信頼と困惑
「あの店主⋯誰にやられたと思う?」
腹の底とはこの事か、ただでさえ威圧感のある大男が
低く、そして鋭く放った一言。
それは得体の知れない恐怖が迫り来る感覚だった。
「だから!それは$¥&#?!」
リムバラさんが話すが途中から聞き取れなかった、
恐らくは知らない単語か⋯異世界でと考えるとモンスターとかなのかもしれない、
あの森は危ないと宿屋の主人もそしてシャルさんも言っていた⋯
ココからそう遠くは無く近い訳でもない
迷子と間違われた異世界で初めて目にした場所であり⋯
私の大好きなあの場所に似ている場所⋯
みんなは私をその「何者」では無いと思ってくれている様で、
シャルさんは先程と同じ場所
入口付近で壁を背にしながら私達を見渡せる場所から
フードを深く被り周囲への警戒をしていたが、
ジャマルさんとリムバラさんの会話で私に対して心配をしている様な気配を感じさせる。
ドマリさんも私を不安にさせまいと肩に手を置きながら心配そうな眼差しを向けてくれる。
もちろんジャマルさんやリムバラさんがコチラに警戒を寄せている訳では無く心配はしているが、私が1番近くで見ていたからと言う理由だろうか?
それでいて、不安にさせまいと皆が居るこの場で話をしてくれているのだろう。
(皆暖かい人達だな⋯心配かけちゃった⋯でもジャマルさんのドスの効いた声は怖かったです!泣くかと思った!!)
確かに何者なのだろうか⋯
怖くて思い出したくもない光景だが…ここはしっかりするべきだろう。
あの時私は何度か声なのか悲鳴なのか分からない音を聞いていて⋯
そのうちの1つが店主がコチラに気付いた声だと思う⋯
そして、その後あの茂みから飛んで来たと思われる矢があの惨劇を起こし⋯不気味な影が揺れて消えた⋯
その後駆け足の音がした後ジャマルさん達に出会った⋯
(あれ?⋯矢が飛んできた方からジャマルさん達が⋯?)
なにか違和感があった⋯
疑いたい訳ではない⋯あの人はそんな事しない筈だし⋯
店主さんだって知り合いのハズ⋯じゃあ何が?
あの悲劇からのジャマルさん達とのタイミング?
でも殺害してからにしては遅いタイミングで茂みから出てきた様に思う⋯
ダメだ⋯私だけでは「何か」すら分からない⋯
人を殺めたことも無ければ害を犯したことも無い
日和見主義と言われて可笑しくないぐらいのビビりだ⋯
そう思い悩んでいるその時、ふと思い出した⋯
聞いた事の無い声のと雰囲気の存在を⋯
(これは⋯伝えて大丈夫な事?でも⋯疑いたくはない⋯皆に暖かく迎えて貰えたのに⋯また1人になるの?⋯怖いよ⋯)
ジャマルさんとリムバラさんが白熱している様な話し合いをしている⋯
私には分からない言葉が多い為か所々聞き取れない言葉がある。
それ故ちゃんと伝わるか分からない今それを伝える事による不安がそこにはあった⋯
そんな時私の不安を察したのかドマリさんが顔を覗かせて
「大丈夫」と言っている様に見えた。
勇気をくれる眼差し⋯あぁ、あの子を思い出す⋯
まだ迷いや不安はあるがあの子がくれた勇気を振り絞り、
震える手で肩にあるドマリさんの手を掴み屈んで貰うようジェスチャーをした、
するとドマリさんは手を握りながら屈んでくれた。
「ドマリさん⋯あの⋯森⋯声⋯知らない⋯矢⋯皆が⋯」
そこまで言って涙が出た、怖いと自覚したのだろう。
そしてドマリさんは驚いた顔をした後、頷きそして拙い私の言葉とこの涙で全て察し優しく包み込む様に抱きしめてくれた。
その時私の声が聞こえたかの様にシャルさんも傍に来てくれていた。
相当耳がいいんだな⋯と気を紛らわす様な事を考えながら涙を拭いていると、シャルさんはコチラに向かって自身の矢を見せてくれた。
(あの時の矢はこんなに綺麗じゃない!!もっと枝を荒削りしたような不細工な矢だった⋯やっぱり違ったんだ!!)
溢れる涙を頑張って抑えながら勢いよくシャルさんの方を向き首を振る
ドマリさんの手を強く握りながら、
「矢!!⋯木の枝!!、声⋯不気味⋯聞こえた!!」
そう力強く2人に伝えた、
私の必死な問いかけに2人は抱きしめたり頭を撫でたりと
私を安心させようとしてくれるかの様に、
そして「伝わった」「頑張ったな」と応えてくれるかの様に⋯
(この2人がこうやってくれると懐かしく感じて凄く安心しちゃうな)
そんな事を考えてるとさっき必死に伝えた時、声が大きくなったのか
ジャマルさんがリムバラさんとの話を止めて、私たちに向かって話しかけてくれた、それは少し不器用ながら、それでも怖がらせたくないと言っている様な声で
「何かわかったのか?」
その声に私は驚き顔を向け、ドマリさんは安らかな顔で背中を押す、私が話すべきだと言わんとしている様に、
「飛んだ⋯矢⋯枝だた⋯声⋯聞こえた!」
ジャマルさんは少し驚いた顔をしたが、すぐ元の仏頂面に戻り、
犯人がわかったのか、またリムバラさんと話し始めてしまった⋯
失敗したのか⋯と少し落ち込む私を案じて2人は頭を撫でてくれた。
「お主、これを読んでおきなさい。
それは魔物等が載っている本だ絵が多く字も少ないからお主でもわかり易いじゃろう」
不意にゴードンさんに話しかけられ驚いて肩が跳ねた。
そして差し出された本を少し見て私は改めて痛感した、
これは現実であり私の知る世界では無い。
その本には、
草木に同化している物、動物の様な物、異形の様な形の物、
そして人間の様な姿をしている物が居た。
パラパラ見ただけでそれだけ確認出来たが、
その中でも人型の魔物がまるで人間の様な見た目になる所を見てしまい、驚いた⋯いや、困惑した。
何故それを知っていてこの人達は私を信じてくれたんだろう⋯
怖く無かったのだろうか⋯
(それが冒険者と言うものなのだろうか?
でも⋯良いなぁ⋯皆信頼し合ってて、見てて羨ましいや)
私はこの世界を何も知らないし、出来る事も分からない。
それでも、この人達がくれたぬくもりを返したい。
そしてこの世界でもしっかり生きてみたい。
瑠璃やあの子に怒られない様にしっかりと自分の意思で⋯




