35、計画
すみません。
「31.好きなタイプ②」で文章に誤りがありました。
誤り『ゲームでも、隠れキャラ以外で唯一婚約者がいないのがユーリウスだった。』
正しくは『ゲームでも、隠れキャラ以外で唯一ライバル令嬢がいないのがユーリウスだった。』です。
失礼いたしました。
いつも、読んで頂きありがとうございます!
ゲームではヒロインが、フェリクスの打ち明け話を聞いたあと、自分も何かできないかとひとり考える。
そして、考え抜いた結果、密かにアルバート探しを始めるのだ。フェリクスに秘密で事を始めたのは彼に負担を感じさせないためと、充分傷ついた彼をそっとしておきたいヒロインの心情ゆえだ。
アルバートの容姿を頼りに、ヒロインは街の知り合いや道行く人々に聞いて回る。
フェリクスの知らないところで、フェリクスに尽くすヒロイン。
ゲームをプレイしていたあの時、ヒロインは本当に健気だなあと感心した。
そうしてしばらく経ったある日、手がかりがあるという情報がはいり、ヒロインはその情報源をくれた人物に会いに、ひとりで路地裏に入っていく。
しかし、それは偽の情報で、逆にヒロインは拐われそうになる。
その時、颯爽と助けに入るのがフェリクスだ。悪党を叩きのめすシーンのスチル、本当に格好良かった。
普段飄々としているから、シュッとした鋭い顔つきは本当に男前で、ヒロインを守りながら敵を倒す姿にくらくらした。
それに助けに入ったのも偶然じゃなかった。フェリクスはここ最近、ずっとヒロインが放課後何かをしているのに気づいて、こっそり跡をつけていたのだ。
ヒロインの行動の意図を知ったフェリクスは、初めすごく怒る。女の子ひとりで無茶をしたからだ。でも、自分のための行為だとわかっているから、最後は照れくさそうにお礼を言うフェリクスが可愛かった。怒ってる表情は怖かったけど、本気で心配してるのが伝わってきて、ああ大事にされてるなあって実感した。
まあ、そういうわけで、とっちめて捕まえた悪党を白状させると、アルバートの行方不明と繋がっていることが判明する。
ヒロインの手によって、アルバートの居所がバレるのを恐れた犯人一味がヒロインをおびき寄せて口封じに攫おうとしたってわけ。
思わぬ情報を手にいれたフェリクスは奴らのアジトを吐かせて、ヒロインとともに乗り込む。
そして、その場所で行方がわからなかったフェリクスの弟がとうとう見つかるのだ。
フェリクスとアルバートは涙の対面を果たす。
そのスチルもすごく良かった。
美少年ふたりが薄暗闇のなか抱き合う姿と上から降り注ぐ光。そして、発光するアルバートの肌。
とても綺麗だった。
発光するアルバートの『肌』――。そうアルバートは特別な体質を持って生まれた少年だったのだ。
この国には、太陽の光を浴びると紋様のようなものが浮かび上がる形で、肌が発光する人がまれに存在する。
そういった人は本当に希少で、原因もわからない上、遺伝でもない。
ただ、太陽の光を浴びて光ることから、天上人の生まれ変わりと信じられ、『光の聖人』と呼ばれ崇め奉られたことが過去にあったらしい。その神秘さから、何か不思議な力を宿している、とも信じられていた。
だが、それも今日ではただの迷信だと知れ渡っている。
けれど、現代の今になってもまだそういった古臭い考えを捨て切れない人はいるもので、そういった人たちにアルバートのような特殊な者は狙われやすかった。
だから、ルベル家の人間は、アルバートを人々の前に決して出さなかった。
領地内で何ひとつ不自由のないように、ひっそりと大切に育て、守ってきた。
フェリクスは領地内から出られない弟のために少しでも楽しみを与えようと、プレゼントに馬を与えたのだ。
それが裏とでた。まだやんちゃ盛りの十一歳の少年は与えられた馬に乗って遊びたがった。
いつもなら大人が付き添うが、その日ばかりは皆都合が悪かった。
あとでねという大人たちの言葉を待てず、アルバートはひとり馬を出してしまったのだ。
その日運悪く、領地内に悪党が入り込んでいるとも知らずに。
太陽に照らされ神々しく輝く少年に悪党はすぐに狙いをつけ、甘い言葉で誘い、アルバートを連れ去ってしまう。
そしてアルバートは地下組織のアジトに連れていかれ、そこで『光の聖人』を有難がる人々のために、見世物小屋の住人になったのである。
この真相を知ったとき、なにそのファンタジー要素は!?となったけど、よく考えてみれば、この世界自体ファンタジーなんだから、まあそんな摩訶不思議な症状もあるかと納得したんだよね。まあ、ゲームだし。
ちなみに湖で見つかった少年の遺体は、犯人一味が用意したものだった。
半年経っても捜索を続けるルベル家を諦めさせようと、犯人たちが用意した遺体だったのだ。
