14 人気メンズモデル『hayate』
「いやぁ、『hayate』くんいいねぇ! 流し目も決まっているし、そのポーズも表情も最高だよ!」
「はあ……実物は写真で見るよりめちゃめちゃ格好いいよぉ、『hayate』……生で会えるなんてついてる!」
「さすが今季の女性人気ブッチぎりの一位だよね」
「彼氏になって欲しいし、なんなら結婚して欲しい……!」
大仰に褒めそやす男性カメラマンさんに、頬を染めてヒソヒソ話す興奮気味な女性スタッフさんたち。
グリーンバック……撮影後に背景を合成しやすくなる、緑色のスクリーンのところに立ってカメラを向けられていたのは、hikariの輝きに勝るとも劣らないとんでもない美男子だ。
彼は非常に洗練された動きで、淀みなくポージングを変え続けている。
そう、『大物モデル』とは『hayate』だったのだ。
束感セットの眩い金髪に、神秘的な碧眼というまるで王子様のような配色は、ちょっと調べたところご両親が北欧系なのだとか。
あちらから結婚後すぐに日本に移住してきたそうで、『hayate』本人は生まれも育ちもバリバリの日本。雑誌のインタビューでは寿司と和菓子が好きだとあった。
メンズモデルにしては身長はそこそこだが俺よりは高く、長い手足は羨ましいの一言である。
秋物の撮影中なのか黒のタートルネックに、細身のジーンズ、首から垂らして掛けたインディゴブルーのストールは、すべて完璧に着こなしていた。
顔立ちはタレ目に泣き黒子が色っぽく、爽やかな微笑みはこれぞ貴公子。
「こんな勝ち組キラキラ男が、俺とのコラボ撮影をオファーして来たのか……」
やっぱり断ろう。
俺のなけなしの男としての自尊心が死にそうだ。
「えっ!? hikariってhayateとコラボするの!? それって歴史が動くやつじゃん!」
「雷架、『おかし』」
「『おっけー!』『賢い雷架ちゃんは』『喋らない』!」
もはや最後しか合っていないが、もういい。
雷架はお口をチャックするジェスチャーをして、ちゃんと黙ったので。
hayateの撮影はもう終盤のため、部屋の隅っこで雷架と並んで見守ることにする。
途中で俺の存在に気付いたスタッフさんたちが「こ、この部屋、美男子と美少女が揃ってオーラがヤバい……!」と慄いていたのがおかしかった。
なんならうちの学校が誇る美少女のひとり、雷架もいるしな。雨宮さんがいればもう最強だった。
俺のカノジョは世界一!
そんなことを考えていたら、カメラマンさんが「最後に一枚!」と宣言し、hayateが片腕を後頭部に添えたポーズを取った。見る者すべてを射止められそうな、真剣な顔つきをする。
バチッと、その彼の目と俺の目が合って、俺はなんだかギクリとした。
なんだか見透かすような眼差しだったのだ。
「はい、終了! お疲れ様、hayateくん!」
カメラマンさんの一声で、場の空気が一気に緩む。次は俺の番だなと、浴衣の衿や帯を軽く整えた。
お口はチャックでも目をキラキラさせている雷架をおいて、グリーンバックの方へ足先を向ける。
その際、hayateとすれ違ったのだが……。
彼はボソッと俺に耳打ちした。





