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タラッサの歌姫―巫女ですが偽装結婚しました―  作者: ムツキ
第四章・捕縛に尋問、そして真実
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4-2・本当のこと


 助けを求めるようにキリルを見るが、彼は怖い顔をしてミルティアデスを睨んでいた。


「は、話す! 話すからっ、やめて!」


 ニアは必死に叫んだが、ネロはナイフを持つ手を緩めない。


「ニア、俺は嘘が嫌いだ。俺は自分の言葉には責任を持つ(たち)でな」


 クスクスと笑う男に、ニアは何度も頷いた。


「絶対、嘘つかないからっ! お願い」

「……ミルティアデス殿、一ついいか?」

「何だ、キリル・オデラ」

「今、俺たちの命をあなたが握っている。だがこちらもそちらの命を握っている。今までの航海で見たことはなかったが、あの化け物が現れないという保証は今後ない。そしてそれに対抗しうるとしたら、妻の音痴な歌だ」


 ニアは内心の悔しさを押しとどめ、無言を貫く。

 ミルティアデスは冷たい微笑で信じられないことを口にした。


「あぁ、分かってるさ。だが奥方が目の前で自分の為に死んでゆく者をどれだけ見てられるか、だな。きっと協力する気になる」


(こ、この人……っ)


 その言葉の意味するところに気付いて、ニアは言葉を紡ぐことができなくなった。キリルは逆に口元に笑みさえ浮かべて頷いた。


「なるほど、分かり易い。だが、ニアは見たとおり、音で人を失神させることができる。殺す前に意識を失う心配をした方がいいだろう」


(えーっっ! 何、勝手に……っ)


 ニアを無視して二人は物騒(ぶっそう)な会話をする。キリルの正気を疑いさえした。ミルティアデスに命を握られている状態でよくも挑発的なことを口にする。

 ミルティアデスとキリルはどちらも笑みを浮かべたまま、無言で睨み合っている。


「あ、あたしっ、人間ですっっ」


 沈黙に耐えられずニアは叫ぶ。

 二人はニアを見た。その目はいかにも不審げだった。


「ホント、ホントなのっ。確かに……あたしは一般的じゃないけど……でも一応、本当におんなじだよ? その、体の作りとかも……」


 ミルティアデスがネロを見る。ネロは白刃を更に喉元に食い込ませる。

 デニスの喉にうっすらと赤い線ができた。

 ニアは慌てて付け足す。


「最後まで聞いてっっ。……その、ホントにあたしはあたしを何て表していいか分かんないの……。あたしの母さんとお兄ちゃんは海の中に住んでる。でも、ホントに人間だし、別にエラ呼吸とかでもないんだもんっ。……あたし……あたしたちは海の(たみ)、だよ」

「海の民だと? あの昔話のやつか? 海神が海底に沈めたとか言う?」


 ミルティアデスが驚きの声をあげた。ニアは観念して、詰めていた息を吐き出す。


「うん。あれ、伝説じゃなくって、今も海底王国としてあるんだ。あたしは半分だけその血が入ってて、大体二百から三百メートルくらいは潜れるし、三十分くらいなら呼吸しなくても平気。肺が空だから深海の水圧も関係ないし……お兄ちゃんが言うには生活のための進化だったんだろうって」


 キリルをチラリと見る。


(なんか……反応してくれないと、かえって居心地悪い……)


「あの歌は何だ? あの巨人だけでなく、お前の声でも失神者が出たが?」

「あ、あれは、海の中の言語? うーん、えっと……海の中って深いと真っ暗で、視覚より聴覚って言うか……音の跳ね返りで障害物の確認? あー、原理は分かんない。とにかく基本、鯨たちとの会話に使ってて、だけど、もう一個使い道があって、これがさっき使ったやつ……いきなり襲ってきた海の生物を撃退するのに、あーいう強力な音波をぶつけて失神や麻痺を起こさせて逃亡とか……」


 ニアの声は段々と尻窄(しりすぼ)みになっていく。ミルティアデスの顔にもキリルの顔にも全く反応がないせいだ。


(……ってこれじゃ、全然説明になってないっ。あーもぅっ! 解剖っとか言い出されたら、どーしよっ)


 行き着いた結論にニアは真っ青になる。確かに自分のために何人も死ぬのは嫌だし、デニスにだって死んで欲しくはない。だが、自分が死ぬのも御免なのだ。


「あのっ、……か、解剖とかは、やめて欲しくて……だって、まだ生きたいし……でもでもでもっ、ホントなのっっ」


 今こそ身重設定を持ち出すべきかと覚悟を決めた時、キリルが口を開く。


「ミルティアデス殿、彼女の言ったことは夫の俺が保証する。俺はあなたも知っての通り、王族で次期支配者だ。自分の口から出た嘘で国を滅ぼしはしない。何より我々とて声を出す方法や理由を説明できない。せいぜい意思伝達に不便だからと、喉か口に秘密があるのでは、と言えるくらいだ」

「キリル……」

「たった一つ嘘をついた事は彼女が身重でないことくらいだ」

「き、キリルっ」


 平然と(うそぶ)く姿にギョッとする。恐る恐るミルティアデスを見るが、暴露に対しての追及や憤慨(ふんがい)はなかった。


「あの状況では妻を守りたくなる俺の気持ちも分かって貰えると思っている。彼女に乱暴されたくなかった」


 ミルティアデスはしばらく無言だったが、やがてネロっと小さく声をかける。ネロはデニスを離して、ニアたちの縄をその刃で切り捨てていく。


「信じよう……今は、な」


 皆の縄が解け、ミルティアデスは意味ありげに笑った。


読んでくださってありがとうございます。

【次話公開 → 本日 21:50 予定】

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