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第15話 素質査定

レン達3人はエミーに対面するソファに座っている。


この建物、エミーのグランドパブ(冒険者ギルド)は1階は酒場、2階がクエスト受付という構造になっている。

そして今レン達が居る部屋は、2階のクエスト受付の奥まった所にある、ギルドマスターの執務室だ。


部屋に入って真っ先に見えるのは、2メートルを超える巨大な銅像で、それはエミーを型どったものらしい。


『この銅像の素晴らしい所は、その美しさだけではなくてよ! 

アタシと全く同じサイズになるように、金型にアタシの体をそのまま型取らせたんだから!』と、エミーは部屋にある銅像を指して言っていた。


以降に語られた詳細は省くが、金型を作る際に全裸のエミーが突然職人の前に現れたという事だけは伝えておく。


そんな不気味な銅像が見守る中、ノエルは”冒険者になる”という自身の夢をエミーに語った。


エミーはただ黙ってそれを聞いていた。

彼女(もしくは彼)は実に不思議な人物だが、ノエルの話を聞くその瞳の奥には紛れもなく冒険者の長としての炎が灯っていた。


「なるほどね、よ〜〜く分かったわ♡」

「で、では……!」


ノエルはテーブルに乗る勢いで両手を置いてエミーに詰める。


「い〜〜え、だめよ♡ 私のパーティは人が足りてるわ」

「そう……ケチね」


サリーは落胆しながらも文句を言うが、エミーは気にしていない。


「またぁ、そんなこと言っていいのかしら?? 代わりに他のパーティを紹介してあげようと思ったのにぃ♡」

「なんですって!?」

「ほ、本当ですか!?」


サリー以上に食い付いたのはノエルだった。


「ええ。大志を抱く若者にチャンスを与えることも、ギルドマスターの仕事のうちよ♡ 

ただし、素質査定を受けること♡ 貴方のところの神父様が仰る、2等級以上のパーティは総合評価A以上でないと紹介できないからね〜〜」

「はい、わ、分かりました……」


ノエルがそう応えると、エミーは「ちょっと待ってて」と言って部屋を出ていった。

しばらくすると、木箱に入った水晶を持って戻ってきた。


「これは??」


レンは疑問に思い、サリーに聞いてみた。


「素質査定用に開発された魔道具よ。その人間の魔力素養を属性や数値に変換して見せてくれるの。アンタには永遠に無縁のもんよ」

「ひどい」


たまに出るサリーの暴言には慣れたもんで、レンはただ一言だけ返す。


「気になるなら、試しに触ってご覧なさい。それだけでステータスが出てくるわ」

「いいの? よーーし!」


レンは袖をまくり上げて、その水晶に手を置いた。

だが、何も起こらない。

ひんやりと気持ちいい感覚が手に伝わるだけである。


「なんだ、ただの水晶じゃん……」


文句を言いながらレンは手を離した。

レンとしては、少しでも魔力がないものかと期待していたのだが、見事に裏切られ、落胆していた。


「本当に何も出てこないとはね……! 珍しいものを見せてもらったわ♡」


エミーは不貞腐れるレンに笑顔を向けた。


「はあ……。ちょっとショックだよ……サリー、触ってみてよ。普通はどんな風になるのか見てみたい」

「いいわよ」


今度はサリーが水晶に手を置いた。

レンの時とは違い、水晶が様々な色に輝き始める。


「おお! キレイ!」

「ええ! 本当に!」


ノエルも初めて見たようで、サリーの隣で目を見開いて水晶を凝視する。


そして、水晶から光の文字が空中に映し出された。

レンにはその文字が読めないので、ノエルに読んでもらう。




魔力評価 S +


白(治癒) A

黒(呪い) S

赤(炎)  S +

青(水)  S

緑(風)  S +

黄(土)  S



「と、書いてあります! サリー様、すごいです! 魔力評価がこんなに!」


ノエルは驚きを交えてサリーに顔を向ける。

サリーは例の如く、ドヤ顔。


「ま、こんなもんね」

「待ちなさい♡ これはまだ一部よ。この下にあるでしょう?」

「本当だ」

「あ、まだ続きがあるみたいですね」


そう言って、ノエルは更に下項目へとスライドし、読み上げた。


