(1)校長先生の朝
平和な日常を送る仏右乃高等学校。
そこの校長には誰にも言えない秘密が・・・。
校長室はフカフカのソファ、良い感じのコーヒーメーカー、可愛い生徒たちの写真・・・私のお気に入りのもので埋め尽くされている。朝はこの良い感じのコーヒーメーカーで入れたコーヒーを嗜みながら業務に取り掛かるのである。
私はここ仏右乃高等学校の校長。今日も元気な生徒たちと過ごすのを楽しみにしている。
そろそろ子どもたちが登校してくる時間だ。出勤している職員や、清掃のおばちゃんとのあいさつを終え校門に立つ。
生活指導の松本先生が今日は先に立っていた。松本先生とは毎日、どちらが先に校門に来られるか競争しているのである。
「今日は俺の勝ちですな」松本先生はそうニカっと笑った直後、「くらぁ!スカート折るなぁ!」と女子生徒に怒鳴る。こんなに怖そうな松本先生だが、実はメンタルが弱い。
この間も髪の毛を染めている子に対して、叱った後「俺、嫌われませんかね?なんだか子どもたちからの緊張を感じるんですよね」と相談してきたほどだ。
登校完了時間になり門を閉めると校内に戻る。職員室では職員会議を行う。基本的には教頭先生が仕切ってくれていて、私は最後に「では今日も一日頑張りましょう!」と言うだけだ。
教頭先生にはとてもお世話になっている。私は特に忙しいわけでもないのに「校長先生、お忙しいでしょう」と業務を手伝ってくれる。「お疲れ様です」と定期的にコーヒーや茶菓子を持ってきてくれるのも教頭先生だ。
最初は気が利きすぎて怖いほどであったが、話してみると面白い先生だった。
それどころか、同じアイドルを応援しているということで意気投合した。現場でもよく会う。
それから教頭先生とは一番仲が良い。
ちなみに現場では私はピーマン好き太郎、教頭は天邪鬼と呼ばれている。由来は特にない。適当に決めたのだ。
「あの、3年C組ですが・・・」
そう話し出したのは3年C組担任の川田先生だ。
川田先生は若い先生だがしっかり者で頼りにしている。少し自分を主張することが苦手な気もするが、まあ経験を積んでもらうしかないだろう。髪が長くとても可愛い。
会議では今日も特別変わったこともなく、いつもの一日が始まりそうだ。
職員会議を終え、私は一回校長室に戻る。朝の眠気は冷めているはずだが、自然とコーヒーを入れて飲んでいる。これが私の日課なのだ。
そういえば、1時間目は3年C組が校庭で体育をやっている日だったな。そう思い校長室のブラインドを上げ校庭を眺める・・・。
女子は体育館でバレーボールだからいないやないかい!いや決して女子高校生の健康な体を拝もうとしたのではく、ただ校長としてだな・・・。いかん取り乱した。
今日は外部からのアポや、関係施設への挨拶もないので比較的暇な日だ。そんな時は校内の見回りをする。これも立派な仕事だ。
勉学に励む子どもを見ているとこちらも活気が湧いてくるというもの。だからこの時間はとても好きだ。
購買の車が学校に入ってくるのが見えた。そろそろ昼が近い。
話は変わり、私には一つの大きな秘密がある。今はまだ陽が出ているから気づかないかもしれないが、夜になるとオオカミになるのである。
・・・いや普通にだぞ。比喩的な表現ではなく私はオオカミ男なのだ。なぜオオカミ男なのかはよくわからない。父も母も普通の人間だ。
おそらく遠い親戚にオオカミ男がいるのだろうな。納得はできないが。
オオカミ男で便利だったことは一つもない。満月の光を浴びると変身してしまうため、「今日って満月?いや端っこが欠けているような・・・」みたいな微妙な月の満ち欠けがわかる程度で、あとは毛むくじゃらになるし、毛もゴワゴワだから結構かゆいしで散々なのだ。
もちろん見た目も結構怖い。どれくらい怖いかというと、トイレで目覚めたときに鏡で自分を見てそのまま漏らしてしまったことがあるほどだ。
外に出たら捕まるか、とんでもないコスプレをしている名物おじさんになってしまう。そんな感じで良いことはほとんどない。
無論、生徒たちだけでなく、仲の良い教頭先生にも秘密にしている。誰にも明かしてはいけないのだ・・・。




