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第14話 エミー・リンクス

ここはギルドマスターの執務室。

来客用の3人がけソファに座り、レン達はエミーに向かい合っていた。


紅茶の香りが漂う中、サリーはどっしり座りエミーと話す。


「で? 聞きたいことがあるんでしょ? 」

「まーねぇ。一応これでも、街の警備を取り仕切ってる立場としては、色々と聞いておかなきゃいけないんだけど……♡」


そう言って、ソファに腰を埋めるレンに視線を移す。


「こっちの勇者様の方が断然興味深いのだけれど♡」


背中に寒気が走り、レンは思わず背筋が伸びた。

得体の知れない恐怖に身を硬らせながらも、一応聞く。


「そ、それは、どういう……」

「や〜〜ね! 別に取って食ったりはしないわよぉ!」


エミーは大袈裟に笑いながら、紅茶を一口啜る。

そんな反応にレンは安堵のため息を出した。


(冗談か……本当に良かった……)


レンの隣では、ノエルが小動物のようにプルプルと震えている。


口元からカップを置くと、エミーは話を続けた。


「あの死刑囚で、逃亡犯で、手配犯の元勇者様が目の前に居るんだから、誰だって気になるでしょ!」

(我ながら犯が多いな……)


そこへサリーが口を挟んだ。


「だからこそ警戒してるのよ。また捕まったら何のためにレンを助けたのか分からないじゃない……」

「ふーん……。何のために助けたのよ? また魔王討伐でもやって、名声を取り戻そうってワケ?」

「……」


エミーにそう言われ、サリーは口籠る。

”記憶の鍵”のことを簡単に話していいものか思案しているのだろうと、レンは察した。

サリーが口を開く前に、レンから話し始めた。


「エミーさん、実は……」


それから、王都サンドレアの闘技場から始まるこれまでの出来事を話していった。


レンの記憶が封じられた鍵、エルフの隠れ里を襲ったキャリバン一家、ドラゴンの侵攻……。


サリーは説明には口を出さず、エミーの顔を睨むように見ていた。

そのエミーはというと、記憶の鍵については興味深そうに聞いていたが、話がエルフの隠れ里の襲撃に行くと、表情が険しくなっていった。


「……という訳で、僕らはメルクに来たんだ。魔人の襲撃を知らせる事と”記憶の鍵”の情報を得る事、そしてスミスの家族を探すために」


先ほどまで明るく振る舞っていたエミーは、すっかり深刻な表情になっている。

ため息をつくと、エミーは腕を組んで俯いていた顔を上げる。


「……アンタ達の目的はよく分かったわ。それが本当ならとんでもない事よ……恐らくそのドラゴンは、王都を襲撃したのと同じ奴ね」


レンとサリーに緊張が走る。

エルフの里で捕虜にした野盗から聞いた通りだった。

やはり、エルフの里から飛び立ったドラゴンは王都を襲撃したのだ。


ここまでの道中で立ち寄った街では、そんな情報は流れてこなかった。

なのでレン達は、王都の襲撃は行われなかったものと信じたかった。


だが、そんなハズはない。

道中立ち寄った街でアルドは言った。


『もしドラゴンの襲撃が国中に広まればパニックになるだろう。だから、襲撃があったとしても情報規制がかかるはずだ』と。


「その顔を見るに、初めて知ったみたいね……。ええ、既にアタシの所までは襲撃の知らせが届いているわ。

街の防衛を預かるものは警戒するようにってね……。一般市民は知らない事だけどね」

「そう……それならエミー、今の話も信じてくれるわね?」

「ええ、事実として王都の襲撃があったんだもの……信じない訳にはいかないわよ」

「それならお願い。”記憶の鍵”を探すのを手伝ってくれないかしら? 

アレが魔界に繋がる転移魔法の起点になる以上、メルクにとっても重要なものだと思うけど」


サリーの打診にエミーは少し迷ったようだ。

手を青い顎に当てて思案する。


「……頼まれなくても探すわよ、そんな厄介な代物! 

ただでさえ、前線からも魔人が入って来たっていうのに、そのドラゴンみたく街中に突然召喚されたらたまったもんじゃないわ!」


レンは思わず「いいの?」と聞き直す。

だが、エミーはハッキリと答えた。


「オカマに二言は無いわよ! 早速冒険者を使って情報を集めるわ。2〜3日は待ってて頂戴! ただし、期待しないで頂戴ね!」

「ありがとうございます!」

「ああ、それとスミスっていう人の家族だけど、知ってそうな奴には心当たりがあるの。奴隷商のトッドを探しなさい。

西側の市場に行けばわかるはずよ!」

「スミスのことまで……何から何までありがとう!」


レンは再びお礼を言うと、立ち上がり、エミーと握手を交わした。

まさかスミスの事まで考えてくれていたとは思ってもみなかったため、感謝しても仕切れない。


そこへ、サリーが口を開く。


「お願いついでにもう一ついいかしら?」


レンは座り直し、エミーは嬉しそうな顔をサリーに向ける。


「なあに? アンタから頼み事なんて珍しいし、何でも聞いてあげるわよぉ♡」

「あんた、まだ冒険者やってるんでしょ?」

「ええ、もちろん。現役バリバリよ♡」


サリーはソファ立ち上がり、紅茶を啜るノエルの後ろに来た。


「この子をあんたのパーティに入れてあげて!!」


ドン、とノエルの両肩を叩くとサリー。

そして紅茶を吹き出すノエル。


「さ、サリー様……!」

「いいでしょ? アンタの夢にはこれが一番の近道よ」


サリーの言葉に俯きつつも、ノエルは覚悟を決める。

そしてエミーの顔を真っ直ぐ見上げ、立ち上がって頭を下げた。


「お願いします! 私、冒険者になりたいんです!!」


エミーは少し驚いたような顔をする。


「待って頂戴……。何でシスターちゃんが冒険者に??」


さて、ここから先はノエルの戦いだ。

レンははすっかりぬるくなった紅茶をグビっと飲み込んだ。


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