第50話 図書館にて
数刻後、ノエルと入れ替わるようにアルドとスミスが病室へ入ってきた。
「やあ、レン。今回の目覚めは早かったようだね!」
「ありがとうアルド、ほとんどスライムの中でも寝てたからね。そりゃあ、早く目覚めるさ!」
「おいおい、レン。頼むから毎回気絶するまで戦うなよな!」
「……スライムの中って眠れる程快適だったのかしら?」
冗談を挟みつつ、病室に四人が揃った。
皆、口にはしなかったが、なんだか久々な気がしていた。
雑談もそこそこに、四人はこれからの事について話し合い始める。
「これからの行き先についてだが……」
そう言ってアルドは一枚の地図を広げる。
それは人間領全域を表しているものだった。
王都アンドレア、カブレス山脈、そして今居る商業都市メルク、と手書きの線が順番に引いてある。
「まずは3日前に皆で共有しようと思っていた事から話そう。”神を打破する方法”についてだ」
あの日、ラクーン・スライムのメッカが教会を襲う数刻前、アルドとサリーはメルクの大図書館で”神を打破する方法”について調べていた。
◇
「全然見つからないわね……」
山のように積み上がった本の中で、サリーは静かに呟いた。
ここはメルク中央街にある大図書館。
木造のかなり古い建物だが、所蔵量はメルク一である。
窓から見える市場の盛況ぶりとは反比例して閑静な屋内は、光があまり入らず、西陽が照らしているというのに薄暗い。
アルドは探し始めてからもう随分と経った気がしていた。
そろそろ腹の虫を抑えるのも限界だった。
「……参ったね。ここまで困難だとは思わなかったよ」
アルドもまた、何十もの本に目を通していた。
しかし、どの本も神の成した偉業や伝説、神話を称えるばかり。
とても、彼の求めている”神殺し”に関する情報が載っているとは思えなかった。
二人は頭を抱えながらも、懸命に文字を追ったがハッキリ言って釣果はゼロだった。
「はあ。もう日が暮れるわ……帰りましょう」
「ああ。片付けようか……」
アルドはすっかり意気消沈だった。
そんな彼に、司書の一人が声をかける。
「お疲れ様です。随分と熱心ですね! お目当ての本はありましたか?」
テーブルに積み上がった本の山を見て、司書は嬉しそうにしている。
「ああ、申し訳ない。こんなに本を独占してしまって。すぐに片付けますので」
「いえいえ! いつも利用者が少ないので、気になさらないで下さい。私自身、こんなに熱心な方が来てくれて嬉しいのですよ!」
司書はそのまま「片付け、手伝いますよ」と言って本の一部を手に取った。
「おや、神話を調べていたのですか?」
「ええ。ただ、どれも同じような内容ばかりで……正直、思うような情報が得られていないのですよ」
アルドはそれとなく、調べている内容は誤魔化した。
サリーはというと、腹を鳴らしながらいそいそと本を元の位置に運んでいく。
「そうでしたか……! ここの蔵書は多いとは言え、やや偏りがありますからねぇ。特に宗教関係の書物は、教会の検閲が厳しいので選りすぐった物しか置いてないのですよ……」
「……なるほど、そうでしたか。では、検閲で弾かれた書物はどこへ?」
「もう処分されてますねぇ。メルクには無いかと思います」
ガックリと肩を落とし、アルドは本の束を抱えた。
「あっ、そうだ。もしかしたらですが……」
「?」
司書は本を棚に戻しながら、言う。
「魔法都市ザグラムの学院図書館なら、あるかも知れませんね。あそこは研究資料だらけですから、教会の検閲も甘いはずですし」
「……そうですか! それは良いことを聞きました!」
◇
アルドは地図を指差し、商業都市メルクから東へ走らせ、カブレス山脈沿にある都市で止めた。
そこには魔法都市ザグラムと表記されている。
「という訳で、次の目的地、ここなんてどうだろう?」
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