第51話 次なる場所
魔法都市ザグラム。
王国の東側にひっそりと聳えるその都市は、3大地方都市の一角であり、人類にとっては商業都市メルクに次ぐ重要な場所である。
あらゆる物と情報が集まるのが商業都市メルクならば、魔法都市ザグラムはあらゆる叡智と技術が集まる。
アルドの提案した目的地は、まさにレンも示そうとした場所だった。
「アルド……! 僕は大賛成だよ」
「おう。俺もいいぜ」
「私、ちょっと乗り気じゃないけど仕方ないわね」
三人も同意した。アルドはそれを聞いて、「よし決まりだな」と言って地図を畳む。
そして、レンも口を開いた。
「じゃあ、次は僕の番だね。魔法都市行きに賛成なのも理由があるんだ」
「ほう、と言うと?」
地図をポケットに仕舞い、アルドはレンへ顔を向けた。
「これから話すのは、今回の闘いで思い出した僕の過去とあのスライムが最後に言っていた事の二つ……」
レンは思い出したばかりの、この世界での過去を語る。
魔法都市の地下迷宮で闘い、リッチーが使った神気を吸う謎の魔道具を強調して。
「待ってレン。あの時アンタの調子が悪かった理由ってそれ!? 神器が機能していなかったの!? 切り結んだ瞬間に剣圧で圧倒してたじゃない!」
「……あの後そうなるんだ……。七代口伝を使おうとしたまでは思い出してるけど、それ以上は……でも、僕が言いたいのはそこじゃないんだサリー」
すると、アルドが口を開く。
「……神の力そのものである神器を封じていたということは……神にも通用するかもしれんな!!」
「んで、その技術は確かに存在してるってことだな……!」
スミスがそう言った後、アルドは考えを巡らせながらサリーに聞いた。
「……ちなみにその戦闘があった地下迷宮は今も?」
「いえ、レンが迷宮の主を倒したからもう崩壊してるわ」
「……そう簡単にはいかないか……」
この話はあくまで過去の記憶。
今もそこに神器を封じるような技術や魔道具があるのかは分からない。
レンは頭を捻り始めた一同に次の情報を放った。
「うん。取り敢えずそれは後で考えよう。次はあのスライムから聞いた話だ」
簡潔に、戦闘の状況を交えて話始める。
やがて苦戦の果て、ラクーン・スライム、メッカが最後に言った言葉を伝えた。
「……そう。”記憶の鍵は魔法都市にある”確かにそう言ったのね?」
「うん。”次の鍵は”って言い方だったけど」
「……レン、その情報から察するに、新たな魔人が魔法都市を狙っているという事ではないか? 人間領に侵入した3体の魔人が連携していればメルクは簡単に落ちていただろう。だが、今回の闘いではあのスライム一体だけだった……。これをどう見たらいい? サリー?」
アルドは、過去に魔界まで潜入した経験のあるサリーに振る。
「……そうね。基本、奴らは他種族の魔人とは連携できないわ。自分の種族に妙なプライドがあるの。で、人間領に侵入している魔人は別種だという事が分かるわね」
「なるほど〜〜。っていうことは、もう一体も”記憶の鍵”を持ってて、今度は魔法都市で同じことをしようとしているって事か!?」
「そうなるわね。しかも、あのスライム並の強さって事よ。だとしたら、侵入したのは幹部クラスね」
「……うん。とんでもなく危険な状況というのはよく分かった!!!」
突然アルドが大声を出す。
そのおかげか、沈み始めていた病室の空気が少しだけ明るくなる。
「こんな時は暗くなっても良くはない! まずは魔法都市へ行くにあたって色々と準備をしなきゃだな!
レン、ありがとう。その情報は関係者に伝えておく! では、忙しくなりそうなので私はお先に失礼するよ! 二人とも大事にな!!」
「あ、うんーーって、速っ!」
レンの返事を待たずに、アルドは病室から出て行った。
「現金なやつだなーー。レンが起きるまでは結構落ち込んでたんだぞ。アイツ」
スミスは呆れながらも、笑顔である。
そんな彼の横顔に、サリーが声をかけた。
「スミス、そういえばいいの?」
「? 何がだ?」
「アンタの家族。両親がメルクに居るなら無理してついて来なくてもいいんじゃない……?」
スミスはそう言われて、一瞬キョトンとしたが、ニヤリとした笑みを向ける。
「なんだよサリー! 冷てぇこと言うなよーー!」
「……そんなつもりじゃないわ! ……ただ、アンタも分かってるでしょ? この先の旅には今回みたいな危険がついて回るって……」
「分かってるさ! それでも、妹のクレアは未だに一人で寂しがってるかもしれないんだ! 俺がここに残るなんて言ったら親父とお袋にぶん殴られちまう! クレアを連れ戻すまではゆっくり出来ねぇさ!」
「そう。悪かったわね、アンタの事、分かってるようで分かってなかったわ。妹さんが心配ならアタシも協力するわよ」
「うん! もちろん僕もね!」
「ありがとよ二人とも! でも、俺がお前らについていく理由はそれだけじゃない!」
朗らかな声で、スミスはその場に立ち上がった。
「元々はあの闘技場で死ぬ運命だったんだ……! それが何の縁だか、アルドに拾われて、レンを助けて……気がついたら諦めていた両親にも会えた! 俺はもう、十二分に助けられたさ! だからよ、今度は俺がレンやアルド、サリーに報いる番だと思うわけよ!」
「え……別にアタシは、アンタに何も……」
急に自分の名前が上がり驚いたのか、サリーは何故かしおらしくなる。
そんな彼女に、スミスはここぞとばかりに言葉を贈る。
「そんな事ないぞ! サリーは沢山の人を救っただろ!? レンや修道女を、大勢の住民を、俺の両親を! サリーが居なかったらレンや俺の両親だけじゃない! メルクだって今頃どうなってたか! そうだろ、レン!?」
「あはは! そうだね! スミスの言う通りだ!」
スミスの投げた感謝の言葉は、あまりにも真っ直ぐ過ぎた。
サリーは訳も分からず、赤面し始める。
彼女がそんな表情を見せるのは非常に珍しい。レンとスミスはそれをニヤニヤと見つめていた。
「……うう。分かったわよ! もう、何なのよその顔!!」
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