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伝説の勇者様!? ……いえ、補助職の僧侶です  作者: 田山照巳
第四章 港街ブレゼス 編

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第二十話 作戦会議

──俺は巨大サメを退治する方法を説明するため、ブレゼスの主要関係者に集合してもらった。街の代表クルベット、漁師長カルマールとその三姉妹スキーユ、クロビス、ユイトル、そして主な漁船長達だ。


「皆さん、巨大サメを退治する方法を考えてみました。今から説明しますので、率直な意見をください」

「テルアキ君、あの巨大サメを退治するなんて、本当に可能なのか?」


 クルベットが半信半疑の表情で問う。他の皆も同様に不安げな表情をしている。


「はい。まずはこちらをご覧ください。ユイトル、水槽を持ってきてくれ」


 ユイトルは俺が事前に頼んだ物を用意してくれた。生きた魚が一匹入った水槽、魚をすくうタモ、焼き魚用の金串、まな板……だ。


「巨大サメ退治のステップは次の四つです。


 一、毒入りの餌で麻痺させる

 二、『ムーヴ』の魔法で空中に浮遊させる

 三、巨大サメに大きな鉄の槍を撃ち込む

 四、『サンダー』の魔法でトドメを刺す


……です。この水槽には全長四十センチメートルくらいの生きたザバが入ってます。皆さん、これを海で泳ぐ巨大サメだと思って見ていてください」


 俺はユイトルと水槽の前に立ち、説明を続ける。


「ユイトル、まず水中のザバにサンダーを弱めに撃ってくれ」

「ええ。……サンダー」


……ビビビッ!


 サンダーの電撃は、水槽の下部にいるザバに届く前に水中で拡散してしまった。水槽全体に電撃が走ったため、ザバは少し痙攣したが、すぐに元気に泳ぎ始めた。


「このように、海中の巨大サメにサンダーを撃っても、大きなダメージは与えられません。でも、今からやるように巨大サメに電撃をよく通す金属の槍を刺して、空中に浮かせた状態でサンダーを撃ったらどうなるか……? 見ていてください。」


 次に俺はタモでザバをすくい、まな板の上で金串を刺してから、ムーヴを使って空中に浮かせた。


「ユイトル、先と同じ強さでサンダーを撃ってくれ」

「ええ。……サンダー」


……ビビビッ!!


 宙に浮いたザバを電撃が包む。金串を通して体内にも電撃が走り、身体の内側からダメージを受けたザバは一瞬で死んで動かなくなった。


「このように、金属の槍を通して電撃を巨大サメの体内に直接送り込むんです。水中に拡散せずに、巨大サメへ電撃を集中させられます」


「なるほど……、こうして巨大サメを退治するのか。テルアキ君、概要はわかった。具体的な方法、ステップ一から四かな。説明してくれ」


「はい、クルベットさん。まずはステップ一、毒入りの餌で麻痺させる方法です。巨大サメは肉を見つけると丸呑みで食べます。そこで、強力な麻痺毒を持った毒キノコをミンチ肉で作った餌の中に混ぜて食べさせます」


「強力な麻痺毒を持った毒キノコ……って、そんな都合のいいモノがあるのかい?」


「はい。ポッシの山道に生えている『トルペ茸』です。胞子を少し吸っただけでも、気絶してしまう強力な毒を持ってます。そうだよな? サキ」

「ああ。近寄るだけでも危険な毒キノコだ。あんなモノまるごと食ったら、どんな巨体でもひとたまりもないぞ!」


「巨大サメには、これから毎日決まった時間、場所に餌を与えて、そこに餌があることを覚えさせます。そして、作戦決行の日には毒キノコ入りの餌を食べさせます」

「なるほど……。ただ、そんなに危険な毒キノコなら採集と調理にはしっかり防毒して気をつける必要があるな」


「はい。作業は最大限の防毒をして慎重に行います。……続いてステップ二、ムーヴの魔法で空中に浮遊させる方法です。これは簡単です。俺が小舟に乗って麻痺した巨大サメに近づいて、ムーヴの魔法で空中に浮かせます。これは波の影響を無くして、次のステップ三で撃ち込む槍を狙いやすくするためです」


 このステップ二については質問が出なかったので、俺は説明を続けた。


「続いてステップ三、巨大サメに大きな鉄の槍を撃ち込む方法です」


 ここで質問をしたのは三姉妹の次女、漁を担当しているクロビスだ。


「そこだよ、テルアキ。ザバ程度の大きさなら金串でうまくいくが、巨大サメとなると私達が投げられる銛じゃ、大きさが全然足りないぞ?」


「それについては、お祭りの力自慢大会で使ってる街の象徴、……あの大きな銛を使います。ユナ、お前ならムーヴで銛を空高く浮かせた後、ムーヴを解除してそのまま落下させることができるよな?」


