848.村人の一日③
箱のサイズは鍋程度、鉄製でぴかぴかに光っている。
ナールとアナリアは二人の元へと歩いていった。
「こんにちは、どうかしましたか?」
「ご機嫌うるわしゅー。ちょっとですねー」
「うん、気になることがあってね。『さぐーる君』で調べていたんだ」
「どういう魔法具にゃ……?」
相変わらず、わかるようで謎のネーミングだった。
ナナのセンスは少し変わっている。
「簡単に言うと、魔物の痕跡を調べる道具さ」
「まさか、何かあったんですか?」
身を乗り出すアナリアにテテトカが答える。
「んー……かもですねー」
「ここ最近、色々とあったでしょ? それで魔力の流れがわかりやすくなったんだ」
「にゃー、ブルーヒドラとかありましたにゃ」
「地下空間にはまだ先がある、はずだからね。ふむふむ……」
ナナは一通り装置を操作すると、羽の動きを止めた。
「ありがとう、データは取れたよ」
「いえいえー」
「じゃあ、僕はこれで。失礼するよ」
そう言うと、ナナはぽよぽよと立ち去っていった。
あっという間の出来事だ。
「にゃ。特に問題はなかったにゃ?」
「多分、そうでしょうね……」
「それで、おふたりはどうしたのですー?」
何事もなかったかのように、テテトカがアナリアに尋ねる。
「あっ、ええ……山車のアイデアを探していまして」
「色々と見て回ってるにゃ」
「ははぁ……面白そうですねー」
テテトカがごそごそと動き、土の中から這い出てきた。
「ぼくもご一緒していいですー?」
「もちろんにゃ!」
「心強いです!」
テテトカが自分の住処の大樹の塔を見上げる。
「塔の上からなら、村全体がよく見えますよー」
「ほうほう、村を上から眺めたことはあまりないですね……」
「にゃ。見方を変えると、何か掴めるかもにゃ」
三人は大樹の塔へと移動した。
大樹の塔にはたくさんのドリアードが住んでいる。
草だんごをこねたり、寝ていたり、寝ていたり……。
マイペースに暮らしているのだ。
三人はそのまま塔を登り、六階から村を眺める。
「冒険者ギルドが家の隙間から見えるにゃ」
「ええ、村を象徴する建物になりましたね……」
大樹の家の間から、こんもりとした冒険者ギルドの建物が見えた。
通りがかった商隊がきらびやかな噴水の前に並んでいる。
どうやら噴水が珍しく、楽しそうに眺めているようだ。
「ねーねー、テテトカちゃんー」
「ほーい、どしたー?」
片目が隠れているドリアードがテテトカを呼ぶ。
「花飾りで白百合がもっと必要かもー」
「あいあい、用意するねー」
「んにゃ? 花飾りにゃ?」
「何かを作っているんですか?」
ナールとアナリアは同時に驚きの声を上げた。
ドリアードが何か、農作物や食べ物以外を作ることは珍しい。
仕方ないことではあるが、それが二人の認識だった。
「ぼくたちの風習でー、花を集めて飾るんですよー」
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