そんな関係ない少年を巻き込んでの卑劣な地下組織はフェリクスとヒロインの活躍のおかげで無事お縄となる。
そうして、アルバートも無事戻り、事件は解決するのだ。
その後はフェリクスによって、ヒロインへの猛烈なアプローチが始まる。枷が取れた上、救出の一翼を担ったヒロイン。惚れて当然なのである。今まで侍らかしていた女性は一体どこに行ったのか。一途で情熱的なフェリクスの登場である。
まあ、ファンは当然狂喜乱舞するよね。
そんなことを思い返しながら、私は悪党たちの居所に目星をつけた。
ゲームでは店の外観はわかっても、正確な住所まではわからない。
悪党たちのアジトがわかった途端、場面が切り替わってしまったからだ。
だから私はこの辺だろうと目星をつけて、辺りを探し回っていたら、数時間もしないうちに見つけてしまった。
なんてラッキー。
うん。ゲームで見た通りね。寂れた裏通りに佇む、グレーの煉瓦の壁。何の変哲もないドアの真ん中には三日月のマークの中に交差された鎌の印。ドアの横には何年も前に貼られたような色褪せたポスター。
「うん、これよ、これ」
私がひとり頷いていると、一緒についてきたアンナが口を挟む。
「カレン様、一体ここに何の用です? およそ貴族の令嬢が来るような場所じゃありませんけど」
こわごわと辺りを見渡す。
「大事な用があるのよ、ここに。よし、もういいわ。帰りましょう」
アンナがほっと息を吐く。
「帰ってから、お父様に王都の警備隊を呼んでもらいましょう」
本当は今すぐにでも悪党を懲らしめてやりたいが、何せこちらは女ふたり。ゲームではヒロインも攫おうとした卑劣な輩である。
簡単にやられてしまうのは目に見えている。
なら、一旦引き返して味方を引き連れてくるのが、利口だろう。
そう思った私だったけど、上手くいかなかった。
お父様にお願いしにいったら、拒否されてしまったのだ。
「何故ですか?! お父様!」
私が詰め寄ると、お父様が困ったように頭を掻く。
「カレン。王都の警備隊はおいそれと簡単に使えるわけじゃないんだ。怪しいという理由だけでは動かせない。そんなことになったら、王都中の人間が始終びくびくして暮らさなくてはならないだろう。少なくとも証拠を提示しなくては」
「そんな――」
計画失敗。
これじゃあ、奴らを捕まえられないじゃないの。どうすればいいわけ!?
一旦部屋に帰って考え直すべきか、と思った瞬間、天啓がやってきた。
私って天才。証拠がなければつくればいいのよ。
「では、お父様、こういうのはどうです?」
私はお父様の耳に手をあて、こしょこしょと耳打ちする。
聞き終わったお父様は、目玉が飛び出るほど驚いた顔をしていた。ちょっと色を失くしている。
「ふ、ふざけるのもいい加減にしなさいっ!! アンナッ! 今すぐカレンを部屋に連れていきなさい! 部屋から一歩も出さないように! ちゃんと見張っておきなさい!」
「はいっ!!」
普段温厚なお父様が形相を変えて言うものだから、アンナが驚いた勢いで返事を返す。
「さあ、カレン様、部屋に行きましょう」
アンナに引っ張られるように、私は部屋に引きずられていった。
部屋に着いた途端、アンナが待ってましたとばかりに興味津々な顔で質問してくる。
「カレン様、一体旦那様に何を言ったんです?」
「大したこと言ってないんだけど。お父様は大人の男性だからきっと頭が固いのね。うーん、どうしようかしら」
「絶対それだけじゃないと思いますけど。なんだか嫌な予感がします」
胡乱げな目つきをするアンナを無視して、私はぽんと手をつく。
「そうだ。こういうときは、当事者に協力してもらうのが一番よね。頼みやすいし、絶対嫌なんて言わないはずよ」
「あのーカレン様。私の存在忘れてます? ついさっき、じっとしているように言われたばかりじゃないですか。カレン様を見張るように言われた私の立場も理解してください」
「部屋から出ないように言われただけでしょ。手紙を一枚書くだけよ」
私は引き出しから便箋を取り出すと、ペンを走らせた。書き終わると封筒の中に入れて、アンナに差し出す。
「はい、これ。ルベル家のフェリクスに届けてちょうだい」
アンナが警戒するように封筒を見つめる。
「何よ。私は一歩も部屋から出てないわよ。約束を守ってるんだから、アンナも素直に聞いてよね」
アンナが溜め息を吐いた。
「わかりました。届けに行きますから、カレン様は今日は一日部屋から一歩も出てはいけませんよ」
「はいはい。わかりましたー」
私は間延びした返事をして、アンナを見送った。
「心配しなくても、今日は一日部屋から出ないわよ。今日はね」
私はにんまりと笑った。




