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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生三学期編
291/298

風紀委員とかあったね2


 昼休み。


「………………う……あ……」


 水月が起きた。


「大丈夫?」


 サンドイッチを食べながら僕が聞いた。


 僕たちは購買でパンやおにぎりを買って昼休み中は水月につきっきりだった。


「真白先輩……」


 保健室のベッドに寝ていた水月が覚醒して、それから状況を察したのか、


「すみません。先輩方にはご迷惑を……」


「と云うと思ったけど杞憂だよ。恋慕か友誼かはこの際置いといて、僕らにとっては水月も鏡花も大切な人だからね」


 ちょっと気障ったらしいかもしれないけど紛れもなく本音だ。


「ですです」


 華黒も追従する。


「………………大丈夫……? ……えと……」


「今は水月ですよ」


「………………あう……」


 ルシーる。


「やはは。本当に心配したんですから。おかげで授業に集中できなくて寝ちゃいましたよ」


 もう一回「やはは」と笑って黛。


「でも本当に大丈夫?」


「はい。今はもう……っ!」


 とそこでめまいが襲ったのか少し水月の体が揺らいだ。


「無理しない方がいいですよ」


 華黒が優しく頭を撫でる。


「寝ていてください。一応使用人には連絡をつけましたから落ち着いたらロールスロイスで帰りなさい。いいですね?」


「はい。先輩……」


 ペンネーム華黒大好きっ子さんはほんわか頷いた。


「それで?」


 これは僕。


「どこか悪いの?」


「先日言ったように病が原因です」


「DID?」


「いえ。伏せている方です」


「ああ」


 そんなこと言ってたね。


 統夜にもはぐらかされちゃったし。


「一種のストレス障害でして、ああいう悪意に耐性が無いんです」


「ふむ……」


「俺は大丈夫なんですけど鏡花の方が……」


 そういえば鏡花の方が基本人格で水月は交代人格なんだっけ。


 何時でも交代可能で人格同士も会話できる当たりまだ他にもありそうだけど、そうすると鏡花自身も水月の背中に隠れている程度で悪意に間接的にさらされてしまうのだろう。


 で、この結果……と。


「許せませんね」


 黛が不機嫌に言った。


「まぁそれについては仲裁も入ったし」


「そうなんですか?」


「うん。まぁ」


 淡々と僕は言う。


「お前らのせいで水月が倒れる羽目になったんだぞって言ったら風紀委員が動いて朝の乙女救済交渉団は反省文書かされる処置に落ち着いた」


「そうですか……」


 ズーンと沈む水月。


「別に水月のせいじゃないし鏡花のせいでもないでしょ?」


「鏡花」


 と僕は水月の中の鏡花に呼びかける。


「……っ!」


 すくみ上る水月。


「大丈夫だよ」


 クシャッと千夜寺姉弟の頭を撫でる。


 それから、


「僕たちがついてるから」


 ニコリと笑ってあげる。


「………………あ……う……」


 赤面した後、言葉を失い、水月は大粒の涙を流した。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


「大丈夫。少なくとも僕たちは味方だ。泣くのは恥ずかしいことじゃないし、辛いことがあれば失神していいんだよ? 後のフォローは任せて、ね?」


「………………う……あ……ましろ……さん……」


 ボロボロと涙を流す水月改め鏡花。


 ああ、おにゃのこだなぁ。


 そう思う。


 多分だけど……もろいガラス細工なんだろう。


 千夜寺の心は。


 血潮を鉄に変えるために水月と云う交代人格を作って強がっているだけの……どこにでもいるか弱い乙女。


「ま、こんなことは金輪際ないためソレについては安心して」


「………………う……あ……でも……ましろ……さん……が……」


「大丈夫。気にしない。それで鏡花を嫌いになったりするもんか」


「………………そう……なの……?」


「うん」


「………………う……あ……」


「いい子いい子」


 僕は鏡花の頭を撫で続ける。


「………………真白……さん……」


「真白お兄ちゃん」


「………………う?」


「僕の事は真白お兄ちゃんって呼んで。でなきゃ返事してあげない」


「………………あう」


 ルシールがルシーりったけどそれはこの際無視。


「………………真白……お兄ちゃん……」


「うん。いい子いい子」


 僕が優しく頭を撫でると鏡花はトロンと双眸を歪めた。


 お兄ちゃん冥利に尽きるね。


「鏡花は可愛いなぁ」


「………………う……あ……」


 背中に突き刺さる計六本の嫉妬の視線については故意的に無視することにした。


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