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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season5 ― 心が動く瞬間(とき)―  作者: 柊梟環
EVOLVE Season5 ― 心が動く瞬間(とき)―
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第10章 心でつながる回路 ― 不破の目覚め ―

不破は真実を確かめるため、アークに連絡を取る。

そこで出会ったのは、“心でつながる設計”という新しい価値観だった。


夜。

不破ふわは、鷺沼さぎぬまには何も告げず、

アークシステムズ宛にオンラインの通話リクエストを送った。


“技術的な質問があります”

それは建前だった。


胸の奥では、ただ確かめたかった。

――なぜ、彼らのシステムには“温度”があるのか。


すぐに画面が開き、

なぎの明るい声が響いた。

「こんばんは。不破さんですよね? どんな内容ですか?」


その声には、まったく防御の色がなかった。

不破は少し戸惑いながらも、

質問を切り出した。


「第八工程の設計意図を詳しく伺いたいんです。

 “柔軟性”という部分が……まだ理解しきれていなくて。」


凪はにっこり笑った。

「なるほど。あれは“変化に対応できる仕組み”という意味なんですけど、

 単に条件分岐を増やしただけじゃないんです。」


「というと?」


そのとき、しゅうが画面に入ってきた。

「こんばんは、不破さん。如月きさらぎです。

 私たちは、システムを“人が使うもの”として作っています。

 どんなに正確でも、使う人の気持ちが置き去りになったら意味がない。」


不破は静かに聞き入っていた。


「システムは間違わない。でも、人は間違う。

 だから、私たちは“やり直せる余地”を残したいんです。」

凪が真剣な表情で言葉を継ぐ。


「それが“柔軟性”の本当の意味なんです。」


たまきがそっと言葉を添えた。

「機械は心を持たないけれど、

 その機械を作るのは人間です。

 だから、そこには作る人の“心”が宿る。

 私たちは、そう信じて作っているんです。」


その言葉を聞いた瞬間、

不破の胸の奥で何かが動いた。


(心が……宿る?)


柊が静かに締めくくる。

「柔軟性は、甘さではありません。

 不測の事態を想定し、人の選択を信じる“強さ”です。

 それをシステムで表現したいんです。」


通話が終わったあと、

不破はモニターの前でしばらく動けなかった。


機械的な合理性の向こうに、

確かに“人のぬくもり”が存在していた。


――理屈では説明できないが、理解できた。

  胸の奥で静かに火が灯るような感覚。


(……これが、“柔軟性”か。)


彼は初めて、設計図ではなく“心”を理解した気がした。



◇◇◇



― 予兆 ―


翌日。

不破は資料をまとめ、鷺沼のもとを訪れた。


「鷺沼さん。

 あのシステム、見直してもいいかもしれません。

 “柔軟性”って……

 設計の中に“やり直す力”を残すことなんです。」


鷺沼は、目を細めて彼を見た。

「……やり直す力?」


不破は小さく頷いた。

「はい。

 システムは間違わないけれど、人は間違う。

 だからこそ、人の作るものには“許し”が必要なんです。」


静かな一言だった。

だが、それは確かに鷺沼の胸に届いた。


――完璧とは、壊れないことではなく、

  壊れても立ち上がることを含む。


その意味が、

彼の中でゆっくりと形を成していった。

胸の奥で静かに火が灯る。

不破は初めて“心の回路”がつながる感覚を知った。

その火は、やがて鷺沼にも届く光となる。


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