃、見事に失神させる
ふふ……我が仲間たち、なかなかやりますね
私は剣を軽く回しながら、次の獲物へと視線を向けた
──五人目を沈めたあたりから、周りの様子がおかしくなった
「あいつ……やばくないか?」
「あぁ、動きが……おかしい、早すぎる……!」
戦場の一部で、私にだけ大きな“空白地帯”ができていた
他の参加者たちは、本能で私の存在を避けるように距離をとっている
そのとき──
「囲め!全員でやれば勝てるはずだ!!」
誰かが声を上げた。
それが合図となり、十人ほどの猛者たちが私の周囲を一斉に取り囲む
「……なるほどまとめてくるか」
私は、軽く剣を握ったまま、一歩だけ足を引いた
「な、なんだ……構えてないぞ?」
「隙ありだッ!」
一人が剣を振り上げ、私へと突撃してくる──その瞬間
「少し、ウォーミングアップに付き合ってもらうぞ!」
私は手にした剣を、天高く放り投げた
きらめく光の軌道を描き、剣は空の彼方へ
「……え?」
敵たちは一瞬、目を奪われる。
「武器を……捨てた?」
「素手でやる気かよ、バカかッ!」
「いや、違う…マズイッ!」
ドゴォッ!!
叫び声が上がるより早く、私は一人の喉元に手刀を打ち込み、失神させる
「がっ……あ、ああっ……!!」
同時に、回し蹴りで別の男の脇腹を蹴り飛ばし、膝蹴り、肘打ち、掌底の連続
音もなく動き、音もなく沈める
「し、信じられない……!」
「くそっ!……なんでこんな奴がいるんだよ……ッ!」
三人目、四人目、五人目──わずか数秒で、私は敵を順に薙ぎ払っていく
そして最後の一人に肘打ちを叩き込み、場外に吹き飛ばしたそのとき、
「良いタイミングだ!」
私は、真上から落ちてきた剣をそのまま、片手でスッと受け止めた
空気が止まったかのように、全員の動きが止まり、観客席からはざわめきが広がっていた
「な、なんだあいつ……」
「誰なんだ!……あの仮面の剣士は……!」
「あれ、本当に人間か……?」
観客の中には、息を飲みながら立ち上がる者すらいた
その様子を、アリーナの反対側で見ていたアーサーは、目を見開いていた
「あの人……めちゃくちゃ強い……!」
仲間であるアーサーでさえ、目を疑うほどの戦闘力
もちろん、それが私であるとはまだ誰も気づいていない
そして、私は静かに地面を踏みしめながら剣を収め、
「まだやるのか?」とばかりに周囲を見回す。
誰一人、近づこうとはしなかった
ふぅ……詠唱魔法で“魔法を封印し、肉体を極限強化した状態”
思ったより制御が難しいですが楽しいですね
残りの参加者は、私を避けるようにして戦い合い、減っていく
そんな中、ひとりだけ、真っ直ぐに私へと歩み寄ってきた者がいた。
「…あんたここで一番強そうだな」
その声はどこか平坦で、抑揚がない。
仮面越しに見据えると、そこに立っていたのは──
ヘルガか
日本刀を構えた彼が私に向けて歩み寄ってくる
「俺と一戦、頼みます」
その言葉と同時に、風が唸る
刃が空を裂き、真横から私の喉元を狙う
私は咄嗟に剣を横に払って受け止めた
キィィンッ!
衝突の火花が、地面に散った
その一撃は見た目からは想像もつかないほど鋭く、深い
“素で”これほどの身体能力……やはり私とは違いステータスが高いようですね
「やるな」
「そちらこそ」
そう言うと、ヘルガは続けて連撃を繰り出してくる
刀はただ速いだけじゃない。
一撃一撃が必殺になりうる威力、切るべき場所、止めるべき間、崩すべき重心
……まるで、侍のような剣筋
それもそのはず──
彼のスキルは現代武器の創造と完全操作
そして、武器に触れた瞬間、その使い方を完全に理解する
当然、日本刀を握った今、彼は達人そのものだ。
私は全身を戦士仕様に強化しているがスピードも反応も互角
それでも、彼の間合いの鋭さには唸らされていく
「……そこか」
ヘルガが回り込み、斬撃を繰り出す
私は下がって距離をとり、剣を握り直した
「貴様強いな……我の次にな!」
「それは、違う俺はあなたよりも強い」
そこからの数秒
私達の攻防は、まるで剣の舞のように激しく、速く、美しかった
ヘルガの日本刀が私の胸元を狙い、まっすぐに振り下ろされる
私はそれを剣で弾き、体を半回転させながら左手の肘で反撃を狙う
「ふはは!楽しいぞ、貴様との勝負!」
ヘルガもすぐに体勢を崩さず、逆の手で拳を突き出してきた
まさに、互いの決着がつくその刹那だった
──ゴォォンッ……!
低く、重い音が会場中に鳴り響く
続いて、審判の声が魔法で拡声される
「これにて一次予選、終了ーッ!生存者数が規定人数に達したため、バトルロワイヤルはここで打ち切りとします!」
「なにっ!」
「……くそ」
私とヘルガ、二人の武器が止まったまま、互いを見つめ合う
私がわずかに呼吸を整えながら武器を下ろすと、ヘルガもゆっくりと刀を鞘に収めた
「悪いが試合は、お預けのようだな」
「……えぇ残念です」
正体を隠していることを忘れそうになるくらい、胸の奥に熱が残っていた
それほどの死闘それほどの手応え
バトルロワイヤルが終わり、陽も傾き始めた頃
私は、仮面を付けたまま観客の視線から少し離れた一角で息を整えていた
「……ふぅやはり疲れますね」
まだ熱を持つ体が、戦いの余韻を静かに燃やしている
ヘルガとの戦い……ギリギリでしたね
やはり同じ転生者、強さも桁違いでしたね
その時、背後から声がした。
「おーい!さっきのすごい剣士のお兄さん!!」
「……!」
振り向くと、ワンが走ってきていた。後ろにはゼロ、そしてエクシズとアーサーの姿もある。
「お兄さん、すっごい強かったね!!」
「ん〜あなた、どこかで……?」
ゼロがじっと私を見つめる、仮面に隠された視線が鋭い
流石に…気づかれてはいない、はず
「お兄さん、名前なんていうの!?私はワン!」
「ジストと名乗っている、よろしくお嬢さん」
わざと落ち着いた声でそう告げると、ゼロはふんわりと微笑んだ
「……ジストさん、お互いに頑張りましょうね」
「そうだ!俺たちも頑張るからな!」
アーサーが拳を握って元気よく言う
横ではエクシズが、私を見つめながら言う
「ジストさんって少し私の好きな人に似ていますね……えっえっとつまりかっこよかったって事です!」
心が、少し痛むが楽しいですねこれ
……もう少しだけ、この姿のままでいよう
その時、会場の中央にある鐘が鳴った
進行係の冒険者ギルド員が高らかに声を上げる
「本日、予選通過者による『剣王大会本戦トーナメント』の抽選を行います!選手の方々は中央へお集まりください!」
「いよいよだな!」
「わたしたちも行こっ!」
ワンとアーサーが駆け出し、ゼロとエクシズが後を追う
私も、その背を静かに追いながら仮面を外した
また読んでね!