職能評価 C -


性格 E

自分の得意分野、好きな事には無類の集中力を発揮できるが、それ以外の物事に対しては気が短い


思考 E

他者に対してはとても面倒見が良いが、時には自分勝手な一面がある。自身のためなら、他者が被る多少の被害は敢えて見過ごすことも。


行動 B

あらゆる状況において、分析を最優先する。突発的な出来事には対処が遅れることもある。



総合評価 C



「すごい……当たってる……!」

「あ、当たってないわよ!」


サリーはそう言ったが、レンはメルクまでの旅路を振り返って、非常に納得した。


確かに能力は優秀。

通常の魔法使いには出来ないことをいとも簡単にやってのけるのがサリーだ。

だが、普段の言動はとても魔法学士という肩書の人物とは思えないほどに粗暴である。


(なるほど……スライムに襲われてても助けない訳だ)


「これで分かったでしょ? 如何に魔力評価が高かろうと、個人の性格や行動パターンも含めて評価が下されるの♡

ちなみに、職能評価は冒険者で設定してるから、サリーはあくまでも”冒険者には向いてないって”事よ♡」

「え、魔法学士には向いてると……?」

「喧嘩売ってんの??」


ノエル越しにレンへ睨みを効かせるサリー。

後が怖いので、「そういうトコだぞ」という言葉は飲み込むことにする。


だが、レンの隣ではゴクリ、と生唾を飲む音がする。

ノエルは緊張しきった表情で、水晶に向かい合う。


「ノエル、大丈夫だよ」

「力入れたって結果は変わんないわよ」


レンとサリーはノエルの肩に触れ、震える彼女を励ました。

ノエルも呼吸を整え、覚悟を決める。


「フーー、よし……。ありがとうございます……では……行きます!」


ノエルの片手が水晶に置かれる。

そして色とりどりに輝きを放ち、やがて文字が浮かび上がった。




魔力評価 B+


白(治癒) A

黒(呪い) E

赤(炎)  E

青(水)  E

緑(風)  A

黄(土)  S


「ま、魔力評価……B+かぁ……」

「は、はひぃ……」


思っていたより低い評価に、ノエルは落ち込むように俯く。

そこへサリーが肩を支えてノエルを鼓舞した。


「待ちなさい、パーティを組む以上は職能評価も重要よ。下へ行って」

「わ、わかりました……」


職能評価 A -


性格 A -

他者への思いやりは強く、共感しやすい。一方で冷酷にはなれないため、いざという時のの判断力は低い。


思考 A

一度決めたら必ず実行する。しかし、実行のためのプロセスには疎いため、周囲のサポートが必要。


行動 A -

仲間の危機には的確に判断が下せるが、自身に危機が迫るとパニックになりやすい。



職能評価で示された値はA-。

レン達は、固唾を飲んで更に下へ、総合評価へ目を写す。





総合評価 A





「やったああああーー!!!!」


先にそう喜んだのはレンであった。

それに続いて、サリーはノエルの肩を抱く。


「やったわね!! ノエル!!」


ノエルはと言うと、何が起こったのかまだ分からず、ポカンとしていた。


「おめでとう。よかったわね、ノエルちゃん♡」


エミーはそう言って、部屋の奥にある自分の机の引き出しを探り始めた。

ノエルは不安そうな表情になりながら、エミーを見つめた。


そして、エミーは引き出しから何枚かの紙を取り出すと、一枚を選んでノエルに渡した。

レンとサリーはその紙を隣から覗き込む。


”メンバー募集 ヒーラー求む!!”


「あの、これって……」

「あなたの条件に合った2等級のパーティよ」


ノエルは実感と共にやって来た今までの苦労を思い出し、再びその場でへたり込んだ。

もはやそこにあった感情は安堵感であった。


「ハァ〜〜……本当によかったです……これで、神父様にご報告できます……」

「フフ♡ これから始まるって所なんだから、座ってる暇はもうないわよ!」

「は、はい……!!」


窓は空いていなが、部屋中に爽やかな風が吹き渡っているようだ。

エミーに支えられながら、立ち上がったノエルの表情は実に晴々としていた。


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