↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season5 ― 心が動く瞬間(とき)―  作者: 柊梟環
EVOLVE Season5 ― 心が動く瞬間(とき)―
PR
3/17

第2章 金色の灯(あかり)(前編)

会議のあと、(たまき)の胸には小さな不安が残っていた。

その思いを受け止めたのは、いつもそばにいる“はは”(あかり)だった。

ぽかぽか邸で語られる言葉が、(たまき)の勇気に明かりを灯す。

― 会議のあと、ぽかぽか邸にて ―



(なぎ)の案が採用された日の夜。


「君たちの案で進めよう」と言った瞬間、

鷺沼(さぎぬま)の表情がほんの一瞬だけ揺らいだ。


その変化を見逃さなかったのは、(たまき)(あかり)だけだった。


けれど(たまき)の胸の中には、

まだ消えない緊張と、苦手意識が残っていた。





数日後。


(あかり)がぽかぽか邸を訪ねてくる。


(しゅう)(なぎ)は買い出しに出ており、

リビングには(あかり)(たまき)だけがいた。


「はは、コーヒー淹れますね。」


「ありがとう。やっぱりここは落ち着くわね。」


(たまき)は少し迷ってから、

ぽつりと口を開いた。


「……鷺沼(さぎぬま)さんって、無駄がなくて完璧ですよね。

 でも、冷たい感じがして……わたし、緊張しちゃって。

 ははが笑ってくれるとホッとするの。

 最近、(しゅう)(なぎ)くんが忙しそうで、

 わたし、ちゃんと役に立ててるのかなって思っちゃって。

 いつもなら気になることは(しゅう)に話すんですけど、

 いま話したら(しゅう)に負担がかかってしまいそうで……」


(あかり)はカップを置き、優しくうなずいた。


「そうね……(たまき)は、冷たく感じる人が苦手でしょ?」


「はは、なんでわかるんですか?」


「そんなの、(たまき)の顔見たらすぐわかるわよ。」


(あかり)は笑って、少し真面目な顔になる。 


「たぶんね、(しゅう)くんも(たまき)の気持ちわかってると思う。

 いま大変かもしれないけど、

 (たまき)がそうやって思ってること、ちゃんと話してくれるのをきっと待っていると思う。」


(たまき)は静かに息を()んだ


「だから、(たまき)

 いま私に言ったことちゃんと(しゅう)くんに話しなさい。

 どんなに忙しくても、どんなに大変でも、

 ちゃんと聞いてくれる人でしょ?(しゅう)くんは。

 それどころか――“聞きたい”と思ってるはずよ。

 だって、(たまき)の心の声をいちばん知りたいのは、

 (しゅう)くんなんだから。」


(たまき)は小さく頷き、(あかり)に抱きついた。


「うん……ありがとう、はは。」


そのあと、買い出しから戻った(しゅう)(なぎ)


「ただいま〜」「ただいま!」

「おかえりなさい!」


(あかり)(たまき)の背中を軽く押した。


「ほら、(たまき)。」


(たまき)は勇気を出して言った。


(しゅう)、聞いてほしいことがあるんです。」 


「ん? いいよ。ここで話す?」


「ここで大丈夫。」


(たまき)は深呼吸して言葉を(つむ)ぐ。


「最近、わたし……役に立ててるのかなって。

 (しゅう)(なぎ)くんが頑張ってるのに、

 鷺沼(さぎぬま)さんの前だと緊張しちゃって、

 ひと言も話せなくて……」


(しゅう)(たまき)の手を包み、穏やかに笑った。


(たまき)。俺たちは(たまき)がいるから動けてるんだ。

 (たまき)がいなかったら、たぶん俺も(なぎ)も混乱してるよ。

 役に立ってるとかじゃなくて、いてくれることが大事なんだ。」


「そうですよ! (たまき)さんがいないと仕事進みません!」


(なぎ)も笑って続ける。


(しゅう)がふと、やさしく言った。


(たまき)は、鷺沼(さぎぬま)さんみたいなタイプ苦手だろ?」


「え? なんでわかるんですか?」


「そんなの(たまき)の顔見たらわかるよ。」


(たまき)は目を丸くした。


(しゅう)、ははと同じこと言ってる!」


「え?」


(あかり)が楽しそうに笑う。


「そう! (しゅう)くん、私とまったく同じこと言ったわよ〜!」


3人の笑い声に、

(なぎ)もつられて笑い出す。


「僕もわかりますよ。(たまき)さん。

 僕もあの人ちょっと苦手です。」


「え! (なぎ)くんも?」


「はい、ちょっと冷たい感じしますよね。」


「でも、この前、一瞬だけ表情が変わったんです。

 うまく言えないけど、何か違って見えたんです。」


(あかり)は少し目を細めた。


「そう……私もそう思ったの。

 ほんの一瞬だったけど、

 氷が揺れたみたいにね。」


ぽかぽか邸のリビングに、

やわらかい光が差し込んでいた。


その静けさの中で、

まだ遠い誰かの心が、

ほんの少しだけ動いたような気がした。

(しゅう)(なぎ)、そして(あかり)が支えてくれた安心。

(たまき)の言葉は、冷たい理性の壁にそっと触れ、

小さな“揺れ”となって鷺沼(さぎぬま)の胸に残っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。