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第30話 第二王子ウルド①



 第二王子ウルド。


 彼は魔法都市ザグラムを統治する城主であり、著名な魔法研究者でもある。


 ウルドが作り出した術式や、新たな魔法原理を応用した発明品は数知れず。

 人類最高の天才として国内に知れ渡っている。


 そして、王族であったアルドの腹違いの兄でもある。


 二人は王位を争う立場でありながらも、仲が悪いと言う訳でもない。

 むしろ、普通の兄弟以上に仲が良い。

 

 王都で顔を合わせる時は、決まって夜まで語り合った。


 アルドは商売、ウルドは技術について。

 お互いに知らない専門分野の話だが、むしろそれで良かった。

 

 知見を深め合い、共に成長しているような、そんな時間がアルドは大好きだった。


 「着いたぞ……」


 緊張感を滲ませながら、アルドはひっそりと呟いた。


 その後に付いていたレン達は、目の前の扉に掲げられた文字を目にしていた。

 そこにはこう書いてある。


 ”魔法技術研究所 研究棟”


 一行は、魔法学園と研究棟を繋ぐ空中回廊を通り、その場所に到着した。

 煉瓦と白磁色の石作りの風情ある学園棟から研究棟に入ると、視界は一気に変化した。

 

 より光沢のある大理石の床と無感情ながら清潔な白壁。

 まさに研究棟といった趣である。

 

 学園とは違い、行き交う人は少なかった。

 道中も、数名の生徒くらいしか通り過ぎず、とても閑散とした印象を受ける。


 「あ〜〜一応懐かしいわね」


 サリーも勇者のパーティに入る前はこの場所で研究していたのだが、あまり思い入れはないらしい。

 薄ーーく、そんな感想を口にした。


 「サリー、確か兄上は……」

 「そっか、アンタはここまで入った事無いんだもんね」


 そう言うと、アルドから案内を交代し、サリーが先を歩き始めた。皆もそれに付いていく。


 「アルド、もう一度聞いておくけど、認識阻害をしたままでイイのよね??」


 振り返りつつ、サリーが不安そうな表情を見せる。

 

 「ああ、約束したろ? 君は他人のまま。それでいいさ」

 「よかった!」


 あのサリーがそこまで警戒する相手。

 

 レンの頭にパッと浮かんだのは商業都市メルクのギルドマスター、エミーだった。

 彼も大変な変わり者で、顔馴染みであるはずのサリーは会っても警戒を緩めていなかった。


 だが今回は、エミーの時以上の警戒ぶりである。

 第二王子がどんな人物なのか、レンには想像もつかなかない。


 「先に行っておくが、君たちは喋らないでいい。兄上とは私が話そう」

 「そりゃ、任せるけどよ……大丈夫だよな?」

 

 スミスが不安げな表情を浮かべる。


 「ああ、兄上は気難しくてな。少しでも感に触ると大変だ。だからサリーと私で協力を仰ごうと思ったのだが」

 「私は断固として拒否したわけよ!」

 「それはよく知ってる」


 一切悪びれる様子のないサリーに、レンは冷たい視線を飛ばした。


 「さて、そうこうしている間に着いたわよ。この階を登れば、ウルド専用の研究フロア」

 「専用フロア!? 研究室じゃなくって!?」

 「それほど兄上は成果を上げている。優秀なのさ。そして彼はこのフロアでたった一人、今も昼夜を問わず研究を続けている」


 少々自慢げにアルドは上を見上げた。

 煌々とした灯が白壁を照らしている。


 「ではサリー、認識阻害を私だけ解いてくれ」

 「ええ」


 アルドが纏っていた魔力が消え、普段アルドに戻る。

 そして彼は、研究フロアへ足を踏み出した。


読んでいただきありがとうございます。

面白いと思って下されば

ブクマ、ご評価、ご感想いただければ嬉しいです。


創作の活力になりますので

どうか、よろしくお願い致します!!

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