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解願師〜人の願いは呪いへと。最強の能力者に拾われた俺、同じ境遇の少女と世界のカラクリをぶち壊す~  作者: 一式鍵
第1章:願いと呪いの等価交換

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01-01: 呪術

第一部「ハルベーデラ編」のはじまりです。

 まず、母さんが死んだ。


 次に、父さんが死んだ。


 死の間際、父さんは俺の手を取り、「剣を持って逃げろ」と言った。それきりだった。


 剣――我がヒューケイア家に伝わる宝剣ゲミトルード。まさに昨日、十六歳の誕生日を迎えたその日に、父さんから慌ただしく譲り受けたものだ。


 食堂から廊下に飛び出すと、使用人が(たお)れていた。駆け寄って首筋に触れたが、脈はなかった。焦げた臭いが二階のここまで上がってきている――火事だ。夕食時、廊下は薄暗い。


 賊の気配はない。侵入者はいない。


 父さんも母さんも、使用人たちも噂に聞く()()とやらにやられた――ということだろうか。


 何故、俺だけ無事なんだ? ……いや、とても無事とは言えない状況だ。物騒極まりない状況の屋敷の中に取り残されているのだから。熱気に喉が、目が、焼ける。これ以上考えている余裕はない。パチパチと木材が爆ぜる音がイヤに意識に残る。


 俺は父さんの言葉に従い、自室に飛び込んだ。そこに継承の儀式を済ませたばかりの長剣、ゲミトルードがある。嘘か本当かは定かではないが、一千年の間ヒューケイア家に伝えられてきた剣だという。ヒューケイア家は勃興を繰り返してきたが、それでも魔導大戦の頃から続いている。そして俺はその直系なのだ……と聞いている。 


 剣を帯び、俺は慎重に窓の外を見た。ここは二階とはいえ、かなり高い場所にある。飛び降りたらただでは済まされない。わかりきった事実を呪いながら、窓の外には襲撃者が持っているであろう灯りの一つも見えないことを確認して、俺は部屋を出る。


 廊下には熱風が吹いていた。階下の火事が相当なものだということだろう。轟々とした音が熱に乗って流れてくる。


「ちくしょう」


 悪態をついて、俺は奥の階段へと向かう。


 その瞬間。


 一瞬視界がスパークした。音も臭いも消えた。何もかもが止まったかのような感覚――その奥に、白い髪の女性が見えた。文字通り青く輝く目で()()()()()()


 景色はすぐに元に戻ったが、彼女がいたのは正面玄関だ。俺は火を迂回するルートの階段を通り、大きく回り込むようにして正面玄関へと向かおうとした。


 しかし、火の壁に阻止される。


 窓から出る!


 俺は窓を突き破るべく、ゲミトルードを鞘ごと硝子(ガラス)窓に叩きつけた。


「!?」


 割れない!?


 手に強烈な痺れが残っただけだ。


「閉じ込められている……?」


 なぜあの白い髪の女性はここに入ってこられた?


 俺はゲミトルードを抜き放つ。気のせいだろうか、一瞬炎が遠ざかった気がした。まるで恐れているかのように。だが、炎に取り囲まれている現状に変わりはない。このままここにいても焼け死ぬだけなのは間違いがない。ならば、突破口を探さなければならない。


 肌を焦がす熱風が押し寄せてくる。赤というより金の炎が視界も塞ぐ。煙で息が苦しい。だが、勝手知ったる屋敷だ。目を閉じていても前に進める。


 落ちてくる瓦礫との戦いも経て、俺はようやく正面玄関に辿り着いた。そこは炎に囲まれてはいたが、なぜか焼けてはいなかった。さっき見た白い髪の女性が一人、腕を組んで立っている。純白の長い髪。真冬の雪影のような青い目。黒を基調とした風変わりな衣装を身に纏い、腰には刀のようなものを下げている。


 俺はゲミトルードを構えて、切っ先を彼女の喉元に向けた。踏み込めば一歩の距離だ。


「お前か、呪術を使ったのは」

「呪術を使っておいて、わざわざ現地視察に来る馬鹿はいやしないねぇ」

「えっ……」


 それもそうだ。遠隔地から一方的に攻撃できるのに、わざわざ反撃されるリスクを取る必要なんてない。


 俺はゲミトルードの切っ先を下げ、その異様なほどの余裕をもって立っている女性を見つめた。


「助けに来てくれたのか」

「そういう依頼だったからねぇ。報酬は前払いでもらっているし、まぁ、いいだろ」


 何がどうなっているんだ?


「だ、誰からの依頼だ」


 その問いを発した俺の声は、煙と動揺に飲まれてひどく(かす)れて揺れていた。


「それは言わないお約束、まだね」


 ニッと、場にそぐわぬ笑いを見せる彼女。


「俺はオルレアス・ヒューケイア」

「知ってるよ。アタシはヤミ。解願師(げがんし)のヤミだ」


 解願師……?


「呪いは願い。願いは呪い。アタシはそういったものが生み出す現象を解決する仕事をしてる。良いものであれ、悪いものであれ、()()は少なからず()()の側面を持つからねぇ」

「願いが呪い……?」

「そう。ほとんどは他愛のないものだ。だが、今みたいな、殺意に昇華された願いは、すなわち完全な呪いだ。今からアタシがこの呪いを解く。解願師、だからね」


 ヤミは俺に背中を向ける。即ち、玄関扉に向き直った。ヤミの視線の先に、()()がいた。


「化け物……」


 俺の声は自分でも聞いたことがないほどに(かす)れていた。


 扉には巨大な目玉が浮かび上がり、無数のぬめる触手が生えてきていた。その濁った赤色の虹彩は、周囲の火炎をぐにゃりと照り返していた。


 周囲には劫火(ごうか)、逃げ場も、時間も……もう、ない。


完全新作・新連載となります。毎日更新予定です。

宜しくお願い致します。

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