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酒好き義姉さん、未来人の仲人になる  作者: 依馬 亜連
おまけ

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22/22

おまけ5 仁義なきプディング

 拍手お礼小話の手直し&再掲載です。

 1Kの小さなアパートの、せせこましい居間にて、市夜とシン・ク・ロウはにらみ合う。

 二人の間には、白いローテーブルが鎮座している。

 そしてローテーブルのど真ん中には、皿に載せられたプリンがあった。

 これは市夜の上司からの貰い物である、お高めプリン。プッチン、と容器から飛び出すプリンとは、風味から違うのだ。卵の素朴な甘味とほろ苦いカラメルが、するりと喉を通り抜けて行く。

 だが生憎、一つ余ってしまった。

 幸か不幸か、市夜もシン・ク・ロウも、プリンが大好きである。


「さて、どうしたものでござるか」

「そうね、どうしたものかしらね」

 互いににらみ合ったまま、同じ方向に首を傾げる。

 残念ながら譲り合いの精神など、この二人の間には、ない。

 また、隣室のカズサへ譲るという案が、思い浮かぶはずもなく。

 天井からぶら下がる、お気に入りのUFO型ランプシェードを見つめ、市夜は唇を動かした。

「ジャンケンで決めてもいいけど……あなた、知らないよね?」

「拳法の一種でござるか」

「違います」

 渋顔の宇宙人は、「閃いた!」とばかりに顔を明るくしたのだが、それを即座に否定する。

 しょんぼりとうなだれた彼を横目に見て、考える。


 宇宙人でも分かりやすい、あみだくじを使うべきか。

 それとも、最近ルールを覚えさせた人生ゲームで決するべきか。

 オセロでも、いいかもしれない。

 いや、それよりも──宇宙人の特技を使わせる方が、建設的では?


 指をパチン、と鳴らして、市夜は薄ら笑う。

「そうだシンさん。このプリンを、真っ二つにして下さいよ」

「む。この、いと柔らかき甘味を、か?」

「はい。閃光器官の刃でなら、スパンと切れるでしょう?」

 市夜としては、プリンを綺麗に二分割する妙案に思えたのだが。


 シン・ク・ロウはあんぐりと口を開け、信じられない、と目で訴える。

 そしてプリンが崩れない程度の勢いで、握りこぶしをテーブルへぶつける。

「心外でござる! 拙者どもの力は、甘味を分けっこするために存在しておらぬ!」

 熱くなる彼に対し、伸びをする市夜は淡白な顔のままだ。

「でも今のご時世、斬っていいものなんて雑草とか食べ物ぐらいよ? それに使わなかったら、錆び付いちゃうんじゃなかったっけ?」

「ぐぬぬ……」

 下唇を噛んでシン・ク・ロウが唸るも、市夜はあっけらかんとしたままだ。


 激情家な彼が、生涯低気圧な彼女に、口喧嘩で勝てるわけがない。

 そしてシン・ク・ロウも日々の生活において、徐々に越えられない壁を感じつつあった。

「……かしこまった」

 ヘアゴムできつく縛った深緑色の髪を一つ振り、彼は折れる。

 続いて伸ばした右手を、軽く持ち上げる。

 その刹那、白い皿へ載っていたプリンの表面に、一閃が走る。

 見事に高級プリンは、二分割されていた。

「おお、やった。お見事」

 市夜は小さく、諸手を上げて喜んだ。

「お粗末でござった」

 シン・ク・ロウも、くすぐったそうに笑う。満更でもないらしい。

 これにて庶民と未来人と宇宙人の、小規模SFはおしまいとなります。

 最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございました!

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