コミック1巻発売記念SS『雨宮さんの怪文書』
コミカライズ単行本1巻が発売になりました!
その記念SSになります。
本編はお待たせしておりますが、すれ違う?ふたりを楽しんで頂けたら!
「ん、んん?」
その晩。
俺は風呂上がりのどら焼きアイスを片手に、部屋の床に胡座をかいてスマホを弄っていた。
雨宮さんの影響か。
すっかりどら焼きに目が行くようになり、最近のお気に入りおやつはコイツだ。
ひんやり冷たいバニラアイスが、分厚い生地にサンドされていて食べ応えがある。少し溶けかけくらいが程よい食感で最高だ。
……と、雨宮さん並みの『どら焼き食レポ』をしてしまったが、その当人の彼女からメッセージが届いていたのであった。
「これは……どう解釈すればいいんだ?」
スマホの画面に映し出されたのは、たったの二言。
【ズキズキDEATH】
【痛いです】
やたら不穏な文字が並んでいるが、意味そのままで捉えていいのか……?
雨宮さんはスマホ操作に疎く、メッセージにおいては誤字脱字のプロフェッショナルだ。以前よりマシになったとはいえ、暗号文になっている時も多々ある。
なのでまったく違う意味の可能性もあるが、本当にそのままだったとしたら……。
「……え、大丈夫なのかっ!?」
俺は呑気にどら焼きを齧っていた手を止め、ガバっと立ち上がった。
勉強机に置かれたhikariのアクリルスタンドが、衝撃でパタッと倒れる。
チアガール姿の激カワなそれは、美空姉さんが本日郵送で送ってきたもの。次のアメアメの雑誌の特典らしいが、今はそんなことはどうでもいい。
素直に読み解くなら、雨宮さんは『何処かしらか怪我などをしていて、ズキズキ死にそうなほど痛い』ことになる。
ちょっとドジっ子な気もある彼女のことだ、不慮の事故か病気などの恐れも……?
そんな状況で、俺に助けを……ヘルプを求めてきたとしたら一大事だ。
「あ、雨宮さん……!」
顔面蒼白になり、慌ててメッセージアプリについている通話ボタンを押す。
プルルルッと響く呼び出し音が、焦れてやたら長く感じてしまう。
『は、晴間くん?』
「今どうしてる!? 無事か!?」
食い付かんばかりの勢いで、真っ先に安否を尋ねた。
雨宮さんは「え、えっと、なにが……?」と困惑気味だ。
「いや、雨宮さんが心配になるメッセージを送って来たからさ……!」
『メッセージ……?』
きょとんとした反応の後、彼女は通話を繋いだまま確認したようだ。
一、二、三と三拍空けて、凄い悲鳴が機械越しに響き渡る。
『ひゃあああああ! あのあの、あの! これは違うの! 寝ぼけていて、その! スマホを持ったまま家の居間でうたた寝しちゃって、晴間くんとhikariさんの夢を見ていたら、それで……!』
俺以上の慌てっぷりで、雨宮さんは状況を説明する。心なしか涙声ですらあった。
だから、つまり……?
「雨宮さんは特に何事もない……?」
『う、うん……本当にごめんなさい!』
ようやく説明を一から十まで理解し、ホッとして再び座り込む。
どら焼きアイスは溶けかけているが、なにはともあれ怪我や病気じゃないならよかった。
謝り倒す雨宮さんに「寝ぼけていたなら仕方ないって」と笑い、明日も学校で会うことを想って、最後に「またな」と通話を切った。
暗くなった画面に、再び安堵の息を吐く。
「それにしても、俺とhikariの夢って……」
いったいどんな夢だったのか、聞き忘れたな。
怪文書も実は夢に沿う内容だったのだろうか。
それこそ明日、雨宮さんに改めて聞いてみよう。
俺はそう決めて、大きくどら焼きアイスを齧るのであった。
※※※
私……雨宮雫は、居間の食卓に突っ伏して、椅子から投げ出した足をバタバタさせていた。
顔は真っ赤で羞恥で死にそう!
さっきまで私は、晴間くんとhikariさんに挟まれて、レッドカーペットの上を歩くという頓珍漢な夢を見ていた。
hikariさんは真っ赤なドレスを着ていて、晴間くんはタキシード姿。
可愛かったし、カッコよかった……。
そもそもふたりが同時に存在することが、あり得なくて夢なんだけど……! だけどね!
私も水色のマーメイドドレスを着ていて、三人でたくさんの人たちから拍手されていたの。
不思議で、でも心弾む夢。
私を向いて微笑んでくれる、晴間くんとhikariさんにドキドキが止まらなくなっていたら……どうやら無意識に、手にしていたスマホで『私の気持ち』を文字にして打っていたみたい。
しかも、それを晴間くんに送っていたという醜態!
明日どんな顔して会えばいいか、まったくわからないよ……。
晴間くんが文章を解読しないことを、祈るばかりです。
【ズキズキDEATH】
【痛いです】
本当は……。
【好きです】
【会いたいです】
コミック情報は活動報告に記載しておりますので、良かったらご覧ください~!





