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第31話 第二王子ウルド②

 目の前の壁に魔法陣が煌めいた。

 アルドがウルド王子の研究フロアに足を踏み入れた瞬間である。

 

 「あ」

 

 既に人間の頭ほどの火球が発射された後だ。

 瞬きをする暇もなく、彼の頭髪を焼こうとしている。


 「ほっ」


 サリーの杖が火球を軽く弾いた。

 彼女の身長程に長い杖を巧みに操り、サリーは火球を放った魔法陣へ雷撃を見舞わせる。


 ーーバリバリバリ!!!


 壁に描かれた魔法陣は力を失い、紋様がうっすらと消えていった。

 この間、わずか2秒程。

 

 「ふん。危ないわね!」


 呆気にとられる一同をよそに、彼女は不機嫌そうに杖の先で床を叩いた。


 「こんなトラップがこの先もあるのでしょうか……?」

 「ええ、恐らくね。これじゃあ、まるでダンジョンだわ」


 背後から顔を出したノエルに、サリーはため息をつくように言った。

 

 フロアに入った瞬間の奇襲攻撃。

 一同はそれだけで、ウルド王子のややこしさを実感した。


 「……参ったな、まさかここまでしているとは……」

 「本当に人間嫌いなんだな……お前の兄貴」


 スミスがそう言った瞬間、フロア全体が輝き始めた。

 目に見える範囲の壁から幾重にも重ねられた魔法陣が光を放っている。


 「おおおおお!! や、やばくない!?」

 「皆、しっかり固まって防御魔法を! レンを中心に!」


 アルドの号令と共に陣形を組む。


 強弱はあれ、防御魔法は誰でも使える一般的な魔法だ。

 なので、唯一それを使えないレンを守るように囲んだのだ。


 「……いえ、大丈夫よ。そんなに警戒しなくても」

 「……え?」


 サリーがそう言うと、輝きを放っていた魔法陣がその光を弱めていき、壁に溶け込むように消えていく。

 それを彼女以外は困惑しながら見つめていた。


 「どうやらアルドの存在に気が付いたみたいね。起動途中で停止させたみたい」

 「そっか……よかったぁ〜〜」


 レンが安堵の息を吐くと、皆にもそれが伝播した。


 「……!」


 突然アルドが頭を抑えた。

 それを見て、ノエルが声をかける。

 

 「どうしました? 大丈夫ですか、アルド様」

 「いや、今頭の中で声が……」

 『ア……a……あ……る……ド……あ、あ、a、ア』


 不規則な信号のように、アルドの頭に声が響く。

 どうやら彼以外には聞こえてないらしい。


 「もしかしてアルドだけに思念を飛ばしてきてるの……? だとしたら、凄いわね……普通なら範囲内の人間全てに伝わるはずなのに……」

 

 サリーが少し険しい表情になる。

 レンには全く分からないが、サリーの認識阻害と同等に難しい技術なのだろう。


 彼女の表情は明らかに研究者としての嫉妬だった。


 「みんな、ちょっと静かにしてくれ。段々聞こえてきた」

 『アルド、アルド、アルド……』


 その声は少しずつ明瞭になっていた。

 アルドの名を連呼しつつ、チューニングしていたが、やがてピタリと何かが噛み合ったように、声が響いた。


 『……アルド! 聞こえてるよね? 久しぶりだなぁ〜〜』

 「ああ、兄さん。聞こえてるよ。本当に久しぶり」


 変わらない兄の声に、アルドの心に懐かしい情景が浮かぶ。

 共に語り合った日々を思い出し、意図せず涙が浮かびそうになる。

 

 『よく無事で……大変だったろう』

 「兄さん……」


 アルドの背がわずかに震えた。


読んでいただきありがとうございます。

面白いと思って下されば

ブクマ、ご評価、ご感想いただければ嬉しいです。


創作の活力になりますので

どうか、よろしくお願い致します!!

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