「うん、練習はしてみたいけど、できると思うよ」

「……何っ!? 魔法の力であの二百キロを超える銛を空高く浮かせられるのか!?」


「はい。あの銛を三十メートルくらいの高さに浮かせた後、落下させて巨大サメを串刺しにします。文献によると……、高さ三十メートルから銛を落下させた場合、巨大サメに刺さるまでの時間は約二・五秒、落下時の速さは時速九十キロメートルほどです」


「へぇ……。三十メートルの高さから落とすだけでそんな速さになるんだなっ」

「はい。ロティールの資料館で読んだ物理学の本に計算方法が記されてました」

「僧侶様、凄いっ。お勉強好きなんだね!」


「まあな。それに、銛の柄は先端に返しが付いています。巨大サメの身体を貫通して抜けてしまう心配もないでしょう」


 俺の説明に、皆は不安な表情を浮かべながらも納得してくれたようだった。俺は説明を続ける。


「続いてステップ四、サンダーの魔法でトドメを刺す……方法です。宙に浮いた串刺しの巨大サメに対して、三姉妹の皆さんがサンダーを撃ちます。ただ、威力は大きい方がいいので、サンダーの魔法の書を一冊著してもらって、ユナにもサンダーを撃ってもらいます」

「うん、僧侶様っ! 私、頑張るよっ」


 ここで三姉妹の長女、スキーユが問題を提起した。


「誰が魔法の書を著すのか、そこが問題ね。私は毎日の事務仕事があるし、クロビスは書き仕事は苦手よね。……となると、ユイトルかしら?」


「ちょっと! お姉ちゃん!? 私だってお店の仕事をしてるでしょ! なのに何で私がこのチビ女のために魔法の書を著さないといけないのよっ!?」


(……ユ、ユイトルちゃん、酷いよぉ)


 俺は予想外の問題発生に戸惑った。


「そ、そこで問題が出るとは思ってなかったですが……。ユイトル、俺からも頼む。ユナのために……、いや、この街のために魔法の書を一冊著してくれないか?」


 俺は真剣な眼差しでユイトルの顔を見つめて頼んだ。


(……ちょっ!? テルアキ! そんなふうに見つめられたら、断れないじゃないっ!?)


 ユイトルが照れながら目をそらして答える。


「……し、仕方ないわね。テルアキの頼みなら、やってあげるわよ。チビ女、この私が魔法の書を著してあげるんだから、しっかり習得しなさいよっ!」


(ユイトルちゃん、僧侶様のお願いなら聞いちゃうんだ……)


「うん、ユイトルちゃん、ありがとう。しっかり習得して、いっぱい練習して、強いサンダーを撃てるように頑張るよっ」


──こうして巨大サメ退治作戦はブレゼスの皆に了承され、実行されることとなった。


「うむ、ではテルアキ君、皆に具体的な指示をもらえるかい?」

「分かりました、クルベットさん。まずユイトルは『サンダー』の魔法の書を著してくれ。何日かかりそうだ?」


「そうね……、二日あればできるわよ」

「では、よろしく頼むよ。次に、ユナは銛を浮遊させる練習だ。サンダーの魔法の書ができたら習得と熟練度上げも同時進行な。……これに三日費やそう」

「わかったよ、僧侶様」


 俺は日数に制約がある事項を先に決めた。この時点で、作戦決行までに必要な日数は最短で五日となり、皆も納得した。


「では皆さん、作戦決行は五日後とします」

『おぉ! 五日後だな!』

『遂にあの巨大サメを退治できるんだな!』


 船長達が希望に満ちた表情を見せる。周囲の皆が賑わう中、俺は指示を続ける。


「クロビスさんと船長さん達は、毒入り餌を作るための材料調達をお願いします。五日間、毎日ザバを十匹ほど使って餌を作ります。魚を捕まえて、イケスで生かしておいてもらえますか?」

「わかった。お安い御用だ」


「サキは『トルペ茸』を頼む。採取は作戦決行の前日だ。明日からは『トルペ茸』が生えている場所の確認をしてくれ。……あと、万が一の事故に備えて解毒用のハーブも一緒に頼む」

「わかった。任せろ、テルアキ」


 この指示に感心を示したのはカルマールだ。


「テルアキ君、万が一に備えて解毒用のハーブもちゃんと用意するとは……、君は立案者として慎重で優秀だね」

「ええ、何が起きるか分かりませんので、念のためです」


「それに街の象徴……、あの銛を使ってこの街を救ってくれるというのが我々にとってどんなに嬉しいことか。これは素晴らしい作戦だよ! 考えてくれてありがとう!」


「いえ、そんな……。それでは皆さん、よろしくお願いします! 皆であの巨大サメを退治しましょう!」

『おおぉっ!』


 街の皆がひとつにまとまる……。俺は、皆の団結に何とも言えない興奮と満足感を覚えた。こうして巨大サメの退治作戦が動き始めるのであった。

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