4-3・夫婦の語らい
三人はネロに追い立てられるようにして、元の船室へと押し込められる。ニアはキリルを見ることができなかった。
彼はニアの側にやってくると、その手を取った。
暖かな体温に、何も言えないまま手を見つめる。
「……ふむ、確かに冷血動物ではないようだ」
ニアは呆気にとられて、手をふりほどく。
「人を何だと思ってんのっ。さっきからっっ」
キリルはすぐにニアの口を手で押さえる。
「騒ぐなっ。聞こえたらどうするっ」
「……っ」
「お前は俺の妻なんだぞ? 俺が知らないで済む話ではないっ。頭に入れておけ。解剖は嫌だろうが」
「わ、わかったわ……」
「で、あれはどこまでが本当だ?」
思わず顔を顰める。あんな状態で嘘が付けるのはキリルくらいの図太い精神でなければ無理だとニアは叫びたかった。
「全部っ」
「そうか」
「おあいにく様っ、人間ですよーだっ」
思わず皮肉っぽい言葉が出る。彼は驚いたように首を傾げる。
「は? ……なんだ、急に?」
「どうせ、人間じゃないって思ってるんでしょ。あたしは人間! っていうか、あたしたちはっ、海との関係がとっても深いだけで一応、人間なのっ」
キリルは呆れたようにニアを見つめて、ため息をついた。
「当然だろう」
「はぁ?」
今度はニアが眉を跳ね上げて驚く番だ。キリルは当たり前のことのように腕組みして告げる。
「お前は魚類には見えない」
「ぎょ……っ」
言葉に詰まる。彼はさらに持論を展開した。
「そもそも鱗らしきものが見えない。魚類でも爬虫類でもないなら、昆虫か? 虫にしては手足が少ない。鳥類のように羽根もない。両生類あたりかとも思ったが、両生類とはずいぶん見た目が違う。だが、ある意味ではお前は両生類だろ?」
あまりの言葉にニアは言葉を失う。
キリルはいちいち気に障る事を言った。鱗も何も、裸を見たわけではないのだから分かるわけもない。鳥はいい、羽根くらいなものだ。だが昆虫かどうかは手足の数で判断されて、しまいには両生類にしては見た目が違うときた。
それを言うなら全て違うと心中で怒鳴る。
「俺はてっきり伝説の人魚かと思っていた。なんだ、人間か。希少価値が下がったな」
「き、希少価値っ?」
「あぁ、売っても大した金にならないし、詐欺扱いされそうだ」
「売るっっ?」
「騒ぐな。冗談だ」
ちっとも笑えない冗談を真顔で言うキリルにニアは今度こそ叫んだ。
「冗談じゃないわよっっ」
「落ち着け。夫らしく妻の気分を解してやっただけだろう。第一、人魚は歌が上手いと相場は決まっている」
「……っっ」
ニアは今度こそ言葉を失い、立ち尽くす。
ニアにとって密かなコンプレックスとなっているのは、出来過ぎる兄の存在以上に自分がどうしようもない音痴だと言うことだった。
キリルに指摘されるまでもなく、自分が音痴だということを誰より良く知っているのだ。
「脳天気な女だな。音痴云々は今関係ないだろう?」
キリルは何でもないことのように言った。
「そのうち……歌の指導くらいしてやる」
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【次話予告 → 本日 22:40 予定】
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