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戴冠神聖式 3

 ララは崩御した皇帝の代理人を務める聖女として、テオの前に進み出る。


 テオ自身ですら、自分が十五年以上も前に亡くなった皇弟の息子だったという事実をつい最近知ったばかりなのに、そのうえ自分が帝位につくなど、思ってもみなかっただろう。


 魔の森から帝都に戻ってきたあと、アーヴィンはすぐさまテオの出自を証明するとともに、ローイエン公爵家がその後ろ盾となる宣言をし、彼を皇帝にすべく迅速に動いた。


 ここに至るまで、アーヴィンとテオとの間にどのような会話がなされたのか、ララは知らない。


 きっとテオにとっては、大きな戸惑いと激しい葛藤があったはずだ。


 それでも今は覚悟を決めて、この場にいる。


 だからこそ、その決意をララも応援したいと思う。そう思ったからこそ、最終的には自らの意思で聖女の称号を授かり、この役を引き受けた。



 目の前にいるテオは、いつも人懐っこい笑みを浮かべている彼からは想像もできないほど、真剣な表情だった。


 自ずとララの気持ちも引き締まる。


 背後に控えていた副神官がララに近づき、大鷲の飾りがついた帝笏を捧げ持って彼女に手渡す。


 受け取った帝笏をララは、戴冠式の椅子に座っているテオへと渡す。


 テオは儀式で右手のみに着用する、帝国の紋章が刺繍された白い手袋(グローブ)をつけた右手で、しっかりとそれを握り締める。


 次に、神官長が恭しくララに手渡したのは、金と貴石で彩られた帝冠──。


 ララはその帝冠を、テオの頭上にそっと乗せる。


(祝福があらんことを──)


 心の中でつぶやく。


 一拍置いたのち、ララは帝冠から手を離す。


 だが次の瞬間、テオがわずかにみじろぎし、頭に乗せた帝冠がずり落ちそうになった。


 ララは慌てて手を伸ばし帝冠が落ちるのを阻止する。一方、テオもとっさの判断でわずかに体の重心をずらし、なんとか帝冠のバランスを保とうとする。


 パッと、ララとテオの目が合う。


 テオはララにだけわかるように苦笑いする。


 ララもこっそりと笑い、同時にいつもの明るい彼が垣間見え、ほっとする。


 でもすぐに、テオは自身が受け取ったものの重みを噛み締めるように、その口元をぐっと引き締める。


 彼の手袋をしていない左手、その人差し指には、深い青色の輝きを持つブルーサファイアがついた指輪がある。


 テオの父である皇弟、その形見の紋章指輪だ。


 あえて作り直さず、この指輪を使うことを選んだのはテオだ。


 それがテオを優しく見守りながら、あたたかな光を発しているようにララには見えた。


 帝冠を頭に乗せ、右手に帝笏を持ったテオがゆっくりと立ち上がる。


 集まった参列者に向かって、その堂々とした姿を見せる。


 すると、次の瞬間──。


 大聖堂内が青白い柔らかな癒しの光で満たされた。


 参列者がみな、目を見開いてあ然としている。


 その青白い光の中、新たな皇帝となったテオに向かって、黄金色に輝く光の柱が大聖堂の天井から一直線に降り注ぐ。


 それはまるで、天からの祝福のようだった。


 大聖堂内を満たす癒しの光は、ララが──。


 黄金色に輝く光は、ララのお願いに応えた妖精たちが──。


 テオの頭上には、祝宴の妖精フィーを先頭に、さまざまな妖精たちがくるくると宙を舞い、そのたびに妖精の羽がキラキラと黄金色に輝く。


 しかし妖精の姿が見えない参列者たちは、この世のものとは思えない美しい光景にただただ息を呑むばかり。


 これ以上ないくらいに、新たな皇帝の御世は素晴らしいものになるだろうと、その場にいる誰もが感じ、熱く胸を詰まらせる。


 突然皇帝として名乗りを挙げたテオに批判的だった者たちも、神の祝福を受けたかに見える新たな皇帝の姿を目にして、自然とその考えを改め始めていた。


 テオの背後に控えているララは、こっそり微笑む。


(このくらいの演出があってもいいでしょう!)



残り3話で完結です!


ここまでご覧くださり、ありがとうございます(*´▽`*) ラストまでどうぞよろしくお願いいたします。


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