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鋼の黙示録  作者: のんな
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鋼の黙示録

人類よ生き残れ!!


【第一章:光に包まれて】


西暦2026年。


ハルトは信州の美しい山々に囲まれた大学の農学部で、山岳地帯の農地を守るための放牧研究に明け暮れていた。


「シロ。今日はずいぶんご機嫌だな」


ハルトの呼びかけに、ヤギのシロがメェと鳴きながら雑草を食んでいる。

中山間地の耕作放棄地を解消し、環境を守るための地道な研究。大好きなヤギたちに囲まれて過ごすこの時間は、ハルトにとって何よりもかけがえのない日常だった。


だが、山の天気は変わりやすい。

さっきまで晴れていた空がにわかに掻き曇り、じっとりとした湿気と共に、不気味な黒い雲が頭上を覆い尽くした。


これはマズイ、とハルトは立ち上がる。


「みんな、中畜舎に戻るぞ!」


ヤギは極端に濡れることを嫌う。その習性を知っている学生たちの呼び声に、ヤギたちは一斉に走り出した。


ゴロゴロと、遠くで雷鳴が轟き始める。

間一髪、ヤギたちが中畜舎に避難し終えたところで、激しい豪雨が降ってきた。


「良かったなぁ、シロ」


ハルトはシロの頭を優しく撫でながら、滝のような雨と激しい稲光を眺める。

ドーン、ドーンと、派手な音を立てて雷が落ちていた。


やがて、あれほど激しかった雨もポツポツと減り始め、雲の隙間から晴れ間が覗く。


「お! 晴れてきたな」


ハルトは外に出て、ふっと空を見上げた。


――その瞬間だった。


バリバリバリッ!!!


鼓膜を完全に破壊するような轟音と、視界を真っ白に染め上げる強烈な閃光。


「ハルトー!」


誰かが遠くで、俺の名前を呼んだ気がした。

それを最後に、ハルトの意識は深い闇へと沈んでいった。



「……う、頭が……」


どれほどの時間が経ったのだろうか。

ひどい眩暈めまいに襲われながら、ハルトはゆっくりと目を覚ました。


(俺は、どうしたんだっけ? たしか雷が落ちたんだよな……? 俺、生きてるんだよな?)


確かめるように、手を開いたり閉じたりしてみる。身体は動く。


ゆっくりと起き上がり、周りを見渡した。

すでに辺りはすっかり暗くなっている。だが、そこに慣れ親しんだ信州の山々の景色はなかった。

暗くてよく分からないが、どこか懐かしい、郷愁を感じる匂いが鼻腔をくすぐる場所だった。


思い出したように、ポケットからスマホを取り出す。

液晶画面に表示された【圏外】の二文字を見て、ハルトはゴクリと息を呑んだ。


ネット小説や漫画でさんざん見たことがある、あの定番の展開が脳裏をよぎる。


「まさか俺……死んで、異世界に転生しちまったのか!?」


ハルトの脳内に、一気に「異世界ハーレム」への期待が広がる。


(異世界バンザイ!! これからエルフとか、綺麗なお姉さんが出てきたりすんのかな!?)


現金な期待に胸を膨らませていると、ふと近くから水の流れる音が聞こえた。

川を見つけたハルトは、スマホのライトで水面を照らす。そこに映った自分の姿を見て、肩を落とした。


いつもの、見慣れた冴えない自分の顔だ。


(あ、俺のままだな。じゃあ、異世界『召喚』の方か?)


「だったらさぁ、こんな不気味な場所に放置しないで、誰か迎えに来てくれてもイイじゃないか?」


愚痴をこぼしながら周囲を見渡すと、暗闇の向こう、鈍く光っている場所が数カ所あることに気づいた。

とりあえず、その中の一つを目指して、ハルトは歩き始める。


やがて目的地にたどり着き、それを見上げた瞬間――ハルトの呼吸が止まった。


「こ、これは……っ!!」


ハルトの目の前にそびえ立っていたのは、巨大な「透明なドーム」に包まれ、未来的な鈍い光でライティングされた、荘厳な【五重の塔】だった。


(こ、ここは、異世界なんかじゃない……京都だ!!)


しかし、ハルトの知る現代の京都とは明らかに違う。SF映画のようなドームに覆われた古都。


(今、西暦何年なんだ……!?)


ハルトの背中を、冷たい汗が伝い落ちる。

異世界ではなく――タイムスリップ!?


(第二章へ続く)


最後まで見て下さりありがとうございます。



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