問題点
この異世界に転生してまだ一年。
知識がないまま何かを決めつけるのはよくないと思う。それでも、『私』としては、《まざりもの》と言った彼女の気持ちがわからくもなかったりする。
◇
「ティティ、これも可愛いわ」
現在、大きな姿見の前で母の着せ替え人形になっている。先日の誕生日にいっぱい貰ったアレだ。
お姫様みたいな豪奢なドレスも数着頂いた。出かける場所なんてないのにどこに着てく服なの?
普段着は充分にあるし、幼児期なんてすぐに服が着れなくなるのにもったいない。
姿見の中の自分を確認する。
うん、人外。別にはじめて鏡を見る訳じゃないけど、何度見たって人外。
そう、わたしは父成分(精霊)が強いのである。美幼児。カワイイんじゃなくて美しい。母の面影はあるし目は同じ翠玉だよ。
顔だけならまだなんとでも誤魔化すけど、髪が虹色に光っててアウト。ベースが白か銀っぽいんだけどね、父と同じく色が波打ってる。
これ初対面の人からしたら精霊に見えるんじゃないかと思うところだけど。
耳がね、ちょっと尖ってます。
父と母はふつうの耳。使用人も人の形の精霊も尖ってる耳は見たことがない。これが《まざりもの》ってことなのかなって。
あとは精霊が使う魔法(仮)。
あれを使用人が使ってるのをみたことがない。便利なんだし使えるなら使ってるはず。
父は体があるから別として、精霊は人の目には見えていない。
人にとって世界はきらきらしていない。
たぶん存在を知っているにしても、精霊はあまり一般的ではないんだと思う。
精霊自体を恐いと感じる人だっていそうだ。
ということを踏まえてある程度は仕方がないのかな。
異質なのは事実だし、妥協点を探るのも大事だよね。
いまの狭い世界が差別的なだけって可能性があるし、まだ結論は出さないけど。
ちなみに危害を加えられたら容赦なく報復行動にでるつもりです。
精霊(父含む)に言いつける。大変なことになりそうなので最終手段にするけど、何かあったら容赦なく使う。
たぶんこういうところがダメなんだよね、きっと。
◇
耳に入る情報が増える。
一般常識が知りたいけど、この家で期待はしない。一般家庭では絶対ないから
父が母を呼ぶ時に「エメル」って呼ぶけど愛称だったらしい。母の使用人は「エメライン様」って呼んでた。
このまえ姫様って呼ばれてるの聞いたけど、一族の中の姫って意味かな。
なんか嫌な予感がするけど気のせいだと思いたい。
精霊は意思を持っている。
小さい光みたいな精霊は、漠然とした意思。うれしいとか楽しいとか、わたしは触るとなんとなくわかる。
なにかの形をしている精霊はよりはっきりとした意思を自ら伝えてくる。
音ではない、念話ってやつかな。
片言だったり幼児みたいだったり、精霊によって様々。
ある程度は形にも影響されてるみたいで、人の形をしている方がハッキリと話す。 逆かも。ハッキリとした意思を持つほど、人に近い形をとる気がする。
形を持った精霊は少なくて、魔法(仮)が使える。能力はいろいろ。
一貫して、人間にはさほど興味がない。
わたしには好意的なので頼めば知りたいことを探れそうだけど、そこまで倫理観は捨てたくないし、エゴサーチになりそうで嫌だ。
説明するのも難しいし、精霊に複雑なことを頼むのは諸刃の剣だと思ってる。
父を見てても常識が違うとよくわかる。
・・・よくわたしが生まれたな。生態的なことも含めて神秘過ぎてよくわからない。
わたしのお世話をよくしてくれるのは風の力を持つ少年の姿をした精霊だ。
「ふーちゃん」と呼んでいる。こういうのはシンプルなのがいちばん。幼児だもの。
訂正されないから父みたいな名前はない筈、うん。
そういえば大人の姿をした精霊は父以外いないな。父だけってことはなさそうなんだけど。




