中学生編⑧
そしてまたまたある日。
この日は昼休みに当番があり、また俺と岡田さんのペアだった。
相も変わらず退屈な当番だったが、その頃にはだいぶ先輩方と仲良くなってた。
ので、またいつもの皆とだらだらと話してた。
すると、岡田さんが話の合間に、無言でメモを渡してきた。
俺は誰かに気付かれないように、トイレに行くと言って席を外した。
トイレの個室でドキドキしながらメモを開く。
『あとで電話番号教えて』
そう書いてあった。
女の子らしい、小さなまるっこい走り書きに、俺は胸が踊った。
当番が終わって教室に戻る前に、俺は自分の家の番号をその紙の裏に書き、他の人にバレないように無言で岡田さんに渡した。
ちなみに文面を見て、『え?家電の番号かよ』って思う方もいらっしゃるかもだが、このころはまだ今みたいに携帯電話やスマホが普及しているわけではなかった。
携帯電話を持ってる奴なんてごくごく一部だったし、俺も岡田さんも、もちろんそんなもの持ってなかった。
岡田さんにメモを渡した俺は、恥ずかしくて彼女の顔も見れず、足早に立ち去ろうとした。
そんな俺の後ろから岡田さんの声が聞こえた。
岡田「今日20時頃電話していい??」
俺は振り向いて答えた。
「……はいっっ」
教室に戻ると午後の授業が始まったが、先生の話なんざ我が耳に入ってくるはずもない。
どきどきしまくってたら、いつの間にやら終礼が終わっていた。
そのあと、いつもなら部活に行くか、図書室で皆とだらだらするかしてたんだが。
誰ともまともに話せない気がして、その日はまっすぐ家に帰った。
帰宅してから20時までが長かった。
それはもう北斗神拳の歴史的戦いに終止符が打たれるまでぐらい永かった。
宿題してみたり。ピアノの練習中にそわそわして母に訝しい表情をされたり。
電話がなるたびに飛び上がりそうになったり。
またこれがこういう日に限って電話がなんぼでも鳴るんですよね。
とにかく、20時までが長くて長くて・・・。
そして運命の20時がやってくる。
いつもは部屋にいる時間帯にリビングにある電話の前で待つのもあまりに変なので、俺は自分の部屋にいた。
母が電話に出て、引き継いでくれるだろう。
そして・・・・・・鳴った!!!!
それと同時に俺の心臓は早鐘を打つ。
しばらくして母が部屋に来て、何とも言えない顔で俺に受話器を渡した。
母「岡田さんって人。知ってる?」
俺「知ってる!ありがと」
そう言って、母が部屋から出ていくのを見計らい、俺は受話器を耳に当て、保留を解除して、上ずった声で話した。
俺「もしもし…」




